ちーずばーがー
「お待たせいたしました。『ちーずばーがー』を買って参りました」
スーツ姿の人間の青年に化けたカラスは、公園のベンチで待つ魔王のもとに、いそいそと駆け寄りました。
「うむ。まちかねたにゃ」
白いベンチにちょこんと乗った黒い子猫は、尊大に返事をしました。
「けいかくをねるにゃ。きょうは、ひゃくにんころすにゃ。あした、のこりをころすにゃ。かんぺきにゃ」
「素晴らしいご計画にございます」
「あさっては、おさかなをたべるにゃ。すみびやきがいいにゃ。それから、おさしみにするにゃ。おにつけ、ふらい、おみそしる、むにえる……うまいにゃー!」
チーズバーガーを口にするなり、魔王は叫びました。
「うまいにゃ! うまいにゃ!」
がつがつがつ。
口のまわりをケチャップでベトベトに汚しながら、魔王はむさぼり食いました。
「にゃんだこれ! にんげんどもは、こんなうまいものをかくしていたのにゃ」
「にゃ? すっぱっ!」
魔王はピクルスをぺっと吐き出しました。
「これいらんにゃ。すっぱいのすかんにゃ。カラスにやるにゃ」
「はは……。ありがたきしあわせ……」
カラスが、まったくしあわせではなさそうな顔で、頭を垂れました。
チーズバーガーをたいらげた魔王は、満足げに目を細めて、手で口もとをごしごしぬぐいました。
「あなどれんにゃ。まだまだうまいものをさがすにゃ」
「はっ」
「そうだにゃあ……。まずは、ぷりんとしゅーくりーむとかいうのをもってくるにゃ! すぐにゃ!」
「おそれながら……いまから人間を滅ぼしにいかれるはずでは? 今日は百人殺すと……」
「うまいものがさきにゃ!」
「ははっ……ごもっともにございます」
そして、カラスの買ってきたプリンとシュークリームを、あっという間にたいらげた魔王は、そのままぐーぐー寝てしまいましたと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます