もえるまおう
ふたりの姿は見えなくなりました。でも、魔王の怒りがおさまることはありません。
こしゃくのひまごとやらが、なんであんなにえらそうなのでしょう。
どうして、まるで王のようなものいいをするのでしょう。
自分より、王にふさわしい喋りかたをするドールに出会って、魔王は猛烈に敵愾心を燃やしていました。絶対に、たたきつぶさねばなりません。
憤りのために、体からぷすぷすと水蒸気を発しています。
ちなみに魔王の体温は人間より高いのですが、いまは猛烈な怒りのため、さらに温度が上昇しています。
「あ、すごい。陛下のお体がどんどん乾いていきますよ。サウナみたいですねぇ」
ほわほわしゅーと白い湯気をたてる黒い体を見て、カラスが感心したように言いました。
沸騰したやかんのごとき勢いで、魔王が怒鳴りました。
「にゃんとごうまんなやつにゃ! ゆるせんにゃ!」
「そうでしょうか……?」
カラスが首をかしげました。普段の魔王の傲慢さのほうが、上ではないかと思ったものですから。
「ワシは……ワシは……」
ぶるぶるふるえながら魔王が語ります。
「つよいのは、ワシ。かわいいのも、ワシ。おうは、ワシ……」
「陛下?」
様子のおかしい魔王を見て、いよいよ壊れたのかなと、カラスがのぞきこみます。
「ぜったいに、まけんにゃああ!!」
黒猫の金の瞳が、鍛冶屋の炉のように燃えていました。
融解した金属と高温の炎とが、どろどろと入り混じっているような激しさです。
カラスは目を見張りました。これまでは、魔王の頭にあるものといえば、おいしいものを食べて、ちやほやされたいということだけでした。
そんな魔王が、はじめて負けたくないと、本気を出したのです。
「ワシがいちばんにゃ! おうにゃああああああ!」
ちいさな神社に、魔王の絶叫が響き渡りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます