ワシをみるのにゃ!
その子は、あらゆる民族の特徴が入りまじったような、国籍不明の顔立ちをしています。そして、四歳にしては完成されすぎた美貌でした。
まるで、精巧につくられた球体関節人形が、動き出したかのように愛らしいのです。
らんらんと輝く大きな金の瞳は、すこし目じりが釣りあがっていて、猫っぽい印象を与えます。
ひどく利かん気が強そうです。でも同時に、人の目を吸いつけてはなさず、魅了する力がありました。
肩の上で切りそろえられた、まっすぐな黒い髪も艶やかで、すらっと伸びた手足も健康的な魅力をはなっています。
面接官は、小声で相談をしました。
(海外のモデルでも、この幼さでこんなに美しい子は見たことないですよ。こんな子もいるんですねぇ)
(この前のふたごに似てるな)
この黒髪おかっぱの子の容姿は際立っていますが、実は昨日、同じオーディションに、ほぼ同じくらい美しいふたごが応募していたのです。
金と銀の髪をした彼らも、怖いくらいに抜きんでた容姿をした子どもたちでした。
決して大きくはないこの事務所に、世にもまれな美貌を持つ子たちが次々とやってくるなんて、奇妙な偶然もあるものだと思います。
それから社長は、部屋の隅ではらはらした顔で見守っている父親のほうを見ました。
眼鏡にスーツ姿の若い父親、しかし、こちらも長身の美しい男性です。
娘と同じく、さまざまな人種にルーツを持つかのような容貌です。
親がこの容姿なら、真桜という子の成長した姿にも、おおいに期待がもてるなと考えました。
この子の叔母に当たるという所属モデルのトリュスも、スタイルのよい美しい女性です。
(これはぜひうちの事務所に)
CMの件はこれから各所と話し合いをするとして、弊社にぜひ登録だけはしていただこう。
心の中で、社長もマネージャーもそう決めていました。
そう。
彼女、真桜が本格的に口を開くまでは……。
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