ちーずばーがー

「お待たせいたしました。『ちーずばーがー』を買って参りました」


 スーツ姿の人間の青年に化けたカラスは、公園のベンチで待つ魔王のもとに、いそいそと駆け寄りました。


「うむ。まちかねたにゃ」


 白いベンチにちょこんと乗った黒い子猫は、尊大に返事をしました。


「けいかくをねるにゃ。きょうは、ひゃくにんころすにゃ。あした、のこりをころすにゃ。かんぺきにゃ」


「素晴らしいご計画にございます」


「あさっては、おさかなをたべるにゃ。すみびやきがいいにゃ。それから、おさしみにするにゃ。おにつけ、ふらい、おみそしる、むにえる……うまいにゃー!」


 チーズバーガーを口にするなり、魔王は叫びました。


「うまいにゃ! うまいにゃ!」


 がつがつがつ。

 口のまわりをケチャップでベトベトに汚しながら、魔王はむさぼり食いました。


「にゃんだこれ! にんげんどもは、こんなうまいものをかくしていたのにゃ」


「にゃ? すっぱっ!」


 魔王はピクルスをぺっと吐き出しました。


「これいらんにゃ。すっぱいのすかんにゃ。カラスにやるにゃ」


「はは……。ありがたきしあわせ……」


 カラスが、まったくしあわせではなさそうな顔で、頭を垂れました。


 チーズバーガーをたいらげた魔王は、満足げに目を細めて、手で口もとをごしごしぬぐいました。


「あなどれんにゃ。まだまだうまいものをさがすにゃ」


「はっ」


「そうだにゃあ……。まずは、ぷりんとしゅーくりーむとかいうのをもってくるにゃ! すぐにゃ!」


「おそれながら……いまから人間を滅ぼしにいかれるはずでは? 今日は百人殺すと……」


「うまいものがさきにゃ!」


「ははっ……ごもっともにございます」


 そして、カラスの買ってきたプリンとシュークリームを、あっという間にたいらげた魔王は、そのままぐーぐー寝てしまいましたと。

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