玖話 それはあたかも夢のようで
──そして刻は現実に巻き戻る。
自らが掘った落とし穴にまんまと嵌ってしまった愚かな三人の書生達──妖怪だったバケモノ達は、奇声を発しながら署長に飛びかかってきた。
「邪魔をするナ邪魔ヲするナ!!!」
「『神の子』…『神の子』を……!!!!」
それらを冷やかに一瞥したあと、署長は腰をぐっと低くする。
そして──飛び込んだ。
「煩いな。」
まず飛び出した際の勢いを殺すことなく右手を勢いよく突き出して、書生壱だったバケモノの脳天を貫いた。
そして突き刺した右手を軸にして足を浮かし回転、その勢いを利用して、横を通り抜けようとしていた書生弐だったバケモノの腹を思い切り蹴っ飛ばす。
勢いよく吹っ飛んで、そのまま壁に深深とめり込む。その胸には、瓦礫が突き刺さっていた。
そして着地した後書生壱だったバケモノを書生参だったバケモノめがけて勢いよく、振り下ろす。
ドゴン、という爆音とともに床は大きく凹み、二人のバケモノの体は瓦礫とともに深深と埋もれていた。
そしてすっと、脳天から手を抜いて、振り返る。
「怪我はないな?」
その手にはバケモノの血がベッタリとまとわりついていて、真っ赤に、そして艶やかに濡れていた。
瓦礫の下に埋もれていたバケモノ達の死体は、すうっと、まるで蜃気楼のように、夢であったかのように、消えていった。
その様子を見て、私は確信した。
終わったな、と。
だから、
「お疲れ様でした。」
と署長に声をかけ、私はにっこり微笑んだ。
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