第5話 喜一郎とミサキの時
…なんだか最近リアルな夢見るな。
〜喜一郎の時〜
そんな事考えながらも、寝るのが楽しくなってきたのだ。
仕事中もターミナルビルの窓ばかり見て。
昼すぎくらいから今日は少し忙しい。
バタバタしてるうちにいつの間にか仕事終わりの時間に。
なんか今日は疲れて電車に揺られる時間も短く感じた。
いつもより少し遅い帰り道は、下校途中の学生よりも会社帰りの人々の方が多い。
人の流れもいつもより早い。
駅を降りて歩いていても、いつもと違う時間の流れを感じる。
まわりのみんなが早くみえる。
部屋の鍵を開ける頃には陽は沈みかけ、辺りはそろそろ夜の顔になりかけていた。
ガチャ
帰ってきた自分の空間。
いつもながらに落ちつく。
さっさとシャワーを浴びて少し横になる。
疲れたので少しだけと思いつつ、スーッと吸い込まれるように眠りに。
…眩しい!
これは!?
夢の中?
喜一郎「閉めても大丈夫ですか?」
飛行機の中。
あんなに楽しみだったが、まさか本当にこの夢をみるとは。
だが、やっぱり楽しい。
話もはずむ。
ミサキ「歳聞いてもいいですか?」
…何歳なんだろう?ミサキさん。
喜一郎「26歳です。」
ミサキ「わたしより1つ上ですね。」
…えっ?下だったのかー。
大人っぽいなぁ。
この時間がずっと続けばいいのにな。
ホント色々似てるな。
好きな食べ物まで一緒かぁ。
〜ミサキの時〜
ミサキ「絶対食べさせてくださいね。」
喜一郎「はい。」
ミサキ「わたし餃子の食べ歩きも好きで結構いろんなお店行ってるの。それで家で真似て作って。」
喜一郎「じゃあいろんなおいしい餃子知ってるんだ。」
ミサキ「でも、自分で作るのが一番好きかも。自分の好みの味にできるから。」
喜一郎「僕もそうやってたどり着いたのが自分の餃子って感じかな。」
ミサキ「そんなとこまで一緒ですね。」
喜一郎「ホントですね。」
ミサキ「もうすぐ空港着きますね。」
喜一郎「見慣れた景色になってきた。」
ミサキ「楽しくて時間忘れちゃった。」
喜一郎「僕もですよ。」
ミサキ「そろそろお別れですね。」
喜一郎「そうですね。」
ミサキ「連絡先…」
ミサキ「やっぱりやめます。きっと空港で会えると思うし、こんなに気があった人なかなかいないし、だから聞かない事にします。」
喜一郎「まあ、僕は空港にいつもいますしね。」
ミサキ「次も偶然会えるといいな。なかなか会えなかったら、喜一郎さんの働いてるとこまで行きます。」
ミサキ「そんな感じで、またって事で。」
喜一郎「楽しみにしてます。」
喜一郎「あっ、これあげます。」
ミサキ「えっ、いいの?これ限定のキーホルダーでしょ?」
喜一郎「さすが知ってますね。これ間違えて2つ買っちゃって。家におなじのあるんですよ。使ってて少し汚れてるかもだけど。」
ミサキ「やった!ありがとうございます!」
ミサキ「お揃い!」
喜一郎「まぁ、そうなりますね。」
ミサキ「大事にします。」
搭乗口で
ミサキ「ではまた!」
喜一郎「またっ!」
それはまるで友達とバイバイするみたいに。2人はそれぞれ歩きだした。
喜一郎は電車の時間までベンチでゆっくりする事に。
座りながら楽しい時間を思い出していた。
目を閉じて1つ1つゆっくりと。
あれっ?
目を閉じてたせいか、眠くなってそのままうとうと…
〜喜一郎の時〜
はっ!?
あ〜。
目を開けた喜一郎からはため息。
そうここは飛行機…
の模型に囲まれた見慣れた部屋。
…こっちがかー。
喜一郎は現実を受け入れたのだ。
ふ〜。
またため息。
こうして喜一郎の長い夢は目覚めと同時に消えていったのだ。
〜空港の時〜
なにも変わらない日々。
毎日仕事と家の往復で特にやる事もない。
ただ、部屋にいる時は少し楽しい。
あの夢をみてから1週間が経とうとしていた。
小雨がまだ止まない少し肌寒い朝。
出勤途中の電車の窓からは朝日が雲の隙間から少しだけ見える。
雨は止み雲の隙間も大きく、朝日もだんだん顔をだしてくる。
あっ!?
虹もでてきた。
この感じが一番好きなのだ。
飛行機だったらもっとよかったのに。
そう。そんな事夢で言っていたのを思い出す。
ただ、今はこの景色を眺めているだけだ。
大好きなこの景色を。
空港に着くなり同僚とバッタリ。
喜一郎「あれっ?今日休みじゃあ?」
同僚「間違えて来ちまった。」
喜一郎「え〜?家ってたしか、かなり遠いんでしたよね。」
同僚「ああ、俺車通勤だけど家から2時間半かかるんだ。」
喜一郎「大変ですね。」
同僚「なぁ、頼みがあるんだけど…」
喜一郎「僕は構いませんよ。そんなに遠くないし。休み交代しますよ。」
同僚「いいの?」
喜一郎「いいですよ。休み予定ないし。」
同僚「助かるわ。今度昼飯おごるわ。」
喜一郎「はい。楽しみにしてます。」
同僚「サンキュー。じゃあ、行くわ。」
喜一郎「じゃあ帰ります。お疲れ様です。」
同僚「お疲れ様〜。」
突然の休日。
といっても、明日の休みが今日になっただけの事。
ただ、休みの朝から仕事でもないのに空港に来ている。
せっかくなのでコーヒーでも飲んで帰ることにする。
飛行機が見えるところにあるカフェの喜一郎が一番好きな席。
窓際の一番右端。
今日は早いから誰も座ってない。
コーヒーを飲みながら休日の朝を満喫する。
この時間も結構好きなのだ。
窓の外の飛行機を眺めながらゆっくりと朝の時間を過ごすのだった。
第6話に続く。
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