第24話 リーアの怒り
「グルルルァアァァァァァァァァァ!!!」
「キュェエエエエエエエ!!」
「ギェァアァァァァァァァァァァァァ!!」
など、様々な魔獣の声があちこちから聞こえてきています。
それに併せるように、ドガン! だの、バキン! だのと街が破壊される音も聞こえてきています。魔獣が暴れているのでしょう。
どこからこれほどの数の魔獣が街中に現れたのかは気にはなりますが、まず倒すべきは私のケーキを台無しにしてくれた魔獣です。
簡易店舗をぶっ壊してくれたのは、以前リューレイさんについていったときに戦ったことがある魔獣――たしか、『アサルトラプトル』とか言いましたっけ?
以前のものよりも一回りは大きいですね。
「グルルァ!」
私達が近寄っていくと、アサルトラプトルは短く吼えて威嚇してきます。
そうですね、アナタのような魔獣が吼えれば大抵の人は萎縮するのでしょうね。
ですが、ここにいるのは怒り全開な私とシロちゃんとクロちゃんです。その程度、なんとも思いません。
「やっちゃってください! あ、でも私にも一発入れさせてくださいね」
「かしこまりー」
「つっこめー」
私の指示を聞いたシロちゃんとクロちゃんが、先行してアサルトラプトル目掛け突撃していきます。
「グルァアアア!!」
すると、アサルトラプトルは口から波動を飛ばしながら、シロちゃんとクロちゃんへ対抗するように突っ込んできました。
以前戦った個体とは違って、シロちゃんとクロちゃんをあまり警戒していないんですかね? と思ったのですが、どうやら興奮状態のようですね。
目が血走っているように見受けられます。
魔獣の瞳なんて禄に見たことがないので、この前の個体と比べてなんとなくですけど。
「かーぶ」
以前、みたく半透明の壁を出現させたシロちゃんが、アサルトラプトルの放った波動を空へ飛ばします。
ですが、アサルトラプトルは止まりません。
そのまま、突っ込んできます。
「させぬです」
そう言った直後クロちゃんがアサルトラプトルと真正面からぶつかりました。
普通なら質量差でクロちゃんが吹き飛ばされてもおかしくないのですが、吹き飛んだのはアサルトラプトルの方です。
「グルルァ!?」
ですが、ただの体当たりでは効果は薄いようで、アサルトラプトルはすぐさま体勢を立て直して、尻尾でクロちゃんを狙います。
「ぐれーとほーん」
それを予想していたかのようにクロちゃんの角が光り輝き、アサルトラプトルの尻尾とぶつかります。
アサルトラプトルは自分の尻尾の威力にそうとう自信があったようなのですが、私に言わせてもらえるならばそれは無茶というものでしょう。
「グルルルアァ!?!?」
案の定、引きちぎれるかのようにアサルトラプトルの尻尾が吹き飛びます。
とはいえ、尻尾を失っただけでは戦いを止める気は無いようですね。
痛みをこらえつつ、強靱な歯で噛みついてこようとしているみたいです。
「今度はこっちです。ぐらびてぃふぉーる」
シロちゃんの元に大量の魔力が集まったかと思うと、次の瞬間にはアサルトラプトルが地面に倒れ伏していました。
アサルトラプトルは立ち上がろうともがくいているようですが、よっぽど強い力で押さえつけられているのかびくともしません。
次第に抵抗する気力もなくなったのか、もがくことすら止めてしまいました。
あれは空間そのものに作用する魔法ですかね。
少なくとも、上から下へ強力な力が働いているのは私にも分かりました。
「しゅーりょー、どうぞです」
どうやら、私のために一撃入れる隙を作ってくれたみたいですね。
感謝しつつ近づこうとするのですが、シロちゃんの魔法が終わった途端、アサルトラプトルは立ち上がろうとしていました。
抵抗しなくなったのは体力を温存する目的だったようです。
これはさっさと攻撃しないとマズいでしょうか、と思ったのですが、クロちゃんが立ち上がろうとするアサルトラプトルの頭をペシッとはたいて、再び地面に沈めます。
さらに、その上に乗って身動きをとれなくしていました。
「グルァ!! グルァアァァァ!!」
必死に脱出をはかっているようですが、クロちゃんがしっかりと押さえつけています。
見た目上のギャップが凄いですね。
「やっちゃうです」
「ありがとうございます」
シロちゃんとクロちゃんにお礼を言いつつ、リュックからこの状況にふさわしい道具を取り出します。
私が取りだしたのは小さな筒。前に出した空気の塊を発射するのと似ていますが、全くの別物です。
こちらは片手で持てるほどですし、何よりも対魔獣用に作られただけあって威力が桁違いです。発射するのも魔力を直接変換して指向性と威力を持たせた魔力弾ですからね。
発射口をアサルトラプトルの頭部へと向け、
「では、さようなら」
恨みを込めて魔力弾を放ちました。
「グル……ルァ……」
生物の重要な器官である頭部を撃ち抜かれたアサルトラプトルは、そのまま力なく横たわります。
「ふん、とりあえずケーキの仇は討てましたかね?」
事切れたアサルトラプトルから目を離し、周囲の様子を伺います。
ですが、私の気分は全然晴れません。
なぜなら、ケーキを食べ損ねた直接的な原因はコイツですが、この状況を生み出した存在がどこかに居るはずだからです。
魔獣が街の外から侵入してくる可能性はゼロではありませんが、いきなり街中に出現するというのはあり得ないことです。
つまり、何者かの仕業ということにほかなりません。
絶対、そいつにケーキの代償を払わせてやります。
固く心に誓った私はひとまず街で暴れる他の魔獣を退治していくことにしたのでした。
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