第9話 わざと倒れてやったのにスライムが調子に乗りました。怒
さすがに怒りを覚えた。いや、遊者と会ってから怒りの感情がほぼ大半を占めてはいるが、冒険者としてあるまじき発言。
遊者達は城下町に入れないことに動揺をしてオロオロしている。
これは強制的にでも次の村に進ませないといけないぞ。
さあどうする遊者よ。
ただ嫌味の一つでも言わせてくれ。
「遊者様、生きていれば安全な場所なんてないんですよ」
その場をウロウロしている遊者。
すると遊者の前に三匹のスライムが現れた。
ほほう、いいタイミングだ。しかも手頃な数。
「くそ! いきなりボス戦かよ」
「おいどんは心の準備が!」
「大丈夫よ。私たちは色んなものを積み重ねてここにいるの」
......えっと。何? 俺と出会う数時間前に何を重ねてきたというのだ? 何もないよね? あったら申し訳ないが。
カルバン、心の準備は戦士になった時にしておくもんだ。それにライト、ボスとは? この戦闘、どう見たってこちらの勝ちだ。装備も整っている(カルバン以外)、何せレベル10がいる。
ここは一度様子を見て、戦闘のセンスを確認したいと思う......何だ? スライム達が俺を見て怯えている? あいつらからしたら先祖代々より【悪魔】として言い伝えられているのはスライム同士の会話を聞いて知っている。このスキルは【魔物使い】の時に【モンスター語】を覚えたので理解ができるのだ。
「ピニー、ピニー?」
「ピニ! ピニ!」
「ピーピー」
「ピニッピニ!!」
「ピ!」
スライム同士で会話をしている。スライム達はこう言っているのだ。
スライムA「ピニー、ピニー?(おい! あれは悪魔だよな?)」
スライムB「ピニ! ピニ!(遂に俺たちも出くわしてしまったか)
スライムC「ピーピー(逃げよう。あいつにあったら逃げろってスライムの長から言わてただろ?)」
スライムA「ピニッピニ!!(でも誰かがやらなきゃ。逃げちゃダメだ。俺があ
いつを倒す!)」
スライムC「ピ!(そんなことで命を落とすなんて馬鹿げている! 君には大切な彼女がいるじゃないか。それなのに自らの正義のために彼女まで泣かせる気かよ! 間違っている。そんなの間違っている。俺はお前の彼女を泣かせることなど絶対に許さない。だってお前は俺に勝って、あいつを振り向かせたんだから。その責任は取ってもらう。お前がやるというなら......俺がやる。俺が死んでも誰も悲しむスライムはいない。わかったな? 絶対に手を出すなよ。俺は天国でお前とあいつの幸せな姿を祝福してやるよ)」
......やはり未だ悪魔と言われているのか モンスター目線で見たらそうなるし、倒しすぎた。
それにしてもモンスター語はいいな。【ピ】だけであの長台詞が完結するんだから。
どちらにしろだ。100%勝てる勝負に俺が手を下す必要もないだろう。
するとスライムCが俺に向かって体当たりをしてきた。普段なら簡単に避けられるのだが、今回はぶつかってやろう。
【セブンは0のダメージを受けた】
スライムCよ、申し訳ない。死亡フラグということになってしまったな。
スライムが仲間を殺されその怒りでスーパースライムとして覚醒することはないと思うが。まあさすがにスライムを狩りすぎて申し訳ない気持ちも多少はある。ここはやられた振りをして、遊者様に助けていただくとするか。
「うわああああ、やられた」
俺は【スーパースター】の職に就いた時の演技力を駆使し、アイテムから自分用の棺桶を取り出し、自然の流れで棺桶に入った。
この棺桶は手作りなのである。道具屋と武器屋だった時のスキルを使って、棺桶の下に4つのタイヤを付けたことで引きずられる心配なく、連れて行ってもらえる。更に運ぶ際に楽になるように棺桶も強度は高いまま軽量化に成功。そして、火の魔法か風の魔法を使えば自動で動くようになっている。死んでも負担にならないように考慮して作った傑作品だ。(追跡機能も付属している)
よし、棺桶に作った出窓から遊者たちの様子を見るとするか。
「うおおお、セブンがやられたでごわす」
「やはり俺の目に狂いはなかった。スライムがボスだったんだな」
「でも大丈夫、私たちには積み重ねてきたものが」
3人は戸惑っている。
おいおい、普通にやれよ、普通にやれば勝てるんだから。
一番驚いているのはスライムたちみたいだ。スライムたちは顔を見合わせて話をしている。
スライムC「ピニ? (あれ? 俺悪魔を倒した?)」
スライムA「ピニッピー (あんなにあっさりと、でもとうとう悪魔を倒したんだ)」
スライムB「ピッピ(おいみんな! 嘘だろ......あいつ(スライムC)やっやりやがった!)」
すると草むらや木の陰やら続々とスライムたちが寄ってきて
「本当に悪魔が死んだの?」
「いつか、お前はやるやつだと信じていた」
などなど、スライムCを賞賛している光景となった。
そして数分もしないうちにスライムCの周りにはスライムが1000匹ほど集まっていた。それは今までにない緊急レベルだ。それだけ俺が倒れるということはアリナイハンに生息するスライムたちには重大なことだったらしい。
まだ冒険を始めたばかりの遊者(ライト)達には怖い思いをさせてしまったのかもしれない、申し訳なく思いライト達を見ると......
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