ぱんけきの、あん

「はにゃ? どこにゃ? ここは」


 翌朝、ベッドの上で目を覚ました魔王は、見慣れない部屋をきょろきょろと見まわしていました。

 アデルの部屋よりはだいぶんちいさくて、グリム博士の部屋よりは明るくきれいです。


 そんな魔王に、妹カラスことトリュスがうやうやしく片翼を胸に当てて、あいさつをしました。


「陛下、おはようございます」


「あ、ぱんけきにゃ!」


 魔王はトリュスを見て叫びました。名前は忘れましたが、パンケーキを食べさせてもらったことはおぼえています。


 ここはどこにゃと話していると、カラスがコンビニから買ってきました。

 大盛りのトマトスパゲティーと豚骨ラーメンとカツサンド、それからあんぱんにプリンとミルクティー。

 朝からカロリーこてこてです。


 ひさしぶりにベッドで寝て、豪華な朝ごはんを食べられて、魔王はにっこにこです。


 トリュスのバッグに入り、こっそり寮から運び出されて、魔王とカラスは野に放たれました。


 大学に登校するトリュスと別れるときも、魔王は笑顔でした。まるで人間の子どもみたいに、手まで振っていました。


「またいつでもくるにゃー!」


 自分の家でもないのに、いばってそう言いました。


 カラスが言いました。


「妹が申していたのですが、陛下のご威光を知らしめるための活動として、にゅーちゅーぶに動画をあげるとともに、もうひとつ。『おうでそん』なる所に行かれてみてはどうかと」


「お…でそん? なんにゃ?」

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