第10話 仲間をバカにしてもいいのは仲間だけ
遊者(ライト)達は号泣していた。何故だ? どういう感情でそこに至ったのだ。
「なんかよかったな」
「本当でごわす」
「おめでとう!」
モンスター語は分からないにしろ、感動は生き物共通なのかもしれない。
その原因が俺がやれていることは忘れているだろうが。
スライム側の盛り上がりも収まってきたところで完全に調子に乗ったスライムCがこんなことを言いだした。
「ピムピム(あとは俺に任せてください。俺があいつらを全員倒します。今の俺なら出来る!)」
スライムたちは盛り上がってしている。
スライムCが遊者(ライト)達に目線を向けた。
遊者達も察知したのだろう。戦う構えをするのだが......ライト! 背中に掲げている剣をどうして抜かない?
レイラ、杖をどうして地面に置いて、ファイティングポーズを取る? カルバン......そうか武器がないのか? すまん、この展開を措定しておけばよかったな。
テンションマックスのスライムCとそれを応援するスライム達。
すごい光景だ。どっちが敵か分からなくなっている。
スライムCは遊者(ライト)に勢いよく体当たりした。
【ライトは0のダメージを受けた】
序盤でこれだけの装備をしていれば、もはや何匹スライムが来たところで問題はないだろうと思いきや、スライムCの体当たりでバランスを崩した遊者(ライト)は木の枝に足を取られ、倒れてしまう。
倒れた所に小さな石の出っ張りがあり、うなじの部分にその石が当たる。
【ライトは2のダメージを受けた】
不注意! おい、偶然とはいえそんなダメージのくらい方があるか?
ドジだ、完全ドジだ。
そしてスライム達は盛り上がっている。ドヤ顔をして立ち位置に戻っていくスライムC。
いや、お前じゃないからね。あれは遊者の不注意だから。どんだけ調子付かせれば気がすむんだ遊者様よ。
「ライト! 私の魔法で助けてあげる!」
そうだ! レイラの回復魔法が見れるのか! ありがとうスレイムC。次会った時はお礼に絶望をプレゼントするがな。
「バンドケア!」
レイラは道具から絆創膏を取り出し、遊者の怪我をした部分に綺麗に素早く的確に貼る。
「これでもう大丈夫よ」
「ありがとう。助かったぜ」
......終わり? えっ? 回復してないし、ただ絆創膏を貼っただけだよね?
そんな魔法ある? 体力だって回復したわけでもない魔法。魔力は......減っていない。ということは魔力消費が0で使えるのか! だが、戦闘で意味がない!
というか冒険に無意味だ!
むしろ魔法の部類にするなよ!
スライム達は笑っている。
舐められているぞ。ここで一発引き締めろよ。
「ここはおいどんの出番でごわすね」
カルバンは遊者(ライト)の前に立つ。
カルバン! 遊者の盾になるということだな。そう! それでこそ戦士、勇敢だ。あとで神に怒っておこう【?】を消せと。
「ここは逃げるが一番でごわす!」
逃げるのか!! しかも素早い! ......もしかして素早さとは逃げる速さのことか? いや、闘えよ! 魔法といい戦士といい。何なんだよ!
【だが、333匹のスライムに回り込まれた】
それはそうだ! この数で逃げようと思うこと自体間違っている。状況を読んで行動をしろ。
遊者(ライト)は立ち上がり、スライムCに向かって構える。
「さすがに舐められてばかりじゃ遊者が廃るってもんだぜ」
そうだ! よく言った! 煌めきの剣を抜いて反撃だ。レイラには回復薬を使ってもらい、カルバンは......頑張れ!
「うおおおおおおお」
遊者は剣を抜かずに走っていく。
剣! 剣を使え! なぜ立派な剣を......抜かない!
そして体当たり! お前の知能はスライムと一緒か!
【スライムAは1のダメージを受けた】
剣を使えば、一撃だっただろうに。あとで聞こう剣を抜かない理由。どうせくだらない理由だと思うが。
遊者は勢い余って、出っ張った石に頭をぶつけた。
【ライトは1のダメージを食らった。ライトは体力が0となった】
ライトォォォォォォォォォ!!!!! 自滅! 自滅! 嘘だろ? えっ?
うわ! 棺桶に入ってるよ。それを見たスライムCはドヤ顔してる。
いやお前何もやってねえだろ。そしてCのドヤ顔で盛り上がるな! おいおい、どんな戦闘なんだよ。劣勢になってはきたが、レイラの防具がしっかりしているので、なんとか倒せると思うが......レイラ? レイラ?
【レイラはライトが棺桶に入り精神的ショックで体力が0になった】
レイラーーーーーーー!! 気持ちは分かる最愛の旦那が目の前でやられたんだもんな(不注意で)。だから伴侶は連れてこないほうがいいんだよ。何が起こるかわからないから。にしても予想外すぎる展開だ。スライム3匹と1000匹対旅人の服一枚のカルバン。勝てる確率が100から0になった。
カルバンは何度も逃げようとするが、スライムに回り込まれる。
カルバンよ。絶望的な状況になってはしまったが、戦うという選択肢はないのか?
スライムC「ピピピ(かかれ! 我々の勝利は目前だ!)
スライムCの掛け声に1000匹のスライムは一斉にカルバンに向かっていく。
カルバンは防御をするが、装備と総攻撃によって体力がゼロになった。
スライムCは誇らしくカルバンの上に乗った。
スライムC「ピッピピ(勇者たちも大したことないな。こんな雑魚なら、一生アリナイハンから出るなって話だよな。まあ出てきたら、また俺が雑魚どもを倒してやるけどな)」
スライム達は笑っている。
スライムA「ピビー(最弱の勇者誕生だな)」
スライムB「ピピル(ああ、もっと手応えがあると思ってたが、雑魚でよかった)」
......スライム達がなんであろう遊者を侮辱していること、あたかも自分が倒したかのように調子に乗っていることに怒りが頂点に達した。
棺桶の蓋を吹っ飛ばし、俺は立ち上がりスライム達を睨みつる。
スライムは驚いている。
「ビビビ(てめえら、あんまり調子に乗るんじゃねえぞ。遊者をけなしたり、バカに出来るのはなぁ仲間であり、最強(勇者)である俺だけなんだよ!)」
俺は両手に火を出した。
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