第6話 お告げを聞いてレベルが上がった。
家を出てここまで大した時間は経っていないはずだが、怒りと絶望が入り混じってこの感情をずっと抑えておくには俺の体には少し小さかった。
「風切(ウインドブレイク)」
俺が風の中級魔法を唱えると、教会の屋根が横から切れ目が入るように風の刃が通過していった。
俺は神の銅像に睨みを利かせ。心の中で
(おい神よ。聞こえているのなら、どうにかしろよ。このままではまともに冒険が出来ない。レイラのレベルを上げれるようにしないと.....神様(てめえ)の銅像を粉々に粉砕するぞ。それも全教会だ)
すると、神官は神からのお告げが降りてきたのだろう。
「おおお! レイラよ。先ほどのは嘘じゃ。安心せえ」
レベルアップの音が教会内に響いた。
【レイラのレベルは10になった】
......神よ。何をしてくれている? お告げを聞いてレベルが上がるなど、そんな世界があってたまるか! だがこれ以上言うと、また変なことをされても困る。
レベルが上がることがわかったことだし。今日のところは許してやるとするか。
「すげえ! いいな。レベルが上がるなんて」
「すごいでごわす」
「まあ、私、小さいころ、お母さんのお手伝いを毎日してたから。それでよ」
3人は楽しそうに会話をしている。お母さんのお手伝いをしてレベルが上がるなら、その村か街は最強の住人達になるだろうな。俺がこの日のために1日約800匹ほどのスライムを倒し続けてきた。それが一瞬にしてレベル10にするとは.....俺の努力を嘲笑ってやがるのか?
まあ、強くなることはありがたいことではあるので【好意】として受け止めておく。
......次は俺の番だな。レベル99になるにはどれだけの経験値が必要なのか気になるな。
神官は神が乗り移っているせいか、少し震えている。
「つっぎっに、セブン」
本来なら99までレベルを上げておいてもよかったのだが、やはり冒険をしていく中でレベルが上がって、みんなで喜び合うというエピソードも大事になってくるからな。
「あの......その......許してください」
神官はそういうと、両手をすぐに下ろし、いつもの姿に戻った。
「なんだよそれ! おい! あとどれぐらいでレベルが上がるか教えろよ!」
「申し訳ありません。どういうわけか神とのやり取りが遮断されてしまい、私ではどうしようも出来ないようです」
......神様(あいつ)、逃げたな。俺がこっちの世界にいることをいいことにコンタクトを取るのを拒みやがったな。
俺は神への怒りをあらわにしていると、遊者(ライト)はポンと俺の肩を叩いた。
「焦ることはない。ゆっくり強くなっていこうじゃないか」
......はあああああ!!!!
「そうでごわす。おいどん達は選ばれし冒険者でごわす」
「そうよ。世界は私たちが守る!」
言っていることは立派! だが説得力がない。頼む焦ってくれ、序盤だが緊張感を持ってくれ。分かるか? 俺の頭のフル回転さを。安らぎが欲しい。
考えすぎは勇者として成り立たないということなのか? ああ俺の勇者像が.......。
切り目の入った屋根はグラグラして不安定さを増している。
心配した様子で屋根を見ている神官に俺はこう言ったんだ。
「神官様、屋根が不安定のようですね。先ほどの風(おれ)のせいですね。不安でしたら王様にこう伝えてください。セブンが教会の屋根を直せと言っていましたと。さもなくば....それで伝わると思います」
神官は不思議そうな顔をしていた。だがそれでいい、それが一番いい。
遊者(ライト)たちと俺は、不思議そうにしている神官を残し教会から出た。
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