ワシのにゅちゅぶ

 にゅーちゅーぶで人気だと聞いて、魔王の表情がぱっと明るくなりました。


「にゅ? にんげんたちが、やっとワシのみりょくにきづいたのにゃ? ワシをほめたたえているのにゃ?」


「ええ、まあ……」


 少々カラスは気まずそうに答えました。半分当たっていますが、半分はちがいます。


 トリュスの意見に従って、魔王が食べ物をしあわせそうに食べる動画をあげたところ、じわじわと人気が上がってきていました。


「これからひるめしにゃ。ぷりんじゅうごこと、いなりずしにじゅっこ、ちーずばーがーじゅっこ、くうにゃ。そして、こーらといちごみるくをのむにゃ」


 人目をひく愛らしさを持つ幼女が、牛馬のようにもりもりと、幸福の極みのような表情をして、目を細めながら食べる動画は、人間たちの度肝を抜いたようでした。


 コメント欄には、魔王の美貌と大食い力をたたえるコメントが並んでいます。


『え、まじかわいすぎん?』


『顔はめっちゃかわいい』


『こんなかわいい子、見たことない!』


『ほんとにこんなに食べてるの? 編集? CG?」


『お父さんもめちゃイケメンなんだけど。推せる』


『すごい食べっぷり。見てるだけでしあわせそう……』


『これは伸びる』


『ドールとシロンよりかわいい』


 しかし、絶賛のコメントばかりではありません。賛否両論ございます。

 それが、ネットというものであり、世論というものです。


 しかも、魔王ですから……。


『生意気すぎるだろ』


『この喋り方。親はどんな教育してるの?』


『食べさせすぎじゃない? 虐待では?』


『頭にもプリンつまってそう』


『口の悪いクソガキだな。ぶちのめしてぇ』


『ドールとシロンのほうがかわいいだろ。工作員乙』


『俺のほうがかわいい』


 本人が見たら怒りくるうであろう、しんらつなコメントも並んでいます。

 人間というものは、魔族と同じくらい、心根が素直だったり、醜かったり、いろいろな者がいるんだなあと、変に悟ってしまうカラスです。


 とりあえず魔王には「陛下のご威光をたたえる声は日に日に高まっております」と伝えておきました。



 その数日後……。


 カラスのスマホに、オーディションを受けた会社から連絡がありました。

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