ワシをあがめるにゃ!

(へ、陛下……。なんとご成長あそばされて)


 カラスは魔王の百倍は緊張して、このオーディションに臨んでいました。

 そして、感極まってもおりました。


 名前をなのれただけでも大した成長です。なにせ、もとがもとですので、相手から求められた簡単な要求に応えられただけでも、すごいことです。


 負けず嫌いの魔王は、公爵家の狼のふたごに負けたくないため、カラスとトリュスとともに、真面目にオーディションに向けての特訓をつんだのです。

 自身もオーディション経験者のトリュスのアドバイスは、実践的でおおいにためになりました。


 その成果は大きく、うまくいくかに思われました。


 しかし……。



「もういいです。もういいですよ」


「なんでにゃ! もっとうたうにゃ!」


 やはり、そううまくはいきませんでした。

 真桜こと魔王の本性は、簡単にかくしとおせるようなものではありませんでした。


 音楽に合わせて踊れといわれれば、楽しそうに部屋中を駆け回って暴れ、他の子をおびえさせました。面接官の制止など聞きもしません。


 歌えといわれれば思いっきり音程の外れた歌を大声で披露し、「もういいですよ」と言われようがやめようとはしません。


 オーディションがめちゃめちゃです。

 まるで、真桜リサイタルです。


 ですが、


「あなたの大事なおやつが家族に食べられてしまいました。想像して、怒ってみてください」


 そんなお題が出されたときには、魔王もなかなかいい演技を見せました。怒りの演技は得意なようです。

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