第137話 1ー2
というわけですぐに宿泊学習の日はやってきた。
登校初日に班編成と、自由行動でどこに行くのかを大雑把に決めて。次の日にはもう新幹線に乗っている。今日も朝早いからと、昨日は学校が朝の十時に始まって夕方の五時前に終わった。普通の学校みたいだった。
皆の反応はマチマチ。今までと態度が変わらない奴もいれば、距離を取る奴も。まああの宣言って学校を襲った奴の仲間ですよっていうことだから、俺が責められるのもわかる話だ。直接そう言ってくる人はいないけど。生徒で死人は出なかったけど、大怪我した人はいたはず。詳しい数も誰がそうだったかも覚えていないけど、俺を恨んでいる人もいるだろう。それがミクに向けられなければいい。
同じような状況なのは賀茂。土御門よりはマシだろうけど、賀茂も孤立している。元からそうだったと言えばそうだけど、忌避の目線を向けられているのは前以上だ。賀茂自身が何かしたわけじゃないが、あれだけ家のことで横暴に振る舞って来たぶり返しというか。家がやらかしたら、家を笠にしてきた賀茂に向けられる目線も悪いものになるのは当然。
賀茂と同じ班になった奴ドンマイ。宿泊学習楽しくなさそう。班活動とか守らずに土御門の元に行きそう。
俺たちは班のメンバーでひとかたまりになって、トランプに興じていた。俺と祐介が進行方向逆向きに座っていたけど、これくらいで酔ったりしない。ミクは膝の上にゴンを乗せて参戦。
「しっかし、陰陽術の無駄遣いだろ。トランプのために物理障壁作るとか」
「テーブル無いんだから仕方がないだろ」
新幹線でトランプができるように設定されてるわけないだろ。だから仕方がなく俺が物理障壁を真ん中に設置してやっている。新幹線とはいえ道中暇で、祐介が持ってきていたトランプをやっている。こういうところは気が利いて何より。
やっているのは大貧民。大富豪って言うのが一般的かもしれない。地元ルールとして8切り、11バック、階段革命ありでやっている。
で、ゴンが強いんだかミクの運が良いんだか。今三回連続で大富豪になっている。一回勝ちだすとそのまま勝ち続けるゲームだからな。
「はい。革命です」
「ここで!?……誰か、革命返し!」
「できない。パス」
「クソ、俺もパス」
「私もパス」
「成立ですねー。じゃあそのまま、3です」
『お前ら、ジョーカー使わないとまた珠希が上がるぞ?』
「じゃあジョーカー!」
「ごめんなさい。スペードの3です」
「んなっ!先生ズリイ!」
あーあ。祐介虎の子のジョーカーを切ったのに。スペードの3まで持ってたのか。
ゴンがいるとミクの独走状態が止まらない。俺のセコンドになっても勝たせてくれないのに、ミクだとボロ勝ちするんだよなあ。運の問題か?俺って昔からこういう運要素絡むものって弱いんだよな。おみくじとかでも大吉出したことない。
「4のダブルです。ありますか?」
「パス」
「えー。珠希ちゃんあと一枚じゃん。パス」
「……パスだね」
「はい。上がりです。ゴン様ありがとうございます」
『珠希お菓子よこせ』
「はい、ただいま」
お菓子食べたかっただけかよ。バッグから出したチョコ菓子を美味しそうに食べる一人と一匹。
そこから泥仕合。祐介はジョーカーを切ったからか革命中で手札が良くないらしい。なんだかんだで富豪天海、貧民俺、大貧民祐介になった。富豪から大貧民ってすごい転落っぷりだな、祐介。俺?ずっと貧民だけど?さっき祐介にジョーカーあげたの俺だし。
「UNOにしようぜ!銀郎さんと瑠姫さんも込みで!」
「どれだけ遊び道具持ってきてんだよ。二人を呼ぶのは無理。スペースがない」
新幹線の中で式神をそうぽんぽん呼べるか。通路を塞ぐのはマナー違反だ。ゴンは膝に乗せられるから呼び出してるだけ。あとはお菓子食いたいだけだな。
「難波君!ここにも物理障壁出して!」
「自分たちでやれよ……」
「だって私たちじゃ呪符ないと出せないもん」
「ハァ。ON」
女子の集団に請われて、物理障壁を出した。お茶会のためのテーブル代わりを俺に頼むな。これくらい簡単だけど。
祐介がUNOを用意し始める。大貧民になったからやめるって調子いいな。
「いやー、良かった。普通に受け入れられてるじゃん。明も珠希ちゃんも」
「クラスメイトに?」
「そう。もうちょっとお前のせいで!みたいに掴みかかってくる奴いるかと思ったけど、そんなことないし」
「どうだか。他のクラスや学年だったらわかんないぞ?賀茂と土御門には恨まれてるだろうし」
「それでも。二人が普通の学生として受け入れられてるのは、私も嬉しいよ。この前のは凄く衝撃的だったし、疑っちゃうのはしょうがないけど」
「そういう薫さんは大丈夫ですか?あの瑞穂さんと親戚に当たるわけですし……」
祐介も天海も心配してくれるのはありがたいけど、天海は遠縁とはいえ同じ天海として注目されるからなあ。どうあったって話題にはなると思うけど。
そこは俺たちも心配してた。四月の事件の後にもそういうのがちょっと増えていた。天海本家とは遠縁っていうことと、実家が那須にあるって知れ渡ったらすぐ鎮静化した。
「学校の人は瑞穂さんが裏・天海家の人って知ってるからそんなには。まあ昨日は道摩法師がどう関わってるのかって聞かれたけど。私も知らないから答えられなかったけどね」
「法師も最初は天海内裏って名乗ってたから、そうもなるか。ただの犯罪者と、道摩法師じゃだいぶ違う」
たぶん一千年の間に法師が興した家が天海だと思うけど、ゴンにも聞いてないしそこら辺は特に気にしていない。
ただ法師って世間的には呪術犯罪者でかつての都を落とした大罪人って認識だからな。陰陽師を実際殺してるし、かつての都を落とそうとしたのも事実。いくら晴明と仲間だったとしても、消えない事実はある。帳消しにはならないことはいくらでもある。
どうしたって法師は好意的に見られないだろう。彼に殺された人の親族は許せないだろうから。
「でも、天海家って本家もそうだけど、現代で何かしたわけじゃないから。私も血縁からしたらだいぶ遠いってわかってもらえたし、私は大丈夫」
「そりゃあ良かった。薫ちゃんが学校辞めるってなったら味気なくなる」
「……祐介。天海を口説いてるのか?」
「ごめんなさい。そういう目で見られないかな」
「俺勝手に告ったことになって、勝手にフラレてんのかよ⁉︎失礼な、地元仲良し四人組が欠けたら嫌だなってだけだろ」
「私、住吉君とまともに会話し始めたのって今年に入ってからだよね?」
「わたしは地元ちょっとズレてるんですけど」
「細かいことはいいんだよ!今こうして仲良くしてるんだからさ!」
天海が辞めたらミクが悲しむ。あとゴンもここまで鍛えたんだから、弟子が辞めたら気分を害するだろう。
あの人たちの迷惑を被るのは俺たちだけでいい。天海は普通に生きてくれ。
「そういえば、薫さん。お父さんの件は大丈夫なんですか?ほら、呪術省が潰れちゃって……」
「今は呪術省管轄というより難波家が保護してくれてるから大丈夫なはず……。だよね?難波君」
「天海のお父さんは難波で責任持って守ってるから。星斗にも物的証拠残ってないか呪術省の資料探ってもらってるけど、今のところ進展なし」
祐介が見た晴明紋とやらは教科書に載っているような偽物の方だろう。我が家に保管されている本物は神気を宿しているし、教科書に載っている物と異なる。もう土御門光陰が犯人ってわかってるんだけど、一応物的証拠がないから逮捕に踏み出せないだけ。
終わってるな、土御門。
「星斗もこれからのことを相談するって一旦実家に戻ってるから真相がわかるまではもう少し時間がかかりそうだ。悪いな、天海」
「ううん。しょうがないよ。あの事件、呪術省が日本に公表していないんだもの。……あの人たちに任せたら、もうこういうことはなくなるかな?」
「瑞穂さんはあてにしない方がいいぞ。あくまで代理だって言ってたから。本人も長くトップにいるつもりはないらしい」
「だから星斗さんや明くんを指名したんですもんね」
「そうそう。明こそ学校どうするんだよ?」
「大学までは普通に進学するつもり。その後は陰陽寮でトップになってるかも」
「難波の真実が大きすぎたからなー。それもやむなし、か」
祐介は軽く言ってくれるが、これは本来ありえない出世街道。やむなしってわけでもない。第一、姫さんに呪術大臣の代わりに対する任命権なんて存在しないんだから。ただあそこまでの実力を持った陰陽師がそう言ったことで、悲劇のヒロインがそれを言ってしまったがために、覆せない事実へと民衆を扇動してしまっただけ。
難波に任せるのはおかしいって声が出れば簡単に俺も星斗も陰陽寮のトップなんてやらなくてよくなる。
残念なことに、そんな世論が一切出ていないわけだけど。姫さん擁護の声がすごく出ている。一方法師の存在については懐疑的だ。一千年生きる人なんて人間の常識に当てはまらないからな。
十七年前に亡くなった人がその当時の姿をしているのは認められるのに、一千年生きる過去の人は認められないっていうのは少し面白い。
「いやー。未来の呪術大臣殿にはゴマをすっておいた方がいいか?」
「呪術省はなくなるし、大臣の席もなくなるだろ。ニュースとか見てないか?」
「見たけどよ。陰陽寮って名前になると思うか?」
「なるんじゃないかな?呪術省ってものそのものが嫌悪されてる現状だし、政治家にするのはまずいって意見も多いから。選挙なしで政治家になってたわけだし」
「今は日本政府も対応に追われていますし、呪術省と手を組んで様々な予算を横流ししていたという話も出てきましたからね。無人パワードスーツとか、人道的ではありませんし主な目的は海外侵略用ってデータが流れちゃいましたから。呪術省単体で海外侵略を考えるとは思いませんし、自衛隊との関与も確認されましたから国絡みでしょう」
『自分の国もまともに纏められてないのに、海外目指すとか。足元が見えてなさすぎるぞ』
祐介は姫さんのこと懐疑的なんだな。でも天海やミクが言ったように、世論は今の政治を疑ってる。姫さんが提出した資料が電子的にも改変されたデータではないとわかって日本は大混乱。
デモとかかなり久しぶりに起こってる。京都も東京ほどじゃないけど色々と騒動が起きてるし、妖たちが街に入り込んで来たりもした。今朱雀は誰とも契約していないので京都の方陣は機能していない。星斗が一応仮の朱雀になっているらしいけど、契約を交わしていないらしいので今のところ空席。
かまいたち事件といい、混乱が続いている。だから呪術省の最後の権力でこの宿泊学習が前倒しになったんだろう。
息子たちを危険から遠ざけるために。
「やめやめ。暗い話はなしでいこう。折角の旅行なのに」
「難波君、宿泊学習だよ?」
「陰陽術の実地訓練するわけでもなし。観光名所巡るだけで勉強にはならないさ。っていうか。この一学年で勉強だって思ってる奴が何人いる?あんなことあったばっかで繰り上げ日程の宿泊学習で。誰も勉強なんて考え、頭にないよ」
俺たちも誰も勉強なんて思ってない。ただの現実逃避期間、っていうのが一番的を射ている。
日本も政府も呪術省も混乱していて、なのに学校とか行ってられるか。授業なんて受けていられるか。そんな大人と子どもの双方の意見が合致しただけの企画だ。要するにまだ、日本の変化に乗れていないだけ。四月・五月は日本全体に影響があっても、どうしたって京都中心だった。それ以降も京都でばかり物事が起こったが、今回は確実に日本の根幹に関わる出来事。
もう少しくらい、普通でいていいだろという
「それにほら。元々この宿泊学習って何のために行く奴だったっけ?」
「土地ごとの霊脈、および魑魅魍魎の種別調査だよね……?」
「この前の出来事で龍脈も霊脈も隆起してそれこそ一千年前の日本に戻ったのに、呪術省が解体されてデータ取りなんて済んでない状況で俺たち学生が行ってどうする?」
「事前データと違うことしかわからないでしょうねえ。まさかその差異をわたしたちに調査させるわけにもいきませんし」
『こんなのただの方便による疎開なんだから、真面目に考えなくていいぞ。天海は風水を使うんだから調査はしてもいいかもしれねえが、学生の領分を超えることだし、そういう調査は数年単位でやるもんだ。つまり、学生でやることねーよ」
「ゴンだったらその調査どれくらいで終わる?」
『オレは瑞穂じゃねーから、良くて一週間ってところか。あの瑞穂なら風水使ってちゃっちゃと終わらせるんだろうけど』
まあ、神様でもできないことはあるか。人間にできて神様にできないことくらい、幾らかはある。ゴンは全能神ってわけでもないんだし、もしそうなら伊吹に手こずったりしないからな。
本人曰く豊穣の神らしい。その前に全能神なんてどれだけいるんだって話だ。各神話に一柱いればいい方だろ。そんな存在がこんなところでお菓子食ってるとは思えない。
「あ、祐介。俺UNOってあまりルール知らないんだけど」
「マジ?んじゃあルール説明からな」
というわけでルールを聞くが、ババ抜きっていうか、特殊なカードが多い大貧民っていうか。色が面倒なカードゲームだ。何となくルールを把握してやるけど、最初は簡単に負けた。ミクの運が良いのはいつも通りだけど、特殊な役が多すぎてルールを把握するまで時間がかかる。
プレイしてみて、それやって良いんだと気付くことが多い。ゴンなんて一発目のはずなのに全部把握してミクに助言してるし。
『ククッ。こういう遊びに弱いのは血筋だな?』
「なんだよ。父さんもこういうゲームは弱かったか?」
『康平のなんか知るか。晴明も遊んでたらだいたい負けてたな。法師と一緒に最後まで最下位対決してやがった』
「わたしも血筋ですけど、勝ってますよ?」
『珠希はオレの加護がついてるからな。負けねーよ』
「なにそれズリい!先生、俺の膝に来てくれ!」
『お前の運は最悪だ。祐介、諦めろ』
「なにその予言。え、先生ってそういう人の運みたいなものまで見えんの?」
それは知らなかった。ゴンの眼もかなり特殊だとは思ってたけど、そこまで見えるものだったなんて。
異能とかそういうのなら俺とミクでも見えるけど、人の運やら寿命までは見えないのに。やっぱり特殊な眼と神の眼は別物だな。
それからもUNOを続けて、俺と祐介でビリ争いを。ミクの一人勝ちが続く。天海も運が良いのかゲームがうまいのか、ミクに勝てなくてもずっと二着で居続ける。そんな感じで時間を潰しながら、たまには窓の外の景色を見ながら、新幹線は九州へ向かっていった。
福岡、博多駅に着いてまずは駅に到着していた大型バスに乗り込んだ。このまま郊外の観光施設を巡るということだったので、未来視で視た内容は今日じゃないと思っていいだろ。クラスごとにバスに乗り込んで、こんな時期だというのに旅行をするバカたち。
決めたのは俺たちじゃなくてお上だから、俺たちが悪いわけじゃないけど。今日の予定ではこのままお昼を大きな食事場で食べて、その後白糸の滝へ行くクラスと桜井神社に行くクラスに別れているらしい。ウチのクラスは白糸の滝だな。
その前に食事ということで郊外の大きなドライブインへ。八クラスの人間が入れるほどの大きな場所が良く取れたな。逆か。この時期どこも修学旅行とかやってられないって判断して断られたから、空いてるのか。
十月と言えばそういう修学旅行シーズンだけど、日本が混乱しすぎて行事ごと潰れたって高校も多いとか。俺たちが街を歩いてたら何かネットとかで叩かれないだろうか。陰陽師学校の生徒はこんな緊急事態なのに遊んでいていいのかとか。宿泊学習なんて行かずに魑魅魍魎を倒せとか言われそう。一般人ほどそういうこと思うだろうな。
力があるんだから、一般市民のために働けとか、言いそう。特に若者と年配。そういうネットの意見とか進んでみようとは思わないけど。
というわけで食事だ。バイキング形式で、好きなものを取ってきてテーブルで食べる。俺はゴンの分も取ってくるけど、銀郎と瑠姫は目立ちたくないからとパス。お金払ってないし、ぶっちゃけゴンが食ってるのすらマズイ気がするけど、そんなのゴンに言ったってしょうがないからな。
自重してくれる二人に感謝。
食事の時はさすがに男女別でミクと離れたが、男子がキョロキョロと周りを見ている。
「誰か探してるのか?」
「ああ。ほら、例の麒麟。まさかウチの学生が麒麟とは思わないじゃん?確か生徒会の人だろ」
「ちっちゃくて可愛いよなー。この宿泊学習でお近づきになろうと思ってるからさ」
「ああ。大峰さんこの宿泊学習に来てないぞ」
「……ハァ⁉︎」
「ちょっと待て。何で難波が知ってるんだよ⁉︎」
「本人から聞いたからだけど?」
大峰さん、クラスではどんな感じだったんだろうか。生徒会のことしか知らないな。学校生活について聞く前にあの人は生徒会役員で護衛で、麒麟だったんだから。年上の人が同じ学年に混ざっていたっていうだけで笑いそうなのに、呪術省の使いっ走りにされてたんだから。最強のはずの麒麟が。
まあ、最強でも何でもない、本当の人柱だったんだけど。適性を考えなかったらこの代の最強陰陽師は間違いなくマユさんだし。
二十歳の子ども体型が高校生のフリしてて、年下を恋に落としちゃってるんだから酷い女性だ。プッ、笑えてきた。
おっと、ここで笑ったら余計怒るだろうし、平然を装わないと。
「理由は知っての通り、麒麟だから。今京都を離れるわけにはいかなかったんだろ」
「難波はいい訳?一応後継に指名されたんだろ?」
「分家の兄貴分が頑張ってくれてるからなー。それに俺、五神でもないただの高校生だし。そんな実権持ってねーよ」
「明がただの高校生な訳ねーだろ」
祐介がそう言うけど、表向きただの高校生だからな。プロのライセンスも取ってないし、血筋だけで後継に指名されただけ。祐介なら俺の実力をある程度わかってるだろうけど、肩書きが血筋以上何もないんだよ。だから世間的には難波の次期当主ってくらいしかステータスがない。
そんな人間が何をしろってんだ。星斗みたいにプロとして活躍してるとか、そういう積み重ねが一切ないのに。
「こんな一高校生が呪術省の省庁行ってあーだこーだ指示出して、誰が言うこと聞くんだよ?俺は国民に選ばれた代表じゃなくて、瑞穂さんが勝手に指名しただけの学生。これがプロの九段だったりしたら話は別だろうけど、日本の法律なんて全く頭に入ってない子どもだぞ?ただ指名されただけ。それで何ができるんだか」
「でもネットではあの瑞穂さんってすごい人気なんだろ?史上最高の陰陽師。先々代麒麟。今やちょっと調べればあの人の素性とか出てくるからな。全国巡って妖を倒してくれていた日本の救世主。そんな人が指名したってなると」
「それなー。ウチの親父もファンだったみたいで、瑞穂ちゃんの言葉なら信じられるとかって豪語してやがった。どんな形であれ生きてて良かったって泣いてて、お袋がドン引きしてた」
はぁ。影響力ありすぎだろ。姫さんのことちゃんと調べてなかったけど、そこまでカリスマあったのか。実力だけでも引っ張れるけど、その上で人格者、統率力ありとか錦の御旗として完璧すぎる。
現状麒麟の本体と契約してるのも姫さんだし。ルックスもある。血筋だって天海の本筋。うーん、隙がない。
「天海の血筋って美形しか生まれないのかねー?」
「あ?」
「だって薫ちゃんも美形じゃん?そんであの瑞穂って人も美形じゃん。そういう家なのかなーって。難波の家だって皆美形じゃん?お前にしろ奥様にしろ、珠希ちゃんにしろ。あの香炉さんも美形だしなー」
祐介の言葉を聞いて思い浮かべるよりも本人を見た方が良いかと思って、天海を探す。……周りと比べると確かに美形、かもしれない。
あーくそ、ダメだ。ミクやら瑠姫やら金蘭様やら姫さんやら玉藻の前様やら、美形に慣れすぎている。比較対象が狂ってるな。美形だの綺麗だの可愛いだのよくわからない。
ミクが可愛いのは変わらないんだけど。
「遺伝は、ある程度関係してるだろ」
「そうそう、遺伝!難波の家ってどうなってんの?DNAが特殊ってニュースで見たけど、二人もあんなのになってるわけ?」
「あんなのって。まあ、なってる。ウチの家系は末端も末端にいかなければああいう遺伝子だよ。桑名先輩たちはどうなってるのか知らないけど」
「ん?先輩にも血筋がいるのか?」
「静岡に拠点を構える家系が一つ。染色体なんて気にしたことなかったから、聞いたこともないけど」
そんなことで電話するのもなあ。調べたかどうかもわからないのに。
でもあの退魔の力もきっと神の血筋っていうのが関係していると思う。あの頃、那須に封じられた魔を取り除くのに適した力だったから。それは使われ方が土地のためではなくなっていたけど、きっと神からの
こうして一年生が勢ぞろいしてみて、俺やミクに敵意の視線を向けてくる連中はいないな。俺のこと見てヒソヒソ話とかはしてるけど、確認とかそういう感じ。悪意には敏感だから間違いない。
そこまで敵視されてないってことか。土御門・賀茂の狂信者以外は。
一定層いるんだよなあ。この二家の信奉者って。そんな奴らが土御門と賀茂を囲んで食事をしている。んで、俺のことを睨んでる。
姫さんの発表を全て嘘だと思い込んでる連中だな。あの過去視を幻術だとしている、面倒な連中。信じないのは別にどうぞって感じだが、科学が出した結論まで認めないなら何を信じられるんだ?伝統とか言われたらバカすぎて腰を抜かしそう。
この旅行中に喧嘩ふっかけられないように気を付けないと。ミクにはずっと瑠姫をつけておこう。
そんな決意をしながらゴンへの給仕をしつつ、昼飯を食べてバスで移動を始める。移動中はカラオケとか始まったけど、俺に出番が来なくて良かった。カラオケとか行ったことないしやったこともないし、最近流行りの歌とか知らないからどうにもできない。
移動中聴いていた歌を全く知らず、ただ恋の歌が多いなあと思っていたら目的地についたので安堵のため息が溢れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます