第14話 セブンと魔王の格差。
「でも、セブン様に変な噂が流れてまして」
様付けになったよ。一応主人は僕だからね。そこのところ忘れないでほしいな。
「なんだ? その噂とやらは?」
「はっきりはわかりませんが、セブン様が勇者だとか? はたまた勇者と冒険に出ているとか。今回のスライムの消滅はセブン様がおやりになったとは思いませんが、なにせ、イケメソですし、イケメソはそんな野蛮なことは致しません」
......イケメソっていいな。
「仮にセブン様だとしたら......私、惚れ直します」
......イケメソっていいな。
「そのセブンというものがが勇者の可能性があるのか?」
「仮に勇者であろうとなかろうと私は親衛隊長は死んでも止めませんけどね」
鬼人よ。なんというか熱量の差を感じる。
それにしてもイケメソだ。これで勇者だとするなら、ずるい、ずるすぎる!
僕の持っていないものを全部持っている。不公平だ! 不公平だ!
僕の周りに怒りの黒炎が漂っていた。
ちょっとだけ怒っちゃっている僕に鬼人はこう言ったんだ。
「魔王様もご一緒にどうですか?」
「ほほう。倒しに行くんだな?」
「いえ、ファンクラブに入会ですよ。今なら入会金無料ですし、それにお友達を紹介すれば、私に限定プロマイドが......」
えっと......今まですっごく優秀な部下だと思っていたのに、あいつ(セブン)の話になると乙女だよね?
そしてセブンのファンクラブの運営委員は魔物なの? 人間が魔物を虜にするとか魔王的にNGなんですけど。
僕はどんどんセブンへの怒りが湧いてきた。
「おい、鬼人よ」
「はい」
「セブンとやらを連れてこい」
僕はセブンを倒し、そして連れてこいと言ったつもりだったのだが鬼人は違った。
「えっ? 結婚のご挨拶に連れてこいですって!! まだお付き合いだってしていないのに。ちょっと気が早すぎませんか? でも魔王がそう言うなら」
気が早いのは鬼人の方だよ。しかもちょっと呼び捨てされた。
「魔王の許可が出たら、ウエディングロードまで連れて行ってくださいね」
僕が父親役! これだからイケメソは嫌なんだ。羨ましいんだ。知らないところで妄想されて、そしてドキドキさせる。僕だってそういう経験がしたいのに神様! どうしてくれるんだ!
「ねえ魔王」
「なんだ?」
なんかタメ口になったよ。
「娘はやらん。なんて言わないでくださいよ」
鬼人はとびきりの笑顔でウインクをしてきた。......その返答にものすごく困った。一度も手さえ繋いだことのない僕が父親になっている。頼むから順序だけは踏ませて欲しい。
「わかりました。魔王軍、全戦力を使って、セブン様を魔王の城へお迎えいたします」
「頼んだ」
鬼人は笑顔でルンルン気分で去っていった。僕も頼んだじゃないよね? 明らかに僕、相手にされなくなるじゃん。どうしよう。
「おのれ! セブンめ!」
僕のセブンへの憎しみは徐々に膨れ上がっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます