あんけん、どが

【この動画にはRPを含みます】というテロップが流れたあと、画面の中に、魔王が登場しました。

 腕組みをして不敵に笑う魔王が立っているのは、いつもの公園ではありませんでした。


 ソファの上にぬいぐるみの並んだ、かわいらしい洋風の子ども部屋のような場所です。どこかのスタジオを借りた模様です。


 中央にしつらえたアンティークな猫脚テーブルの上には、白いお皿に盛られた褐色のプリンがありました。

 黒砂糖を使って作られた「くろねこぷりん」という商品です。


「こほん。にんげんどもよ、ワシは、まおうにゃ」


 カメラの前で、魔王が手を高々と上げ、名乗りをあげました。


「これは、くろねこぷりんにゃ。おまえたちからのみつぎもの、うけとったにゃ!」


 そう言い放つと魔王は、ちょこんとテーブルにつきました。

 そうして、ぱくぱくぱくぱく、「くろねこぷりん」をスプーンで口の中に放りこんでいきます。


「うむ。うまいにゃああ!」


 おかわりを要求して、五個、十個、二十個……。

 勢いはおとろえることがありません。とってもしあわせそうな表情です。


「あまいにゃあ。とろけちゃうにゃあ」


 隣には、執事のような恰好をしたカラスが立っていて、新しいプリンを用意したり、こぼれたものを拭き取ったりして、給仕をしています。

 今日この場を用意したのは、魔王が面接を受けた株式会社カラントです。

 会社から、「ぜひお父さんもご一緒にご出演ください」と言われて、断り切れなかったのです。


 山のような黒いプリンを食べ終わると、魔王は最後に、大声で言いました。


「くろいのは、にせぷりんにゃ! ぷりんは、きいろいのにゃ! でも、うまいから、ゆるすにゃ!」


 好き勝手言ってます。


 お言葉を発して満足したのか、画面の外にとことこ向かいました。

 が、やっぱり気が変わったのか戻ってきて、また椅子にどっかりと座りました。


 そうしてまた、黒いプリンをもりもり食べ始めました。食べ足りなかったみたいです。

 カメラに映っていることなど、微塵も意に介していないようです。


「くろねこぷりんは、にせぷりんにゃ。でも、うまいにゃ!」

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