第174話 1ー1

 十月も下旬になって。京都は一応の収まりを見せた。祐介が起こした泰山府君祭もどきは市民を驚かせたものの、実害は出なかった。詠び出された帝は桑名先輩と姫さんのおかげで向こうに戻れた。

 この学校の人間に幾ばくかの影響を及ぼしたけど、大局に変化なし。それが一般市民の考え。


 だが、それは。俺たちや神々からすれば大きな変化。求めていた終着点への橋頭堡となり得る、水面を揺らす波紋。

 そんな変化の煽りを一番受けたのはミクだろう。

 今も男子禁制の女子寮に忍び込み、ミクの看病をしている。看病と言っても、ミクは体調を崩しているわけじゃない。


 これまで以上に神気が増えたけど、それの制御ができていないわけじゃない。耳と尻尾の隠行ができなくなっているから、事実を知らない人たちに見せるのが怖いといったところか。

 隠そうと思えばできるのかもしれない。要はミクの心持ち次第なはずだけど。


「ミク。今日から学校再開するけど、行けそうにないか?」

「……はい。もう少し、考えさせてください」

「わかった。ゴンと瑠姫は置いていくから、何かあったら二人に頼んでくれ。金蘭、任せたぞ」

「はい」


 金蘭に最終的な判断を任せて、俺は部屋を出る。

 禹歩うほ。陰陽師による歩法。それを霊脈で繋げることで、霊脈の上であれば瞬間移動のようなことができる技法。

 それでさっきまでミクの部屋にいたが、俺の部屋に戻ってきた。俺の前には吟と銀郎が立っている。


「学校に向かうけど、吟は霊体化できないんだろ?隠形使うか?」

「おれとしては、学校の側で気配を消して待っていてもいいですよ?側には銀郎がいれば十分でしょう。今のあなたに敵う存在が日本にどれだけいます?いませんよ、そんな化け物」

「神々ならいくらでもいるだろう?それに陰陽術が全てでもない。お前に接近戦をされたら負けるぞ?」

「ご冗談を。──おれがあなたに背くとでも?」

「悪かった。それはないな」


 吟の真剣な眼差しに、苦笑で返す。吟がそんなことするわけはないが、それでも負ける相手くらいはいる。接近戦をされてしまったら、という例で吟を挙げたが、接近戦なんてされたら悉く負ける未来しか視えない。

 それにまだ、金蘭にも負ける。あともう一歩が足りない。ミクにも勝てない。

 俺に匹敵する存在はまだまだいるさ。


「まあ、まずは朝飯か。二人も食うだろ?」

「はい」

『いただきます』


 朝食と言いつつも、昼食も兼ねたブランチだ。時間も既に十時を過ぎている。陰陽師として朝方まで巡回してたら、この時間に起きないことがほとんど。最近はそういった巡回に行ってない。

 ミクの様子を見守るために、出かけるのはやめている。


 寮の食堂に向かって、そこで三人一緒の席でモーニングセットAを食べる。トーストとコーンスープにサラダ、コーヒーのセット。何人かはすでに起きていたようで、俺たちは注目される。数日程度じゃ慣れないってことか。食堂のおばちゃんたちも苦笑いしてるし。


 黒髪黒目だった男がいきなり金髪で藍色の瞳。しかも短髪から腰まで伸びる長髪になっていれば不思議にも思うか。

 桑名先輩も起きていたようで、俺に了承をとって同席する。先輩もモーニングのAだった。


「皆さんおはようございます。難波君、那須さんは?」

「まだ不安定みたいで。今日は休ませます」

「そっか。……半妖、だったんだね。僕が前、退魔の力を使った時はそれが原因だったんだ」

「まあ。一種の先祖返りですね。桑名先輩にも妖の、狐の血が流れていますよ?」

「難波の分家だから、今月の頭にはわかってたことだよ。……吟様は、あの過去視からお変わりなく。そういう秘術を?」

「ええ。おれは金蘭の案で数千年生きられるように、神降ろしをしました。寿命を神と同様にして、なおかつ神のような信仰を必要としない身体に変革しました。成長しない不変性の獲得です」


 そんな真似を一千年前の段階でやっていて、どうして金蘭は晴明が一番だとしたんだか。弟子としての分別か、体系化できない本人にしか使えない術式の適正ゆえか。

 悪霊憑き、妖精に弄られた者。二人だったからこそ、境界が曖昧だったからこそ変性させられた事例。ただの人間では不可能だし、半妖にも使えなかった特殊な術式。


 自ら土地神になるようなものだ。土地神と異なって社を持たなくていいこと、信仰を集めなくていいこと。その土地に縛られないこと。

 反面、欠点もある。日本から出られないし、特殊媒体が必要。また、本人たちは式神契約を二度とできなくなるという制約がつく。


 晴明の式神として誇りを持っていたからこそ、わざわざそうしたのだろうが。その制約は彼らには辛いものだったはず。

 残念ながら、それくらいの対価を払わなければそれだけのことができなかったらしいが。


「なるほど。……凄い信念だ。一千年も、ただ待つだなんて」

「終わりが見えていれば、存外我慢できるものですよ。それは法師とて同じこと。逆に言えば、おれは陰陽師としての才能も、異能もありませんでした。待つことしか、できなかったんですよ。法師や金蘭のように、準備や工作なんてとてもとても」

「だからこそ、お前はやることを探して京都に足を運んだりしたわけだろう?当時、呪術省がきな臭かった時に。十七年前だったか?」

「ああ、そうです。姫様を助けてくださったと聞いています。あの方は我が家としても大恩ある方。吟様、ありがとうございました」


 吟が何もしていなかったわけじゃない、約束を守ろうとしていたことを伝えると、連想することがあったのか桑名先輩が思い出したかのように頭を下げた。

 姫さんを危ないと思って助けに来るほどアグレッシブに動き回ったりしていた。吟は案外難波に留まっておらず、殺生石が収まってからは全国を巡っている。それこそ長野の裏・天海家に向かったり、それこそ静岡の桑名家へ向かっていたり。

 東京にも天海本家のために向かっていたとか。放浪してはいるけど、その結果守ってきた命も多いらしい。


「時間があって、たまたま間に合っただけです。おれは未来なんて全くわからないもので。法師に愚痴られて向かっただけですよ。結果彼女が助かったことは良いことですが」

「姫様、お礼を言いたがってましたよ」

「気持ちだけもらっておきましょう。おれにできないことを彼女はいくつもしてくれたので」

「僕よりは、難波君が会う方が早いかな?」

「おそらく。その時は吟も一緒ですので、姫さんが直接言うと思いますよ」


 陰陽寮を受け取らなくちゃいけない。それに姫さんはもう少しで式神じゃなくなる。その後には言えなくなるんだから、さっさと言っておこう。

 吟と銀郎が食べ終わったのを見て、俺も空になった食器の前で手を合わせる。


「ご馳走様でした。桑名先輩、お先に。学校側に呼び出されていまして」

「やっぱりその体質についてかい?」

「それと先日の術式についても。アレについてわかっているのは現状俺と姫さんくらいです。姫さんも他にやることが多いので、一々説明のためにこちらへ来られませんから。プロの方々が調査しても詳細はわからないでしょうし、土御門は論外。法師は面倒だと思って来ないでしょうから」

「御愁傷様」


 桑名先輩にそう言われて、食器を返してから学校に向かう。吟は言っていたように校舎の近くで待機しているようで、中には入って来なかった。ミクが心配だっていうこともあるんだろうけど。

 向かう先は校長室。行くのは二週間ぶりくらいか。呪術省に忍び込んだ後に姫さんの投書でバレてたんだっけ。

 前はミクも一緒だったけど、今回は俺だけだからな。着いた先でドアを三回ノックすると、どうぞと聞こえてきたので中に入る。


「失礼します」

「難波君。かけてくれ」


 向こうは前と変わらず伏見校長と八神先生。それに大峰さんだ。

 言えることは言って、手短に済ませよう。


「で?明君、その髪と瞳は何?ボクはちょっと外にいて当日はその場で見なかったんだけど、狐の耳と尻尾が生えてたんだって?」

「ええ。先祖返りの半妖なので。悪霊憑きじゃないので、現行法でも申請の必要はないでしょう?今回の一件がなければ露呈することもなかったでしょうし」

「まあねえ。悪霊憑きみたいに、何かに身体を乗っ取られるとかないのかい?」

「ありませんよ。俺自身が人間と狐の半々なんです。狐に化けることはありますが、二重人格や別の何かが身体の中にいるわけじゃないので。俺のまま、生活してます」


 半妖って存在がまず存在しないから、前例がないんだろう。平安の頃ならいくらか例があったし、酒呑童子の子孫たちなんてまさしくそれだ。

 呪術省及び日本には半妖のデータが揃っていない。だから警戒するんだろうけど、半妖なんてこの先どれだけ産まれるんだか。日本にいる妖で人型なのは鬼と雪女くらいで、他には異形ばかりだからな。

 そんな存在と子どもを作るかどうか。妖自体が今割と人間に興味を失ってるから、あまり産まれないような気がする。


「大峰さんは当日何をしていたんですか?学校であんなことがあったのに」

「土御門晴道の事情聴取。情報の取りまとめが終わったから、どこまで彼が主導で事を起こしてきたかの確認。政府と何をやってきたのか、どこまで政府が関わってたかの確認はしないと、政府に付け込まれるからね」

「なるほど。それは大事ですね。土御門光陰の監視も終わっていたために、学校にいる必要もありませんから」

「そうだね。それにもうボクは学校にいる理由がなくなった。これからは陰陽寮で働くよ。星斗さんも大変だし」


 そこで星斗の名前をわざわざ主張する意味がわからない。今星斗は消沈中だからそっとしておいてほしいなあ。仕事をある程度振っているのは、悲しみから脱却させるために、無気力にならないように最低限ってだけだから。

 でも、星斗を支える人は必要だし、政府との癒着の資料も欲しい。ならこのまま大峰さんには働いてもらおう。

 星斗のことは過干渉させないように、それだけは気を付けて。


「伏見校長。これからはこの姿で過ごそうと思いますが、問題はありませんか?」

「染髪というわけでもないし、校則上は問題ない。悪霊憑きでもないなら、届け出の理由もないからね。私としても確認したいことは、君が陰陽寮を正式に譲渡されるという通達が瑞穂殿の署名で届いたことだ。学校はどうするんだい?」

「陰陽寮を治める人物が中退では外聞が悪いでしょう?このまま卒業まで在籍して、陰陽師大学に進学して卒業する予定です」

「とはいえ、出席は極端に減るだろう?」


 その確認に俺は頷く。

 どうしたって学校での勉学よりも陰陽寮の運営の方が大事だし、言ってしまえば学校で学ぶことはほぼない。歴史やら法律やらは学びたいけど、それ以外となると特には。


 陰陽術の実技に関しても、今更学ぶことなんてない。

 卒業したという証以外に、今求めているものはないんだから。

 出席については学生の芸能人と同じようなものだろう。彼らだって収録や撮影のために平日学校を休んだりする。夜になれば魑魅魍魎が出るんだから、平日だろうがなんだろうが、陽が昇っている時間帯は希少だ。

 俺は純粋に昼夜問わず、時間が欲しいだけだけど。この学校が陰陽師に合わせた時間帯だからこそ、通いづらくなる。


「週二日、それくらいしか来られないと思います。一気呵成に畳み掛けなければ、逃げようとする輩も多いでしょう。その対応がひとまず済むまでは、頻度はそんなものかと」

「法師殿や瑞穂殿には手伝ってもらえないのかな?」

「……時間がありませんので。それに瑞穂殿にはいつまでも頼れませんよ。あの人は先代麒麟のように、表舞台から去るべきです」

「君がそう言うなら、そうなんだろう。それで、那須君はどうする?」

「珠希はそのまま通います。彼女は陰陽寮でやらせることもありませんから。彼女の悪霊憑きとしての暴走を危惧されているのであれば、瑠姫と後ろの銀郎を就けます。そんな心配は必要ないでしょうが」


 難波最強の式神二体を分家の子に就ける。これ以上の措置はないだろう。

 ミクの悪霊が暴れる、なんて事態はあり得ないわけだけど。

 どうせ俺の護衛には吟と金蘭が就くことになるんだし、こっちの防衛については問題ない。金蘭と銀郎は交換してもいいけど。


「ついでにゴンも就けましょうか?」

「その辺りの差配は君たちに一任するよ。それだけの戦力がいれば学校側は説き伏せられる。大丈夫だ」

「良かったです」

「それに卒業に関しても、出席率が低くてもどうとでもしよう。君の筆記試験と実技試験の結果を考慮して、すでに卒業資格はあると考えている。特に実技に関しては言うことないだろう」

「ご配慮、ありがとうございます」


 知識はそれでもいいんだろうか。三年生が受けるテストを受けたわけでもないのに。実技に関しては全くもってその通りだけど。もし試験が必要なら大峰さんをボコそうとか考えてたけど、一つ手間が減ってありがたい。

 なんだか、中高とまともに試験受けてないし、学校生活もきちんと送らないことになってしまった。これじゃあ不良って呼ばれても仕方がない経歴だ。


 いや、日本の建て直しが優先だけど。

 中学校くらい、まともに過ごしておくべきだったか。祐介ともっと思い出を残しておくべきだったか。

 今更、天海に言われた言葉が響いてくるなんて。


 祐介との関係はこれで良いと割り切ってたし、学校生活に関してもこれで良いって思い込んでた。終わってから後悔するもんなんだよな、こういうのって。

 学校に来られる日は、できるだけ有意義に過ごそう。もう少しクラスメイトにも目を向けよう。それができる最善だと思う。


「これくらい、我が校では普通だぞ?何せ麒麟になるからと最優秀な生徒が辞めることも多数。四神になるからと出席が極端に減る生徒、様々だ。前例はいくらでもあるのだから、君は気にしなくて良い」

「確かに。プロのライセンスを取ってしまえば、緊急時など学生問わず招集されますからね。それと似たようなものだと」

「ああ。この学校ではそこまで変なことではないよ。現に今の三年生も出席率で言えばそこそこだからね。実習や訓練に駆り出されることもある。君の場合は五神に抜擢されたことと同義の対応を取るだけだ」


 それくらいは確かに措置があるものか。プロとして活躍するためには色々な研修や連携訓練、出張がある。それに駆り出されたら休まざるを得なくなる。

 俺もそれに適応させて、休みは公欠扱いにしてくれるということだろう。戦わないけど。前線に出るだけが陰陽師じゃない。学術に手を出したり、穏便に過ごしたいけど。そうもいかないんだよな。

 まあ、やるしかないからやるんだけど。


「あと、賀茂静香君の件について。彼女についてはお咎めなしになった。彼女の生体データを九州の警察にも提出した。功罪折半、ということになっている。だがこれ以上は、という話だ」

「わかってます。俺だって、好き好んでそんなことしたくありません」

「良識があって助かる。彼女のデータには悪霊憑きも混ざっていて、あの時それで暴走したことになっている。あながち、間違いでもないのだろう?」

「妖と神を混ぜていましたから。彼女の暴走の原因は、賀茂本家のせいでしょうが」


 そういう風に処理されるなら、一応助かったと言える。銀郎のやったことは問題だけど、大義名分があれば正当防衛扱いになる。

 あとはただ、彼女の冥福を祈るだけだ。


「確認したいことはこんなところだな。他にお前から何かあるか?」

「いえ、ありません。この学校が陰陽寮の矜持を守ってくれるのであれば、不満もありませんから」

「基本的な運営も、カリキュラムもほぼ変わらないから、問題はないな。陰陽師の育成に国も税金を投入することに変化はないから、国立というのも変化なし。むしろ今陰陽師が仕事にそっぽ向いたら、日本が滅ぶってお偉いさん方もわかっているんだろう」

「ですね」


 八神先生がようやく話したと思ったら、確認と国について。それは姫さんから聞いているから、本当に会話してないようなものだ。


「その辺りはこの後の全校集会で話すつもりだよ。上は変わっても、学校からしたら大きな変化はないことを周知するのは大事だ」

「運営をまともに舵取りする以外の変化はありませんからね。そもそも呪術省の設立には難波含めて陰陽大家が複数関わっているんです。土御門・賀茂が独自にやっていた後ろ暗いことを排除すれば、まともな組織なんですよ」

「ごもっとも。では校長、麒麟。話は終わりでいいですね?」

「ああ。手間を取らせたね、難波君」

「こちらにも大事な話でした。では、失礼します」

「俺も個人的な話がある。ちょっといいか?」

「ボクももう用事ないんで、失礼します」


 八神先生と大峰さんも一緒に退室する。八神先生の用事は何となく察しがついていたが、大峰さんの前で話すことじゃない。

 そう思っていたら、大峰さんが先に話しかけてきた。


「難波君。ボクは今日付けでこの学校を退学する。さっきも言った通り、残る理由もないし、生徒会ももうすぐ選挙で入れ替わる。……色々と迷惑をかけたね」

「大峰さんのせいではないでしょう。学校で起きたことのほとんどは、俺狙いの法師だったんですから、むしろ大峰さんは俺の被害者では?」

「四月の一件だけじゃないか。他のことでも君たちを守れなかったし、先達としてはダメだったからね。そのお詫び。珠希ちゃんにも一言言ってから去るよ。あと、麒麟ってこと黙っていてくれてありがとう」

「言えるわけないですからね。こちらもご迷惑をおかけしました。ありがとうございます」


 お互い頭を下げた後、にこやかに別れを告げる。とは言え結局所属は俺の下になるわけだし、麒麟として働いてもらうからすぐ顔を合わせるだろうけど。

 さて、本題。


「八神先生の話とは?」

「いや、お前に疑われたままだったなと思って。弁解しようかなと」

「もう分かってるからいいですよ。あなたと都築生徒会長は、土地神ですね?」

「どのタイミングで?」

「この前の儀式の後ですよ。本来の力が戻って神気が増えて、同族・・を視る感覚が戻っただけです。銀郎とかゴンは気付いた上で話さなかったんですが」

『敵対していない存在についてとやかく言いやせんよ。あなたの直感でも悪い判定は出なかったでしょう?』

「まあな。それにいざとなれば守ってくれたんだろ?」

『そりゃあ、神殺しの汚名を浴びてでも』

「ならいい」


 その告白がしたかっただけか。それ以外に話すことはなさそうだな。

 こっちは聞きたいことあるけど。


「信仰とかどう集めているんです?それで最近御座に戻らざるを得なかった土地神を知っているんですが」

「どっちも祀られている神社が大きいし、神主一家にはこういうことするために京都へ行くって伝えてある。地元や神主一家がちゃんとしていれば、土地から離れることもできるさ。権能も加護も、しっかり与えているし」

「なるほど。でも、彼女には適応できなかったな……」

「元から神として信仰を受け取っていないと無理だ。他の神のおこぼれでなってしまった存在には、今回の変化は厳しいものがある」

「……ままなりませんね」


 零れた存在がどれだけあることか。昔から一切変わっていない。視野が広くなって事実を知って。だからこそ近くが見えなくなったり、足元を掬われたり。そんなことの繰り返しだ。

 これ以上はそんなことがないようにと、誓って動こう。それが今までの贖罪になるだろうから。

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