第9話 ドリーム・トラベル
公園を出て大きな道路を横断し、オフィス街のを抜けて少し歩くと、一階が店舗になったビルがあった。
そこにはアンティーク調のクラシカルなケーキ屋があった。
紗百合はここのケーキ屋さんがとても好きだった。
ここのお店の焼き菓子系はおいしく、特にチーズケーキは絶品で、一度食べたら病みつきになってしまうほどだ。
他にも、タルトやパイはもちろん、シュークリームなども美味しい。
パイ生地や皮などがパリサクで、この食感は他のお店では味わえない。
さっそくお店に入り席に着くと、紗百合は紅茶とチーズケーキを頼んだ。
このひとときが好きだ。特に何かをするわけでもなく、誰かを待っているわけでもなく、ただぼーっとして、おいしいスイーツを食べるのは、至福のひと時だ。
紅茶がとても香る。とても夢とは思えないクオリティだ。
やってきたチーズケーキを手で掴み、口に運ぶ。
サクッと軽い歯ごたえと、しっとりクリームのハーモニーは、甘みと酸味とバランスがよく、これぞマイ・ベストスイーツと思えた。
我ながら、ここのチーズケーキに絶賛してしまう。
これは本当に夢なのか?
何だか現実よりおいしい気がする。
頭だけ覚醒しているから、余分な感覚が邪魔しないのかもしれない分、味覚の感度が上がっているのかもしれない。
噛んだ感触、次に来る柔らかさ、口に広がる香ばしさとクリーミーな感触、鼻腔をぬける淡い柑橘系の香り。
一口かじっただけで、大量に入力される情報は、美味しいの一言で片付けてしまうにはもったいない。
噛めばパイ生地の甘みと、チーズクリームの甘みが融合し、そこにサクサク感とホイップ感も合流し、心踊る甘味を口の中で奏でる。
金の縁取りが入った、白いティーカップを手に取り、黄金色の透き通った、熱い紅茶を口元に運ぶ。
熱気と紅茶の気化した香りが肌をなぞる。
飲む前から、味は格別だと想像できる。
一口含む。
程よい熱さが唇を伝い、熱さとともに芳醇な香りと、独特の旨味とほのかな渋みが口いっぱいに広がり、鼻を通り抜け頭の芯まで透き通るようだった。
現実世界でも確かにおいしいが、夢の世界では、さらにおいしく感じられた。
精神世界みたいなところだからなのかもしれないが、それこそ、ここのお店の店主の記憶が、この空間を支配しているのだから、その味覚、食感などが、さらにリアルに再現されているのかもしれない。
店主は実在する。だから、ここの夢の世界でもこうやって紅茶を入れてくれる。
本人の記憶が、この夢の世界でも反映されているわけだ。
あれ? まてよ。何だかつじつまが合わない。
これは私の夢の世界であり、他人の夢の一部でもある。だったら、目の前にいる店長は、現実ではいま寝ているわけ? 起きているなら夢は見ていない。
そもそも寝ていても、夢は常に見ているわけではないのだ。
だったら見の前にいる店主は、私の夢にいる店主で、本人ではない。
当然かもしれないが、それだとうまく説明ができない。
カラン、鉄の鐘が鳴り扉が開いた。お客さんのようだ。
ふと振り向くと、見たことあるような人が入って来た。
どこかで会ったことのあるような、ないような。夢の世界だから、記憶も拡張しているのかもしれない。
それにしても、全身黒ずくめのライダースーツに、黒髪の長髪を後ろで束ね、凛とした雰囲気は、何だか定番だが、まさに謎の美少女だ。
紗百合は、頭の中がクリアになってく感覚を覚えた。
心の中で、この女性の事をもっと知りたいという願望が働いた。
自分でもどうしてなのかは、分からなかったが、自分はこの女性に好感を持っているのは確かだった。
その真っ黒な衣装の女性は、紗百合の席の向かい側に座った。
真正面に座られ、目があってしまい、ドキドキが止まらない。
「ど、どうも。どこかでお会いしましたっけ?」
いきなりの事で驚き、反面、話すことができて嬉しかった。
「意外と冷たい奴だったんだな、お前って。もう忘れたのか。5時間前にあっているだろう……」
5時間前といえば、夕方だろうか……
と、言うことは目の前にいるのは、もしかして、京香ちゃんか。
日が暮れて薄暗かったとはいえ、全然雰囲気が違う。
いつもより大人びており、とても同世代には見えなかった。
本来の、陰険で冷酷なお嬢様のイメージが強いせいもあり、それが、本人に言われるまで、目の前の人物が誰だか全然わからなかった。
女は化けるとはよくいったものだ。
私も女だが、こんなにも清楚からワイルドには、さすがになれないぞ。
というか、この無節操なまでの変わりようは異常である。
ここは夢の世界。よほど現実逃避した現れなのか。
ここでは心が解放され、本来の自分が出てくるようである。
「あの、橘さん、ですよね。全然雰囲気が違いましたから、別人だと思いました」
「その名で呼ぶな…… そんなに違うか? どちらかといったら、こっちが本来の私なんだと思うぞ。あっちは肩書きが乗っかっているから、すごく肩がこるし疲れるんだ。だから、誰も見ていないところでは、このスタイルでいたいね」
「何だか、アクション女優さんみたいです。何とかレイダーのララとか、マト何とかのトリニティーみたいな、そんな感じですよね」
「紗百合、急にかしこまってどうした? もう仲間なんだから、そんな気を使わなくたっていいぞ」
「ぁ、ぃぇ。京花……ちゃんが、素敵な方だからつい敬語になっちゃうの。でも、別にいいでしょ? 今の京花さん…… ちゃんは年上のお姉さんにしか見えないし、ためくちで話したら、なんだかいけない気がして……」
「フッ、可愛いな、紗百合。硬いのは抜きだ。今度やりにくいからな。それとも、私が紗百合のハートを撃ち抜けばいいのか? そうしたらもっと気が楽になるか?」
京香は手で銃をかたどると、バンッと撃つ振りをした。
紗百合は、胸に風が吹き抜けた気がした。
夏の暑い日差しの中で、たまに吹く冷たい心地の良い風のように、紗百合の心を涼やかに撫でた。
不思議な感じだった。
この世界に自分と、目の前にいる京花だけが、存在している感覚に陥った。
京花以外のものが目に入らなかった。
紗百合には京香しか見えなくなっていた。
紗百合の異変に気がついた京花は、紗百合に声を掛けた。
「紗百合? どうした? そんなに私をまじまじ見て、何かついているのか?」
京花の声で、紗百合は我に戻った。そして、胸の鼓動が高鳴っていることに気付いた。
ぇ? どうして? そんなはず、ないのに……
「ぁ、ぃぇ…… な、なんでもないです」
「ほら、だから、かしこまるなって。気楽にいこうぜ」
京花が紗百合の肩をバンバンと叩いた。
ビクッと身体を震わせ、ひぃッ、と思わず声を出した。
「なんだよ、なに驚いているんだ、それとも痛かったか?」
「ぁ、ぃえ…… 違います……」
「紗百合らしくないぞ、いつものようにボケろよ」
私って、こういう時って、いつもボケていたのかな……
それにしても、自分の心境の変化に驚いた。
認めたくはないが、どうやら京花に恋をしてしまったみたいだった……
自覚は無いのだか、身体はそういうわけにはいかないようで、鼓動がいつもと違うペースで弾む。
制御できない器官は、自分の意に反して本能のまま機能した。
私、紗百合だけど、「百合」ではないぞ。しっかりしろ。
「紗百合、顔が赤いぞ。どうかしたか?」
「ぅうん。なななんでもないからっ」
「今日の紗百合はへんだぞ。それより、おまえがこの店の常連さんだったとは奇遇だな。もしかしたら、現実でも結構ニアミスしていたのかもしれないな」
「私は、帰りが通り道だったから、結構ここにはきやすいんだよね。それに、ここの紅茶とチーズケーキは、最高においしいしから。たまにくるんだよ」
「そうか、私はここのガトーショコラを一押するぞ。それと、ブレンドコーヒーをな」
「そうか、京花さん…… ちゃんはコーヒー派なんだ。私苦いのは苦手だから、ブラックとか飲めないんだ。ショコラは好きだよ」
「紅茶も好きだが、やっぱし私はコーヒーかな。あのコクと香りと苦味が心地いいんだ。相手が甘ければ、なおさらコーヒーがいいな」
「京花……ちゃんは見た目の通りの大人なんだね」
「お前が子供なだけなんだ。あ。店長、いつものセット」
「今日は別の学校の友達かい。君はたくさんの友達がいるのだね」
「そそ。あたらしい友達。と言うか、これから戦友になる仲なんだ。今日はその作戦会議だな」
そう、今日は夢の中で会議なのだ。生きるか死ぬかの作戦会議だ。
基本、この夢世界は単独であり複数であり、複雑である。
人それぞれ単体の世界があり、それは全てこの世界につながっている。
個々の世界は独立しているが、その情報は夢世界が共有しており、夢世界の核となる場所には、全ての情報があるらしい。
通常の夢の世界は、そこに繋がっているとはいえ、全ての情報を任意に引き出せるわけではない。
誰でも、というわけにはいかないらしい。
その世界の核たる場所の住人達は、その権限を当然特定の者にしか認めていない。
それが、どのような者なのかは、誰も知らない。
夢世界とは、基本二つに分かれる。
自分の経験と記憶で見る単体で見るタイプに、世界と繋がり様々な情報を引き出して見るタイプ。
前者の夢は、本人単体で見ている夢だから、自分の知らないことは見ることができないし、できないことは、もちろんすることはできない。
自分の経験以上のことは基本できないのだ。
それに対して、後者の夢は、夢世界とつながっているため、さまざまな情報を引き出すことができる。
読んだ事のない本を読んだり、行ったことのない場所へ行ったりと、それこそ、現実と何の変わりないことができるのだ。
知らない知識、味、色、場所、経験。それらは、世界の核たる場所にすべての情報があるから、夢の世界で知ることができるのである。
とはいえ、誰もがすべての事を知ることはできない。
当然、機密情報には鍵がかかっているのだ。そのあたりは、しっかりと世界は管理している。
それこそ、神の見えざる手、というやつなのだろう。
夢を見る、というのは、自分の記憶や経験を、夢世界が共有するということなのだ。
人は皆、どこかで繋がっている。そして、夢世界と繋がっているのだ。
起きているときは、意識がはっきりしているから気付くことはない。
寝ているときは、意識がないから、やはり気付くことはない
人は、無意識で人との繋がりを認識している。
そのためか、争いが絶えない人類がいまだに滅びないのは、無意識に人に救いの手を差し伸べているからである。
人は単体では、個体では、生きていけない。
数多くの集団が無意識下で繋がって、やっと生きていける。
夢世界と人は、巨大なネットワークなんだ。
京香は、紗百合にそう伝えた。
さて、本題だが、そんな夢の世界には、夢の世界にしか存在しないものもある。
本来は、現実世界の写し鏡の夢の世界なのだから、向こうのものは、こっちにもあるということなのだが、こっちにしかない物もあったりする。
いくつかあるのだが、こちらの人の創りしもの。人では無き者が創りしもの。
そして、夢世界が創りしもの、などがある。
それらのものの中には、その存在だけで悪影響を与えるものや、人と接触して影響を及ぼすものも存在する。
その前に……
「まず、夢の中とはいえ、絶望を知った人達や、苦しんだ人達がいたことを知っておいてくれ。目が覚めて覚えてなくても、心には深い傷を負っている」
京花は、紗百合の気を引き締めさせた。
お菓子の攻撃は半分冗談のつもりだったのだろうが、当事者の者達にとっては、死を意識させる恐怖だったに違いない。
ここからは遊びではない、と言いたいのだ。
「は、反省します」
そ、そうか。そうだったんだ。夢の世界は自分の頭の中にあるんじゃないんだ。
だから、あんなにリアルな世界が夢として存在するんだ。
知らない人もいれば、知らない風景もある。
知らない本に知らない味。
私が知らないことでも、夢世界にはすべての情報がある。
そう言うわけだったのね。
「正確にいえば、個々の頭の中にも夢の世界は存在する。ただし、それは自分の記憶の中だけの世界で、自分の知らないことはできないし、理解することができない。簡単にいうとね、パソコンみたいな物だな。オンラインになれば、可能な限りはインターネットでいろいろなものが見られる。オフラインだったら、ストレージにある限られた情報しか見られない。そんなところだな。だから、夢の世界というのは壮大なネット空間みたいなものだ。だから、夢の中であった人物は存在し、記憶も残る。ただし、夢の中だから、覚醒していないと記憶には残りにくい。おまえみたいに覚醒した状態で夢を見られるなら、はっきりと記憶に残すことができるし、夢の中をコントロールすることもできる」
「へー。なんだか、本当にゲームの世界みたい。というより、仮想現実の世界なのかな」
「仮想ではなく、リアルの複製だろうな。理解してもらえたかな。そして、紗百合は罪を犯した、だから、罪を償わなくてはならない。今回は、あれだけのことをしても、死者が出なかったのが唯一の救いだな」
「そういうことなら、しょうがないわ。それで、私はどうなってしまうの?」
「おや、意外と冷静なんだな。普通、あれこれ言い訳して、駄々こねて、結局痛い目に合うのが定番なんだけど、まあ、いいや」
……それって、もしかして、京花ちゃんのことかな?
「私たちと一緒に奉仕活動をしてもらう」
「奉仕活動? ……道路のゴミ拾いでもやるのかな」
「……そうだな、掃除といえばそうなるな。でも、これだよ」
と言って、京花は手を銃の形にして、バンッと撃つマネをした。
「……暗殺? 私みたいな罪人を仕留めるの?」
「それもある。だけど、私たちの本来の獲物は「虫」さ」
「…… 虫? 人じゃないんだ」
「たまに、紗百合みたいな標的もいるけれど、管理者からの依頼がないと人は狩れないよ。そうではなければ、ただの人殺しだからね」
「まあ…… 確かに。でも、虫なんだ。ちょっとゾッとするけど」
「まあ、気持ちの持ちようだね。虫といっても総称だからね、本物の虫じゃないから安心して。あまりいい仕事ではないけど、それはしょうがないだろう」
「その、狩り? 駆除は、いつまでやらされるのかな。そもそも、どうしてそんな虫がいるの?」
「うん、そうだな…… 私もよく知らないんだ。実はな、この夢世界に来てまだ浅いんだ。とにかく虫退治。害虫駆除かな」
「とりあえず、わかったわ。で、私はどうすればいいのかな?」
「まあ、まずは装備を固めようか」
「そ、装備? ところで、京花ちゃんは夢の世界で何をやらかしたんです?」
「私か? そうだな。敵討ち…… かな」
「敵討ち? 人殺し…… ですか……」
「まあ、そう、ストレートにいうなよ。響きが悪いから」
「ふーん。それは、罪深きことをしたね。夢とはいえ、それは許されないわけだね」
「だから、今はこうして紗百合と行動を共にしているんだろ」
「あっちの京花ちゃんが言っていた、行動を共にするって、このことだったんだね」
「そうだな…… さて、虫退治なんだが、虫でも基本は2種類いて、悪意のあるものと、ないものに分かれる。悪意のあるものは当然、私達、虫退治屋の対象となる。わかったかな? まあ、百聞は一見に如かずなんだがね」
「ところで、どうやってその虫を駆除するの? まさか、素手で殴るとか、包丁で刺すとか、バットで殴るとかはないよね……」
「お前はどうやって、裁かれてしまったんだったかな? それがヒント」
「銃で撃れて、弓で射たれた…… 私も武器を持って戦うのかな……」
「その通りだ。自分で使いやすい物を選べ。とりあえず、9mmでも持つか?」
きゅーみり? 鉄砲のことかな?
「……銃はちょっと…… やっぱり、弓がいいな。日頃から使い慣れているし。でも、虫を駆除するのに、そんな大げさな武器がいるの?」
紗百合のイメージは、虫だから、せいぜい大きくても10cm程度だと思っていた。
「虫と言ってもな、害虫みたいな奴らって意味だ。だから、厳密には負の存在ってところかな。虫みたいな奴もいれば獣や鳥みたいな奴らもいるぞ。中には人型もいるからな」
「だから、銃が必要になってくるのね。結構、大きいんだ。少し怖いな……」
不安で顔が曇る。そんな様子をみて、京花は明るく振る舞った。
「大丈夫だいじょーぶ。その為の装備をしっかりしときゃ問題ないよ。後で買い方を説明するから」
「え? 買うの? そんなお金ないけど……」
「心配するな。最初は夢世界が初回ボーナスを出してくれる。それで装備を固めるんだ」
「なんだか、スマホゲームのログインボーナスね…… ねえ、ところで、その奉仕活動をしなかったら、どうなるの?」
「詳しくは知らないけれど、もう夢を見ることができなくなるらしい」
「夢? それだけ?」
「夢が見れないということは、ここの世界には当然来られないし、繋がることも、できなるってこと。こちらの恩恵は一切受けられないってことかな。人はね、深層心理で、みんなとつながっている。それこそコンピーターのネットワークみたいに。そのネット回線が切れるってことだ」
「ぅぅぅん。いってる意味がよくわからない」
「人は単体のように見えて、実は集合帯なんだよ。見えない所でつながっているから生きていけるのかな。集団でいるのではなくて、集団になるように、個体のネットワークがつながってできているわけだ。それがなくなったら、その人は完全に孤立して生きてはいけなくなる。もしくは、その集団から排除される。集団には入れないから、おのずと道を外していくわけだ。そして、道を外したものは必要ないから、理不尽に裁かれ隔離される。夢を見なくなるというのは、具体例なのだけれど、現実世界からも切り離されるっていうのが、本当のところだね」
「夢を見るというのは、現実世界とつながるってことなの?」
「それも、少し違うな。人は起きている時は、外界にほとんど気をとられる。当然起きたまま寝ることはできない。そして、睡眠をするとようやく脳みそは解放されるわけだ。そうなると、夢世界と繋がりが強くなって、その人の記憶も夢世界と共有される。夢世界から切り離されるというのは、まさに孤立してしまうと思ってもらえればいい。やがては現実世界からも孤立するわけだ」
「つまり、私たちは常に見張られていて、裏切れば、すぐさま切られ、捨てられるってわけね。つまりは、現実世界から追放されるってことなのかな」
「そんなところだ。ところで、現実世界では死ねば肉体は滅びる。でも魂と呼ばれてる何かは残る。でも、ここの世界では基本、死なない。生の肉体ではないからな」
紗百合は胸を矢で射抜かれて、自分の死んでいく様を思い出した。
その後、目が覚めて胸に死ぬ程痛みはあったが、ちゃんと生きていた。
「でも、さっきもいったように、夢世界に切り離されるようなことが起きると、こっちにいた自分はどうなるのかな? 現実世界とリンクが切れるから、こっちの世界に自分の記憶を残せなくなる。自分をこっちの世界で再現できなくなる。つまり、こっちでは自分が存在できなくなってしまう。それは、死ではなく消滅。人は死んでも、その人の生きた記憶はずっと残る。肉体はなくなってもその存在はずっと残る。現実世界では、死は肉体の滅ぶことを意味し、消滅することではない。だけど、こっちの世界では、完全に何も残らなくなってしまう。そう、消滅なんだ。魂も記憶も存在自体がなくなってしまう。魂さえ存在していれば、またいつの時代かに、生まれることができる、もしくは、別の世界で、別の形で存在することができるかもしれない。人は死んでも、消滅はしないのさ。一番恐れることは、無になってしまうこと。つまり消滅なのさ」
紗百合は、京花の話についていけなくなった。
こっちの世界にあっちの世界。
ただでさえ思考回路は混乱しているのに、さらなる未知の話を進めていくと、もはや理解不能だった。
「話が逸れたな。私たちは世界の管理下に置かれている。逆らってはいけない。そして、虫の駆除も、私たちが一番の適任者なのには違いない。現実世界とこっちの夢世界に行き来できるのは好都合なのさ」
「そういえば、虫ってどこにいるの。簡単に見つかるのかしら」
「心配ご無用。マネージャーが案内してくれるからね」
「ま、マネージャー? いるの? そんなの?」
「紗百合にもいるはずだけどな。ちっこい動物のような奴らが」
……ちっこい動物? ……黒い猫の悪魔のことか。
「うん、いるよ。京花ちゃんにもいるんだ」
「基本、うちらみたいな罪人には監視役がつく。勝手な行動はできないのさ。そして、導いてくれるんだ」
「だからマネージャーなのね。ちょっと変な感じだけど」
黒い小さな猫を思い出した。最初はかわいいと思い、途中で厄介者だと思い、そして、今は少しだけ期待が持てた。
京花が、おもむろに腰から銃を抜いた。
身長のある京花が持つと全然違和感がなく、普通に手に収まっていた。
「私はこれだ。いかにも武器って感じだろ」
すると今度はジャケットの下から、もう一丁銃を取り出してみせた。
見るからに重そうなのだが、京花は軽々とそれを構えた。
「それ、本物なんだよね。ここでは、捕まったりしないの? それに、人に見られたら厄介なことに、なるんじゃないのかな?」
「この夢世界は、私たちに寛大なのさ。夢世界に奉仕してあげているんだから、当然これくらいの見返りはないとね。私達はこの世界に守られている。超法規的な存在として活動してもいいんだ。もちもん、ある程度の範囲内だけの話なんだけどな。だから、ある程度のことは、とりあえずやってもいいのさ。覚醒者なんだから」
「覚醒者かぁ。自覚ないなぁ。ところで、その覚醒者ってどれくらいいるの」
「私も詳しくは知らないけど。この近辺には五人いるよ。そのうち会えるから、その時紹介するさ。さて、お仕事の準備をしようか。しばらくは、私が紗百合の教育係りだからな」
「虫退治の先生かな」
「そうそう、害虫駆除ね。心してかからないと、奴らに食われてしまうから気を付けろよ」
「え? 食われる? 人を喰うの?」
「そう、人に取り付いて浸食していく感じかな。そのうち全身を浸食されてしまって、はい、おしまい。そうなったらもう手遅れだから。つまり、その人は消滅してしまうってことな。この世界で消滅したら、現実世界側の肉体は生きていけないし、もう生まれ変わることも、できなくなってしまう。完全な無になってしまうから。そうなる前に私達は虫を退治して、ここの人たちを救っているのさ。どうだ? 少しやる気が出ただろ?」
「うん。私達は、縁の下でみんなを救っているってことなのね。ちょっと責任感じてきちゃった。頑張らないといけないんだね」
「そうそう、私たちは世界を支えているんだ。その感じで頑張って、期待しているよ」
「じゃあ、さっき言っていた武器っていうのを、実践してみたいんだけど、どうしたらいいの」
「具体的に言ってくれないと、わからないな。私みたいな拳銃がいいか?」
「それは…… ちょっと怖いかな。多分使いこなせないし、私の柄じゃないし。もっと軽そうな物じゃないと、持てないし使えないよ」
「その辺は大丈夫。夢世界の法則は、そこまで私たちを縛らないから、紗百合にも持てるし、ちゃんと撃てるよ」
「じゃあ、やっぱ弓がいいな。腕力が無くても使えるんでしょ。なんだか憧れるんだなあ、弓って」
紗百合はそう言ったが、本音は違っていた。それ以外の武器を知らないのと、弓に関しては、それこそ凄腕の腕前を持っていたからだ。
それは京花も知ってはいたが、やはり自分と同じ武器を持たせたかった。
「……まあ、いいけど、弓ってかさばるぞ。普段は持ち歩けないし、矢だってすぐなくなるぞ。まあ、それは拳銃も同じだけど、矢は持ち運びが大変だな。その辺は対処方法はあるんだけど、これも私たちの特建というやつでな、世界は私たちに協力してくれるんだ」
「……京花ちゃんって、いつも銃、持ち歩いているの? それはそうと、どうして世界は、直接虫を退治しようとしないの? 私達みたいなはぐれものを使わなくたって、いいような気がするんだけど」
「それは、大いなる意思と言うやつだよ。人だって同じだろ? 必要のない人間はいない。だから存在している。私たちも排除される存在なのに、こうやって生かされている。虫は退治される存在だけれど、それは私達の問題であって、夢世界の問題ではないのかもしれない。だから、夢世界は直接手を下さず、私たちに一任しているのだと思う。虫の退治は必要だし、それがなかったら、人間を脅かす存在なのには違いない」
「虫って、いったい何なの。細菌の一種なのかしら」
「そうだな、人の負の思念を餌にする、不特定多数の集合体ってところかな。もしくは、この夢世界が、もしくは人が生み出した、負の集合体。だから、その退治は人の役目なのかもしれないね。人は人を裁くけれど、夢世界は直接人を裁かないんだ」
「じゃあ、虫って人が生んだ化け物ってところなのかな。それを退治すれば、別の意味で人を救うってことになるのね」
「そうかもしれないし、違うかもしれない。虫を退治しても、別の場所から虫は生まれる。人は結局、化け物を生む存在なのさ。救えないね」
「虫って結局のところ、人が抱える闇ってやつなの? 憎悪とかの思念が具現化したってやつだよね」
「それも、あるのだけれど、外部からの侵入もあるらしいんだ。そいつらが人に取り付いて、その人の記憶を餌にしていることもある。だから、退治する対象はこの世のモノではない可能性もある」
「ぇ? この世のモノじゃない? それってどう言う意味?」
「だから、この世のモノじゃない。虫は突然現れて、取り付きやすい人に付く。 どこから現れるかは不明。と言っても、私達が知らないだけで、夢世界はちゃんと知っているんだろうね」
「不明って、神出鬼没ってこと? どうやって探し出すの?」
「探すのは、それこそマネージャーさんの仕事だ。虫の発生は結構な頻度であるから、仕事にこまることはない。それこそ永遠に発生するから困ったもんだ」
「厄介なんだね。ここの虫達って。でも、そんなの相手に私達だけでいいの? 確か、この周辺には5人しかいないんだよね。5人で足りてるわけ?」
「全然足りていない。この仕事は隠密行動もとらないといけないし、そもそもこれは、極秘裏にやらないといけないから、人が多ければいいって問題でもないのさ。だから、私達がしっかり仕事をしないと、この世界は混沌としてしまう」
「虫が増えると、どうなってしまうの?」
「人に取り付くと、人の心が雲っていく。そうなるとさらに、負の思念が増える、虫達の餌が増え、虫達はさらに大きくなる、成長した虫達はその人の思念を取り組んで、いつかやがては、思考をもつようになり、とりついた、その人を支配しようとする。肥大化した虫はやがて宿リ木のその人から離れ、単独で行動する。つまり完全体になった虫は私達と同様の能力を持つようになる、そうなると、この世界を脅かす存在になってしまう。そうなる前に私たちは虫を退治しなくてはならない。虫には突然発生するタイプと、人から発生するタイプがあって、どちらも最終的には似たような存在になってしまう。具体的には欲望の塊のような存在だ。この夢世界の人達は、基本は現実世界とリンクしているから、こちらの夢世界で何らかのタメージを受けると、あちらの世界でもそれなりのダメージを受ける。病気になったり、怪我の原因になったりね。紗百合も経験しただろ?」
紗百合は血だらけで倒れていた自分を思い出し、身震いした。
京花は続けた。
「私達覚醒者も、それは例外ではないから気をつけて。怪我をすれば痛いし体力も奪われるし、それが病気の引き金になることだってある。だから、当然だけど、ここの世界の人々を傷つけてはいけない。その傷は現実世界でも反映されるから、ここで死に至るようなケガをしてしまえば、当然、現実世界でも相当なダメージを被ることになってしまう」
「……ところで、虫ってどんな形なの。名前の通りの虫型なのかな」
「さっきも言ったけれど、虫と言っても、総称だからね。確かに昆虫みたいな形だったり、それこそ害虫みたいな嫌な奴もいるよ」
紗百合は少し想像して、害虫と聞いて身震いした。
あの、台所にいるような嫌なアレも、やっぱりいるのだろうかと……
京花は続けた。
「虫達は人の背中にくっついて、栄養となる負の思考を吸収して大きくなるから、小さいうちは背中にくっついていても、見えないことが多い。大きくなると、ぬいぐるみが抱っこしているような格好で、背中にくっついているのさ。でも、虫たちは基本一部のエリアでしか行動ができなくって、そのエリアから人がいなくなれば、そこは虫達しかいないわけだ。私達はそれを退治するってわけね。簡単だろう?」
「うーん、想像つかないな。やってみないと、何ともいえない。武器だってまだ使っていないし」
「そうだな、まずは武器を調達しよう。弓がいいって言っていたな。どんな感じのがいいのかな。本当に日本の弓か、西洋の弓か。どちらにしても紗百合に使えるサイズじゃないといけないな。少し待って」
京花はカバンからスマホを取り出し、弓を検索した。いくつか画像が出てくる。
「こんなのでどうだ? 折りたたみ式三節洋弓。結構高いな、これ……」
スマホの画面にはネジを緩めると三分の一の長さにたためる弓が表示されていた。持ち運びには便利そうだ。
「……あ。これ、私に合いそう」
「じゃあ決まりだね。注文するよ」
「え。私、そんなお金持っていないけど」
「いいのいいの。今回は私が紗百合を紹介したから、ボーナスポイントがもらえたんだ、それで買えるから大丈夫。私達は、夢世界のために、こうやって時間を割いて奉仕しているのだから、これくらい安いものなのさ。さて、この辺にコンビニはなかったかな?」
京花は、コンビニを探し、紗百合を連れて行った。
今、なぜコンビニなのか紗百合は分からなかったが、コンビニに着くと、京花がレジの店員さんにスマホの画面を見せると、バーコードリーダーで読み始めた。すると、店員さんが奥の部屋から大きな袋をもってくると、京香に渡した。
紗百合はまさかと思ったが、そのまさかだった。
「はい、これが紗百合の武器ね。矢も入っているから」
「あの、これは、私でも普通に買えるの?」
「後でアプリを教えてあげるよ。これは私たちの特権なのさ。もちもん、武器以外も何でも買えるよ。それと、カードも発行しないとな」
紗百合は思った。夢の世界だけれど、何もできなくなって、つまらないなと思っていたが。これなら別に何も問題ない気がした。
好きな物が買えて、好きな物が食べられる、ということなのだから。
「あ、ちなみにクレジットはちゃんと制限があるからね。無駄遣いはダメだぞ。虫を退治するとクレジットが溜まるシステムになっているからな。ちゃんと良くできているだろう? この世界も」
紗百合は肩を落とした。やはり働かないと、飯は食えないのだ。
そうでないと、覚醒者はどんどん堕落してしまうのだろう。こういう危険な仕事には、報酬が必要なのだ。
ただではみんなやらない。いくら正義のためだと言っても、腹は減るし、娯楽は必要なのだ。
それが、いくら夢の世界だといってもだ。
「あ、それと、虫は退治の対象だけど、私たちのような覚醒者も狩りの対象になっているから気をつけて。つまりは、私たちは攻撃される対象になることがあり、もちろん攻撃することもできる。わかるかな?」
「え、っと。よく分からないけど。つまりは、私たちのような存在を、攻撃しても罪にはならないってこと?」
「半分正解。つまりは、覚醒者を裁くことができるのは覚醒者だと言うことだ。紗百合も覚えているだろう?」
「ぁぁ…… そういうことね。そんなこともあったかしら」
紗百合は、以前自分が裁かれたことを思い出した。胸に深々と刺さった矢のことを思い出すと、今でも胸が痛む。
「京花ちゃんも以前、裁かれたことがあるんだよね。その時は、私のときみたいに戦ったの?」
「もちろん戦ったよ。多勢に無勢で私は負けてしまったけれどね。すごかったぞ。あいつら私の銃弾をかわして、接近戦で挑んできたからね。格が2つほど上だったぞ。覚醒者は人知を超える能力を発揮できるから、私の攻撃なんて、あいつらにしてみたら豆鉄砲程度にしか見えなかったのだろうね」
「へえ。銃弾をかわすなんて本当に化け物だね。私のケーキアタックなんて、それこそコケだましの程度だったんだろうな」
「お前の場合は、接近戦は不利だとわかっていたから、遠距離からの攻撃になったんだ。近寄ったらケーキにされてしまうからな」
「そうか、なるほど確かに。でも、あの矢はすごかったな。かわすことも防ぐこともできなかった。キラッて、何かが光ったと思ったら、もう私の胸に刺さっていたからなー」
「へえ。シャロの矢か? そりゃ、狙われたら最後だ。まさに、御愁傷様だな」
「本当に怖かったんだから。それに、すごく痛かった…… ここの夢って本当にリアルで困るわよね。そのくせ冗談じゃないけど、現実に反映しているから、困ったものだわ。せっかくの夢なんだから、自由に見たいものだわ。そういえば、あの小さなハリネズミさんはどうしたのかな。私には、黒い猫さんがいたんだけど、今回は現れないのかしら」
「ああ、監視役の連中か。そのうち現れるさ。というか、どうせその辺から私たちを監視しているよ。それが連中の役目だからね」
「私たちが暴走しないように見張っているのね。あいつらそんなに強いのかな。見た目は小動物だけれど、変身して猛獣になったりしてね」
「あいつらの姿は、あくまでも、うちらの想像が反映されているから、仮の姿さ。あいつらは、夢世界の末端の存在だから、基本は不死身だし、殺しても死なないし、そもそもここには存在すらしていないのかもしれない」
「見えていても、触れられなかったな。よく見ればかわいいのに、撫でたり抱っこできないばかりか、私達の監視役なんて幻滅するわ」
「まあ、敵ではないから問題はないだろう。そのうち現れるさ、虫がいるところまで案内してくれるのも、奴らの役目だからな」
「そうそう、どうやって虫を探すのかなって、ずっと思っていたの。見た目で探すって結構な労力だから、根気だけで、ひたすら見分けするのかと思っていたから」
「そんなことでは、私たち五人なんかじゃ、とても処理できないよ。私達は捜査官であって調査菅であって、執行官でもあるのだけれど、そんな索敵や観測まではできやしないよ」
「そうだよね、警察官だって、いっぱいいるものね。税金もいっぱい使っているし」
「そういうことだ。あいつら監視役はちゃんと私達をサポートしてくれる。なんせ、奴らもある意味化け物だからな。この辺に覚醒者が5人しかいないのも、それなりの理由があるのだろうな」
「でも、五人って少ないよね。この辺一帯って結構広いよ。そんなんじゃ身がもたないよ」
この街は比較的都会だ。人も沢山いれば高層ビルも建ち並ぶ。
そんな場所で虫退治なんて、気が遠くなりそうだ。
そんな紗百合の不安を感じ取り、京花は話した。
「私達は、それなりの報酬を受けられるわけだ。バイト代だな。お前の場合はスイーツでいいのなら、安上がりでいいな。私は特に欲しいものはないけれどな」
不意に左肩に軽く重みを感じた。
首を左に回し、目を最大に左に寄せると、黒い塊が確認できた。
「ひゃあっ!」
紗百合は反射的に、腕を振って黒い塊を振りはらった。腕が当たる瞬間に黒い塊は紗百合から跳躍して、地面に降り立った。
(触ってみたいとか抱いてみたいとか、いっていたくせにひどい扱いだね)
「あ。リブルだった…… だって、突然肩の上とかに乗られたら驚くわよ」
(じゃあ、頭の上なら良かったかい)
「同じよ、そんなこと。女子に気安く触らないでってことよ」
(はいはい。以後気をつけますよ」
「お前ら、結構仲よさそうだな。お前の監視官は猫型か。不気味で気持ち悪いな」
「そうかな、ちっちゃくて可愛いじゃない。京花ちゃん、もしかして猫苦手なのかな」
「苦手ではないさ。嫌いなだけだよ」
「それって、同じことじゃないのかな……」
「もちろん違う。嫌いは苦手の上位版だ」
「京花ちゃんの、意外な怖がりなところがかわいくて、何だか安心した」
「何に安心しているんだ、お前は」
(そんなことより紗百合。君にとってのデビュー戦だ。しっかりやってもらわないと困るよ。こちらだって、今後のことがあるのだから)
「えっと、リブルって、一応働いている身なのかな。かわいい形しているのに、監視官とかなんて、なんだか偉そうね」
(身なりと、形状は、関係ないのだよ。それに、一応僕は君の上位者なんだからね。それでは行こうか。ついてきて)
小さな体を、テクテクと小走りで進んだ。
「ほら、行くぞ。新米」
京花は、ジャケットの下にあるホルスターをから一丁の拳銃を抜いてセーフティーを外した。
紗百合は、折りたたみの弓を広げ弦を張った。
不安と緊張感で身が締まるというより、新らしいおもちゃを持ったときの、期待感のような高揚を感じた。
ゲームスタート。紗百合の気分はそんな感覚だった。
物語は始まったばかりだ。
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