あめにゃ

『それはそうよ。宣伝しなきゃ』


 いつもの公園でカラスは、妹から来たにゃいんの返信を読んでいました。

 にゅーちゅーぶにあげた魔王の動画の再生数が、一向に伸びないことを相談していたのです。


『いくら陛下に魅力があっても、知ってもらう努力をしないと見てもらえないわ』


 魅力……。

 カラスは困惑しました。


 人間たちから注目されるためには、まず宣伝をしなくてはならないのはわかった。

 だが、なにを……?


『しかしとうすれはもしやへいかはみりよくかないのでわ』


 本当に、魔王に魅力なんてあるのだろうかと、弱気になってしまいます。


『とりあえずは、オーディションを受けてみたらいいわ。うまくいくかどうかはわからないけどね。いろいろ行動してみましょう。微力だけど私も拡散してみるわ』


 妹からのメッセージを読みおえると、カラスは魔王のほうを見ました。

 公園のベンチに座って、買ってきてもらったあんパンをむぐむぐとほおばり、いちごみるくで流しこんでいます。

 ちいさな牙の生えた口が大きく開くさまは、まるで獲物を丸のみする蛇のようにも見えて、背筋がぞくっとしました。


 食べている時の魔王はしあわせそうです。眠っている時と食べている時の顔が、一番かわいいといってもいいかもしれません。


(食べているときの顔が……)


 カラスは考えこみました。


 そのときです。


「にゅうああああ!!」


 この世の終わりに直面したかのような声で、魔王が叫びました。


「あめにゃ!!」


 考えごとに夢中になっていて気づくのが遅れましたが、ぽつ……ぽつ……と、注意すれば気づくほどのちいさな雨が降っていました。


「ぬれるのいやにゃ! カラス、なんとかするにゃ!」

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