やばうさぎ
彼女(幼女に化けているのでこう表記しますが、魔王に性別はありません)としては、世界に向けて「お言葉」を発信したので、すでに人間たちに崇められる王になったつもりでした。
そのうちに、貢物を担いだ人間たちが大挙してやってくるはずなのです。
カラスは慌てて言いつくろいました。
「道に迷っているのかもしれません。私たちは、ちょくちょく居場所を変えますから……」
苦しいいい訳でしたが、魔王は「にゃるほど」という顔をしてうなずきました。
「にんげんは、どんくさいのにゃ。まあいいにゃ。おかわりにゃ。ちょこれとぱふぇと、いちごみるくにゃ」
魔王がおかわりしたスイーツに夢中になっている間も、カラスは博士に『にゃいん』でメッセージを送りつづけます。
なにか、この場を切り抜ける知恵が欲しい。できれば、魔王をあっという間に人気者にする知恵も、もし、できれば。
しかし、既読はつくもののそれ以上の反応は一向にありません。いよいよ駄目だと思い切り、電話をかけてみることにしました。
呼び出し音が空しく響きます。一度通話を切ってから、もう一度、かけなおします。
「カラス、なにやってるにゃ?」
さすがに魔王も気になったようです。首をかしげながら聞いてきました。
「申し訳ございません。少々、仕事のことで……。あ、この店のミルフィーユも絶品らしいですよ。いかがでしょう?」
「くうにゃ! みるふぃたのむにゃ!」
あっさりと誤魔化されました。食べ物に弱いところと、考える力のないところは、魔王のいいところです(カラスにとって)
これぽろぽろするにゃああ、うまいにゃああ、さくさくにゃああ、と魔王がミルフィーユに夢中になっている間に、カラスはまた鬼電を再開しました。
何度目のことだったでしょうか。
ようやく、誰かが通話を受けた音がしました。
カラスは必死にすがりつきました。
「博士っ!! おっしゃったとおりにやりましのに……」
『しつっこおおおおい!!! 平日昼間は仕事だこのボンクラガラスがああああああああ!!!』
スマホから怒号が響き渡りました。
耳のいい魔王は「ぎゃっ!!」と驚いて飛びのきました。
「なんにゃ!? このこえ、ぐりむとやらにゃ? あのうさぎ、やっぱりやばいにゃ……」
スマホを耳につけて謝罪しながらぺこぺこ頭を下げるカラスの姿を、魔王はあきれた目で見ていたそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます