第4話 ミサキの時

ミサキ「凄いひかりねー。」

急いで内側の扉に手をあてた喜一郎。

喜一郎「閉めて大丈夫ですか?」

ミサキ「うん。綺麗だけど眩しいかな。」

光はシャットアウトされ。

喜一郎「眩しかったー。好きですけどね。あの光とかも。」

ミサキ「わたしも!あの光は空の上のものだから特別。ちょっと眩しかったけど。」

喜一郎「そう!空の上にいるんだって実感できる時かな。」

ミサキ「喜一郎さんは好きな所とかある?」

喜一郎「凄くベタだけど、富士山かな。」

ミサキ「えっ?登るんですか?」

喜一郎「いやいやまさか。飛行機から見る富士山かな。天気によって見えかた違うのも凄く魅力的だし。」

ミサキ「わかる〜。わたしも好き。富士山見える方予約するもん。」

喜一郎「そーそー。予約とれなくて時間に余裕があれば次の便にするし。」

ミサキ「わたしたちホント似てますね。」

喜一郎「嬉しいです。なんだか。」

喜一郎「今まで人とこんなに気があったっていうか、意見合った事なかったから。」

ミサキ「わたしもそうですよ。」

ミサキ「飛行機のおかげでこんなに気が合う人と仲良くなれたって感じ。」

喜一郎「そうですね。飛行機のおかげで。」

ミサキ「色々聞いてもいいですか?」

喜一郎「どーぞ、どーぞ!」

ミサキ「歳聞いてもいいですか?」

喜一郎「26歳です。」

ミサキ「わたしより1つ上ですね。」

喜一郎「あまり変わらないんですね。」

ミサキ「いくつだと思いました?」

喜一郎「凄く大人っぽいから、1つ2つ上かと…」

ミサキ「え〜!?それって老けてるってことですか〜!」

喜一郎「いやいや、あっ、落ちついてるっていうか、あの〜。」

ミサキ「うふふっ。」

ミサキ「喜一郎さん面白い!」

喜一郎「ひどいな〜、からかってるんですか〜?」

ミサキ「そんなことないですよっ!」

ミサキ「次聞いてもいいですか?」

喜一郎「えー、なんでも。」

ミサキ「好きな食べ物は?」

喜一郎「餃子かな?」

ミサキ「わ〜、びっくり。」

喜一郎「素朴すぎて、ですか?」

ミサキ「わたしも、好きな食べ物聞かれたらいつも餃子って答えるくらい大好きなんですよ。」

ミサキ「女の子らしくないでしょ?」

喜一郎「いえいえ、僕世界で一番好きですから。餃子。」

喜一郎「…あまり世界しらないけど。」

ミサキ「たまに面白い事言いますね。」

喜一郎「天然なんです。」

ミサキ「次いいですか?」

喜一郎「はいどうぞ。」

ミサキ「天気の中で好きなのは?」

喜一郎「だんだん晴れていきそうな曇りですかね。」

ミサキ「!?」

喜一郎「変わってるでしょっ。」

ミサキ「いえっ、わたしもまったく一緒なんです。」

喜一郎「えっ?あまりにも変だから合わせてくれてるとかじゃなくて?」

ミサキ「飛行機乗りはじめは曇ってて、目的地に着く頃晴れ間が見える感じが好き。虹とかでてくれたら完璧。」

喜一郎「同じです。まったく一緒。」

ミサキ「夕日と朝日どっちがすき?」

喜一郎「えーっと…」

ミサキ「最後の質問だから、せーのでいいましょう。」

ミサキ「せーのっ、」

2人「朝日!」

ミサキ「シンクロしましたね。」

喜一郎「驚いた〜。」

ミサキ「ここまで似てる人はこの先いないですね。きっと。」

喜一郎「この質問って?」

ミサキ「どこまで価値観っていうか、そういうのが一緒か気になって。」

喜一郎「どうでした?」

ミサキ「びっくりなくらい同じ価値観っていうか、似てると思いました。」

喜一郎「ホント驚きました。特に餃子。」

ミサキ「あ〜、バカにしてる〜!」

喜一郎「そーじゃなくて、嬉しくて。」

ミサキ「ホントに〜?」

喜一郎「ホントホント。好きな食べ物聞かれて、最初に餃子って言う人いなかったし。」

ミサキ「女の子らしくないでしょっ?」

喜一郎「まだ言ってるんですか〜?」

ミサキ「だって〜。」

喜一郎「そうやって素直に好きなもの答えれるのって素敵ですよ。ホントに。」

ミサキ「そー言われると照れるな。」

喜一郎「僕、自分で作った餃子が一番好きなんです。だからって上手なわけではないけど。」

ミサキ「食べてみたいなー。いつか。」

喜一郎「機会があれば是非。」

ミサキ「社交辞令。」

喜一郎「いや、そーじゃなくて、あのっ、僕の作った餃子でよければ是非。」

ミサキ「やっぱりたまに面白いですねっ!」

喜一郎「も〜、またからかってるし。」

時間も忘れるくらい、決して社交的ではない2人の会話は途切れない。

水平線の向こう側まで続くかのように。


第5話に続く。





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