ワシのちから

 オムライスがおいしいと噂のカフェで、カラスと魔王は昼食をとっていました。

 テーブルについて、まじまじとスマホを見ながら、カラスは眉間にしわを寄せていました。


(再生数12……。コメント0……)


 勇んでアップした魔王の動画ですが、人間たちにはさっぱり見えてもらえていないようです。


(……なぜだ? この国には一億の人間がいるのではなかったのか!? なんで12……?)


 カラスは悩みました。にゅーちゅーぶに魔王の動画をアップしたものの、どうしてこう反応が薄いのでしょう。

 グリム博士が、人間の幼児に化けた魔王のかわいらしさなら、民衆の心を掴めると言っていたのに……。


(まさか……。人間から見て陛下は魅力がないのだろうか……?)


 魔王は、口の周りをデミグラスソースでべとべとにしながら、スプーンでオムライスを口に運んでいます。


「うむうむ。にゅううう……。うまいにゃあ」


 とてもしあわせそうです。


 言えません、絶対に。

「陛下は人気がありません」だなんて……。


 カラスはスマホのトークアプリの「NYAIN(にゃいん)」を立ち上げて、再度グリム博士にメッセージを送りました。


 先ほどから、助けを求めるメッセージを何度も送信していて、既読の文字もついているのですが返信はありません。

 なにかのミスで言葉が送れていないのだろうかと不安になって、三十回ほど送りましたがなしのつぶてです。


『たすけてくたさいとうかのひませんへいかわおいかりになります』


 覚えたての現地の文字を一生懸命に打って送信しました。


 オムライスを平らげて、生クリームといちごアイスののったワッフルを食べながら、魔王がふと思いついたように言いました。


「にんげんどもは、いつやってくるにゃ? ワシは、だいにんきなのにゃ? ワシのちからはすごいからにゃあ」

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