第210話 エピローグ2

 陰陽寮執務室、の隣の部屋。事務作業をする場所としては結構広めの部屋にいたのは陰陽寮当主、難波明──ではなく、香炉星斗。

 彼は大きな机の上に乗っているたくさんの書類の区分けをしていた。本来なら隣の部屋で明がする作業なのだが、今日明は陰陽寮にいない。


 平日だったら珍しくもない。なにせ明はまだ在学中だ。その代行を星斗が率先して行なっているのだが、今日は日曜日。明も普段だったら陰陽寮に来て仕事をしている日だった。学校で何か用事がある訳でもない。

 明がデートに行きたいから、休んでいるだけ。


「クソ……。彼女がいなくなった俺への嫌味かっての。学校とかだったら文句なく手伝ってやるのに。……デートかあ。神奈とは一回も行けなかったな。身体が弱かったから仕方がないんだけど。……北海道から帰ってきたばっかの俺にやらせるか、普通?北海道なんて残った神々が多かったのに」


 北海道は本州と地続きではなく、長いこと日本の中枢とは異なる文化を築いてきたために、残っている土地神様と妖が多かった。その調査は陰陽寮に上がってきた他の五神の情報と比べてみても大変だったと言っても間違いではない。

 それほど北海道には残っている遺産が多かった。この一年を通して一千年前に巻き戻したために姿を見せ始める異形が多かったために、星斗は結構疲れていた。報告のためと、今の拠点は京都なので帰ってきた途端にこの仕打ちだ。


 星斗が北海道に行った理由は、明の関係で狼について詳しかったため。明の推察通り狼に関連する神と妖が多かった。狼について五神の中で一番詳しいのは星斗であり、マユと大峰が北海道に行けない理由もあった。

 マユは過去に何度も北海道に行っており、しかもその時は玄武を実体化させていたので土地神たちは格の違いを悟って隠れ潜む始末。


 それは婚前旅行で先代麒麟の巧のために龍脈がある函館で飛び回っていた麒麟も同じ。特に麒麟なんて五神として有名すぎる。そんな存在が北海道の要たる函館の上空に現れ、主と街を巡っていれば警戒もする。契約者が変わろうが、本体が向かえば同じこと。

 そういう理由でマユと大峰は北海道行きは見送られていた。


 マユはその理由からどこでもダメだと思われたが、九州は五神よりも恐ろしい龍と半吸血鬼が住処にしていたため、今更五神一体に怯えて隠れているような存在はいなかった。そのためマユは九州へ。

 五神たちは一度調査を切り上げて陰陽寮へ報告に戻ってきている。星斗も任務明けの休みのはずだったのに、こうして雑務をやらされている。


 明が本家の跡取りで、高校生で、安倍晴明なので星斗は断れるはずがなかった。

 そんな一人で悲しく作業をしている部屋に来訪者が現れる。

 玄武を抱きかかえたマユだった。彼女も京都に戻ってきていたようだ。奏流と西郷は既に報告を済ませてまた調査に向かっているので、京都にいなかった。


 その辺りは各々勝手に帰ってきているのだが、お互い連絡を取っていなかったので集まることは偶然だった。

 五神で誰も未来視の才能がなかったので、狙って誰かの休みに合わせるということは連絡を取らなければできないことだ。


 マユは星斗の邪魔をしてはいけないと思って雑談程度の電話ならしたが、スケジュールの確認まではしていなかった。

 陰陽寮にやってきて初めて気付いたことだ。


「マユ。お前も報告か?」

「はい。お疲れ様ですセンパイ。明くんは、いないのですね」

「デートで難波に戻ってる。行きたいラーメン屋があるんだと」

「あはは……。難波で行きたいラーメン屋さんなんて一つしかないじゃないですか。でもそんな遠くに、飛行機でも使ったのですか?」

「いいや。アイツ日本ならどこでも禹歩で瞬間移動できる。珠希お嬢様か金蘭様が一緒なら複数人の転移も問題ないらしい」

「それは、羨ましいですね」

『マユは、できなくて、いい。また神に、近付いちゃう』


 明の規格外の移動方法に感嘆の息を吐くと、玄武がやらせないように釘を刺す。霊脈の把握ならまだしも、龍脈の把握をして生きていたらマユの身体は今度こそ神に近付いてしまう。


 歴代麒麟の姫と巧は龍脈を借り受けて使用していたが、今の龍脈の使用権は明が持っている。姫と巧が使う分には過去の所有権から問題なく使えるが、マユが明から龍脈の所有権を奪ったり、この完成された統治状況から借り受けることになったらマユは変革してしまう。


 龍脈を使わない方法を使っても、人間ではなくなってしまう。それを玄武は望んでいない。

 マユのことを、人間だからこそ愛しているために。


「神になるのはダメです。神主の家系の人間が神になってどうしますか。嫌ですよ、家族に祀られるなんて」

「それは確かに嫌だな。……これ以上知り合いに神への階段を昇ってほしくない。明と珠希お嬢様で充分だ。マユはそのままで居てくれ。一緒に歳取って、人間のまま生きるのが一番だ。目の前で消えるなんてことしないでくれ」


 星斗の懇願に、マユは一瞬で肌の見える部分のありとあらゆる場所を真っ赤に染め上げた。頭から湯気も出ているが、こんなストレートな告白お願いを聞いては仕方がないだろう。こんな弱音とも取れる言葉なんて星斗は全く零さないことも要因だ。


 まるで今の言葉では、マユのことが大切だからそのままで居てほしくて。死ぬまで交流があって消えることも死ぬことも望まれていないということ。

 聞き様によっては、一生側にいてほしいという大胆な告白束縛にも聞こえなくもない。


 星斗からしたらトラウマを掘り起こされたくないからこその発言だろうが、憧れのセンパイでありちょっとしたことで意識を向けてしまう相手からの言葉には、さしものマユも動揺してしまう。

 純粋培養であるマユは恋をしたことがなかった。もしくは、自分の感情が恋だと気付いていない可能性もある。


 本当はずっと前から抱いていた気持ちを、相手のことを想って、自分の状況を鑑みて封じ込めてきたということさえありえる。

 彼女は普通だったために。常識を兼ね備えていたからこそ。

 自分の恋心を、憧れという言葉で圧し殺してきたのかもしれない。


 だが、その封じ込める必要のある婚約という言葉が星斗から消えてしまったのなら。

 重しはなくなり、少しの罪悪感と共にその色付いた感情は浮き上がってきたとしたら。

 今の彼女の反応も仕方がないだろう。


「……マユ?どうかしたか?」

「ははは、はい⁉︎なんでしゅか、センパイッ!」

「めっちゃ噛んでるじゃん。……まだおっさんになったつもりなかったんだけどさあ。残される側がこんなに辛いなんて思わなかった。覚悟はしてたつもりだったんだけど、実際にそうなるとここまで違うかって圧倒されてる。……ホント、マユが寝込んだ時も辛かった。神奈と同じような症状だったからな。マジで、健康で居てくれ」


 恋人だった神奈が病弱だったからこそだろう。星斗は周りの人間の体調について臆病なほど、過剰に心配する。

 たとえそれが世界の理だったとしても。大事な人を目の前で失うのは耐え難い。


「明に言って医療部門の設立を頼むか?それか瑞穂さんの関係先の病院と連携したりとか……。他人事じゃないんだもんな。珠希お嬢様だってこの前まで大変だったって聞くし。当事者のマユはどう思う?」

「陰陽師にとってかかりつけ医なんてほぼありませんからね。怪我や呪いに掛かったら大病院に送られるだけで、ちょっとしたことを相談する場所ではないです。それに神気や異能について相談できる場所があればこれからの人たちは困らないと思います」

「だよな。提言するかあ」


 星斗は今やっている作業を横に置いて、ノートパソコンを起動して資料作成を始める。キーボードを叩く音がし始めて、流石にマユも一言物申す。


「あの、センパイ?お仕事放り出していいのですか?」

「ん?ああ、これは大丈夫だ。政府から送られてくる資料の仕分けをしてただけだし、最終チェックは結局明にやってもらう奴だ。俺も全部資料を確認してるわけじゃないから大雑把に分けてるだけだし。この作業はどちらかっていうとオマケで、京都で何かあった時のための代理人だ。まだ陽が昇ってるから大丈夫だと思うけど、一応な」


 星斗がやっていたのは明と金蘭がやっていた政府からの提案書を項目ごとに振り分ける作業。政府との交渉から実に一ヶ月は過ぎているのに、もう秋も終わって冬も真っ盛りだというのに陰陽寮を邪魔する資料はかなりの数届く。


 明が確認しやすいように保存する箱を変えたり付箋を貼っているだけで、何かを決定したり判子を押しているわけではない。待機のついでに手伝っているだけだ。

 その手伝いよりも有意義なことを見出して、そっちに取り掛かっているだけのこと。


「……センパイ、騙されていません?明くんたち、今日から冬休みだと思いますけど?だからそのまま実家に戻ったのでは?」

「──え?」

「呪術省から陰陽寮に切り替わったことで、『建巳月けんしげつの争乱』と『大天狗襲来』で発生した長期休みの短縮が取り止めになったそうです。カリキュラムも変更しなくちゃいけないとかで、陰陽師学校はどこも一律今日からお休みですよ?」


 マユだってデートは大事だと思う。そんな機会があるなら行きたいと願うほど。

 だが、学校が休みに入ったことを告げずに星斗に仕事を押し付けていることは違うだろうと思って口を挟んだ。

 マユは最近の明は変わったと思っている。もう少し腹黒くない性格だと思っていた。陰陽師としての優等生だと。

 正確には今の明は昔を思い出して、元に戻ったという状態が最適な言葉になる。


「……陰陽寮は、まだ冬休暇に入っていないよな?」

「陰陽寮で長期休みがあるのは事務職くらいだと思いますよ?わたしたちプロは年間休日がちゃんと確保されていますが、申請しなければ年末年始も関係なくお仕事ですから。……というより、今日休むのは狙っているとしか思えなくて」

「いや、あいつのことだから明日からちゃんと仕事するんだと思うけど。……やられたな。そうかー、冬休みか。そんな言葉久しく聞いてなくて忘れてた」


 星斗の作業の手が止まる。

 明には学校やら陰陽寮やら今の日本のことや、果ては海外の組織への対応までやらされていた。だから星斗としても休みが欲しい日にはきちんと休ませてあげようと気を回した結果これだ。


 星斗がこうして明の仕事を手伝う日は出勤扱いになるのでブラックではなかったが、冬休み最初の日を狙って仕事を押し付けられたとなると気分も滅入る。星斗は最近暦や曜日で休みなんて申請できなかったために。

 瞬間移動もできるので、本当に休むのは今日だけだと星斗もわかっている。それに冬休みとなれば遊びたくもなるだろう。


 今年は忙しかったことと、明に年末年始などないと予測していたために。

 それだけやることが多い。陰陽寮へと正式に切り替わって一ヶ月半弱。問題点は多いので明はこれからも五神以上に休めないと星斗は察していた。


「まあでも、任された仕事と思い付いたことは終わらせとかないと。俺だって手が空いてるわけだし。それはそれで、腹いせに夜はどっか行くか?巡回がてら外食したっていいだろ。携帯さえ持ってたら陰陽寮に詰めておく必要はないし。マユ、どっか行きたいところある?」

「はいっ⁉︎今日、ですか?」

「一人で外食ってのも味気ないし。マユが九州で見聞きしたこと話してくれよ。仕事中よりも食事しながらの方がいい」

「……じゃあ、お店を予約してきて良いですか?」

「任せた」


 マユはホクホク顔で携帯を取り出してマユオススメのお店へ電話をかける。ホテルの高い場所にあるフレンチのお店。夜景なども綺麗な場所だ。

 日付的に予約が取れるかどうかわからなかったが、電話をして二名で予約が取れた。即日予約の上にこれから数時間後だったのに予約ができたのは幸運でしかない。


 正確には、大西マユの名前で予約されたのでお店側が意地でスペースの確保をした上に、誰にも見られないような個室まで用意していた。今や五神の本名は知れ渡っている。その上二人での予約ということで気を回した結果だ。

 しかもできるお店だから、予約をしてきた人物が玄武だと気付いた様子は見せなかった。なんてことのない一般のお客のように電話口で答えて、受話器を置いた瞬間にお店は慌ただしく動き始める。


 電話を受けた人物がたまたまお店のオーナーだったからこその機転だった。

 そんな裏事情を知らないマユはただ嬉しそうに星斗に報告する。


「予約取れました!十九時からフレンチのお店を予約しましたけど、大丈夫ですか?」

「フレンチ?時間は大丈夫だけど、フレンチかー……。料理の名前、あまりピンと来ないんだよな。ビシソワーズ、だっけ?横文字多すぎて」

「わたしは慣れているので、どんな料理かお答えできますよ」

「その辺りも任せる。じゃあ、ちゃっちゃと仕事終わらせるかー」


 予定もできたために仕事を再開する星斗。マユも星斗の近くで仕事を手伝い始める。

 それからしばらく経った時、部屋のドアが開いて予想外の人物が入室してきた。


「お邪魔するゼ、星斗さん!あとおまけに玄武も!」

「大峰さんか。京都に帰ってたんだな」

「まあね。あ、これ報告書。今日明君いないんでしょ?だから代行の星斗さんに渡しにきたー」

「ああ、ありがとう。……ん?何で京都校の制服?」

「着慣れてるからかなー」


 何故か緑色のブレザーに袖を通した大峰の姿を見て星斗は首を傾げた。もう彼女は二回目の学校を中退したはずだ。一度卒業した学校にまた入学していることがおかしかったのだが。


 何年も通っていたから愛着があるのだろうと、星斗は無理矢理納得することにした。

 大峰からすれば、何故か星斗が高校の制服が好きだと誤解しているので着てきただけだが。小脇には脱いだコートまで抱えて制服を見せつける始末。


「そうそう星斗さん!今夜空いてる?僕おやすみだから、星斗さんとご飯行きたいなーって」

「え?……あー、悪い。今日は明の代わりに巡回もあるから、都合が悪いんだ」

「そうなの?こんな日に大変だね。残念。じゃあ玄武は?」

「わたしも今日はお休みじゃないので。ごめんなさい、大峰さん」

「そっかー。……星斗さん、次の休みは?」

「年始に三日間ほど、実家に帰って向こうの問題を片付けに行かないといけないからそこだな。なんか父親が早く帰ってこいって五月蝿くて。理由はわからないんだけど」

「へー。そうなんだー。難波の筆頭分家ともなると大変なんだね〜」


 何故か間延びしたような返事をする大峰。そんな喋り方をしているのは初めて見た上にずっとニコニコ笑っている理由が誰にもわからなくて混乱するばかり。

 そう、大峰は香炉家に対して、裏・天海家を介して婚約話を送りつけていた。明の助言のままに。


 大峰は裏・天海家の実質的当主である瑞穂で、家系も本家に近しい分家だ。そして法師と姫のおかげで裏・天海家は有名になり、陰陽師の家としての格は認知されている。

 難波家の分家である香炉家とは家の格は同等だった。


 ただ、デートのお誘いが失敗したことと、婚約話を自分から漏らすわけにはいかなかったので大峰は早々に退室する。これ以上話していたらポロっと漏らしてしまいそうなことと、今日という日にデートに誘ったという事実に気付いてほしくなかった。


 部屋から出た大峰は顔を真っ赤にしてから部屋をダッシュで離れる。その様子を実体化していなかった麒麟が可愛いものを見るように微笑ましく見守っていたとかどうとか。

 星斗は一応勤務日に抜け出して食事に行く上に、マユが二人で予約を取ってしまっただろうということから大峰の誘いを断っていた。星斗だけの呼び出しだったので何か秘密の話でもあるなら先約があるのでダメだろうと思ったわけだ。


 その後マユのことも誘っていたのでただ誰かと食事がしたかっただけかもしれないと星斗は思ったが、マユも星斗に合わせて断ったので対応としては間違っていなかっただろう。

 大峰は星斗だけを誘うのは不自然だと考えてマユも誘ったのだが、その意図は二人に伝わらない。

 滞在時間の短かった大峰を見て、星斗は頭に疑問符を浮かべていた。


「何だったんだ?」

「さあ?ご飯はついでで、報告書の提出がメインだったのでは?」

「ああ、なるほど。俺が朱雀としては新参だから、五神の実質的トップの麒麟が気にかけたわけだ。朱雀が表向きリーダーをやるべきだろうけど、明がいるからそういう俺たちのリーダーって決めなくて良いよな?」

「良いと思いますよ?序列を作る意味もないと思いますから」


 二人は仕事を終わらせて十八時には陰陽寮を出てお店へ向かった。星斗はどこに行くのかも知らなかったのでマユの案内でそのままホテルに着いて、そのホテルの大きさに驚き。

 てっきり下の方の階のレストランだと思っていたら上層の豪華な場所でドレスコードがあり同じホテルの中で星斗とマユはスーツとドレスを借りたことで予約時間に間に合わず。ドレスコードのことについてはマユに謝られた。


 星斗はこっそりとマユへの貸しドレス代も店員に頼んで自分のカードで支払い。

 店内にカップルが数多くいて、モミの木に飾り付けられた装飾を見て今日がクリスマスイブだと気付いた。


 そんな日に女性のマユと二人で高級フレンチに来たことで星斗は緊張してしまった。マユがドレスで着飾った姿が普段と異なってただの仲の良い後輩ではなく大人の女性に映ったことも一つの要因だろう。

 料理は美味しかったが、慣れないこと続きだったので星斗は下手に妖と戦うよりも緊張していた。こんな状況を作り出したマユも、まさか個室に案内されるとは思わず、以前来た時と異なる対応で慌てる始末。


 この日も印象に残ったが、年始に家に帰ったら様々な陰陽師の家から婚約の話が雪崩れ込んでいる事に眩暈を覚えた。知っている家も多かったために尚更。

 裏・天海家からはもちろん、まさかまさかの大西家からも来ていて二重に驚く。急いで二人に電話で確認をすると大峰は知っていて、今の日本に良いニュースを増やすために関係強化の観点で送ったことが伝えられ。


 マユは一切知らなかったために電話越しで「ヒェエエ!」と聞いたことのない反応をされてしまった。

 マユも即座に父親に確認をすると、宇迦様から神託があって婚約話を提出したと聞いてマユは宇迦の神の御座へ直行。


 宇迦様にいつまでウジウジしているのかとむしろ説教をされ、コトとミチには頑張りなよと慰めをもらい、マユの父親を動かしたことを告白された。むしろ気持ちがバレていたことに驚いたが、高校に上がってすぐ社で星斗の話ばかりしているので何故本人が気付いていなかったのかと呆れられてしまった。


 この二人が星斗を巡る恋愛模様を繰り広げる事になるが、星斗が答えを出すのはもうちょっと先の話。

 なにせ星斗からしてもすぐ彼女や婚約者を作れるような状況ではなかった。それだけ心に疵がへばり付いていた上に、婚約話が多すぎた。本来明に来るはずの婚約話が、珠希の存在から全て星斗に流れているのだ。


 星斗が年明けに対象の二人と顔を合わせた時に気まずそうにしていた様子を見て、明は大爆笑していたとかなんとか。

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