第2話-2
―― 13 ――
「なにあれなにあれなにあれええええええ」
霊廟で復活した瞬間叫んだ。
周りのヒト(NPC)が変人を見る目で見てるけど知ったことじゃない!
巨大ゴリラに撲殺されて変なお化け提灯になっちゃったかと思えば復活ウィンドウが出てきて。でも時限制で。
30秒以内にこの場で復活するか、設定した霊廟で復活するか、リアルマネーで1分無敵付きでその場復活するか。
まぁ! 30秒で選択できるほど冷静じゃなかったよね!!
目の前に頭部潰されたキャラアバターが倒れてるとかマジ勘弁だし!
そして何より!!
妹ちゃんの撲殺死体とか金輪際見たくないわボケがああああああああああああああ!!!
「そうだ!」
きょろきょろ周りを見る。
すぐ隣で、うずくまって頭抱えて震えてる妹ちゃんを発見した。
あ、これ、まずいやつ。
血の気がひいた僕は瞬時に妹ちゃんを抱き抱えて公衆浴場に向かってダッシュ!
そのまま20銅振り込んで湯船にダーイブ!!
「だいじょうぶ。もう恐くない。もう恐くないから」
湯船の浅いところに寝そべって、妹ちゃんをぎゅぎゅっと抱き締めて頭をなでなで。
トラウマ発症しかけるAIとかわけわかんないけど、とにもかくにもひたすら甘やかすのだ!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・にいさん」
「ん? んっ!? んんっっ!!」
キス!? ナンデ!?!?
「んちゅっ。ん。うぅん」
まって!! まってWAY!! なにゆえーーー!!
「んっ。にいさん、もっと」
あぁちくせう。妹様のくちびるとってもおいしそうに見えてきたじゃんかよぅ。
「にぃさぁん」
僕を呼ぶ甘い声。
「んっっ。ちゅ。ん~~」
求められるがまま何回もくちづける。さて、どうしよう・・・・・・。
妹様がしてほしいなら幾らでもするのだけど、これで心の傷が癒えるかと言われると個々人によるとしか言えないから困る。
そもそもゲーム用AIが死亡をトリガーにして心的傷害を負うとか悪趣味すぎるって。
「にいさぁん。もっと愛を感じられるのがいいですぅ」
ん? あれ? なんかちがくね?
これ淫乱属性スイッチ入ってるよね?
ほら! なんかお目々キラキラさせてるし尻尾ふわふわ振ってるし!
「て~い」
ぐるっと上下を入れ替えて妹ちゃんを組み伏せる。
「きて。カ~ム。カムオンですよ兄さん」
両手を広げて今か今かと待ちわびてる妹ちゃん。
かわいいけどっ! このままずぶずぶにゃんにゃんしたいけどっ!!
心を鬼にして妹ちゃんの頭に手刀を軽く叩き入れた。ホント優しくしたから!!(無駄な弁明)
「おぅふ。なんでですかー! 傷心な妹ちゃんがオールオッケーしてるんですからこのままめくるめく快楽に溺れるのがお約束じゃないですかー!!」
なんか性格変わってない? あ、でも初期ポンコツも選んだからこれでいいのか。
「正気に戻った?」
「うぅ酷いです。横暴です。かわいいかわいい妹がえっちなことしてほしいってねだってるんですからお兄ちゃんは全部受け止めて教わった手技で私をとろけさせてくれれば良いんです。ソレ以外はノーサンキューです」
ゲーム開始4日目にしてずいぶんとウィットに富んだやりとりができるようなったなぁと感心する。
ケモノのお耳も自在に動かせるようになったのか今はぺたんと寝ている。
かぁわぁいい。
「そもそも! そもそもですよ! 兄さんあの時ミス鬼人さんに手解き受けた以外、房中術の練習してないじゃないですか。そんなんじゃダメです。毎日6時間は私で練習してくれなきゃヤです! いっぱいしてください!!」
「あぁ~うん。毎日練習しろってのは一理ある」
言われるまでもなく練習しようとは思っていた。
思っていたのだけど街の探索とチュートリアルクエストで思いの外時間を取られてしまったのだからしかないじゃないか。
初日、あの後いい加減長時間接続になってきていたから宿屋を見つけてログアウト。
二日目はチュートリアルクエストを消化して街の探索と情報収集。
三日目は買い物して、お風呂で妹ちゃんをもふもふした後、ささっと婆様のお使いクエスト。
で、本日四日目。南の森に秘湯があると番台婆様に聞いていたので行ってみたら死に戻ったという。
「そう! そうだよ! なにあれ? クソ強ゴリラが居るとか聞いてないんだよなぁ」
「ああぁぁぁ折角忘れようとしてたのにっ! 兄さんの鬼畜!」
妹様は思ったより大丈夫そうです。本気で嫌がってるんじゃなくて構ってヴォイスだ今のは。
「もうホントかわいいなぁ」
腰掛けてだっこして、もふもふ頭を撫でる。
「私、こんなので許しちゃうやすい女じゃ」
なでりこなでりこ。もふもふもふもふ。
「えへへ。なでられるのしゅき」
二齣完堕ちっ!
完全に性格崩壊してるけど、これはこれでかわいいのでヨシ。
「それでどうしますぅ? あきらめましゅ?」
幼児退行してない? ダイジョブ? あ、ダイジョブですか、そうですか。
「スキルとアーツの熟練度上げて再チャレンジしよか。あと四六時中ずっと居るのか偵察かなぁ」
このゲーム、スキルに見合った行動をすると熟練度が上がるシステムなのに加えてアーツ、いわゆる術とか技にも熟練度があって使えば使うほどダメージが増えたりクールタイムが減るらしい。しかも一定数値を超えると派生アーツまで生えてくるそうだ。
スクロール屋さんが言ってたから公式情報だと思う。
正直VRでやるシステムじゃない気がする。
「うぅ・・・あきらめないんですね。・・・・・・しかたないです。頑張ります」
「うん、ありがとう。もう死なせないからね」
「はい。私も兄さんを守ります」
「後方支援に徹してね? 前に出ないでよ?」
「当たり前です。あんな恐いの金輪際ごめんです」
「ですよねぇ」
とりあえず問題は僕だ。
房中術・按摩術が格闘スキル参照だからって安易に武器を籠手に決めたのは間違いだったかも。
僕がチュートリアルクエストでもらった籠手はガントレットのように手に嵌めるタイプじゃなくて、腕全体を覆っていて握り手がある大きな甲羅みたいなやつで。正直戦闘以外では邪魔だった。だからショトカ設定して一瞬で装備できるようにしておいたのだけど、その一瞬すらないとは思わなかった。素直に手袋タイプの金属籠手買い直そう。
「よし。買い物しよう」
思い立ったが吉日というしね。
「お金足ります?」
「まだ結構残ってるよ」
妹様の銃とスクロール、それから二人分の防具を買ったけれど所詮初期街。
そんな高いアイテムは売ってすらいない。
「【新人執行者の大籠手】は売っちゃって手甲買って。スクロールはどうしよっか」
この街で売ってる武器は二通り。新人執行者シリーズと青銅シリーズ。
数値的には全く一緒で見た目の違いしかない。
でも新人執行者シリーズはアイテムを揃えると上位装備に進化できるってテキストが書かれてるから先を考えればこっちの方がよさそう。素材アイテムの入手難度にもよるけど。
「アーツはどんなのが必要ですかね?」
こてんと首を傾げる妹ちゃんあざとい。
「とりあえず防御バフ。一撃死しなけりゃどうにでもできるし。あとは回避バフとか、リジェネとか、オート回避とか、そういうのがあるといいんだけど」
「攻撃アーツはいらないんです?」
「君に買ってあげた炸裂弾でよくない? 僕、アタッカーよりタンクした方が良いよね?」
「タンク? ・・・・・・あ、防御役ですね。そうですね、死ななければ私がうしろから治療弾打ち続けてもいいんですし」
そうそう銃のアーツ、というか銃器そのものの攻撃なのだけどなんと魔法ダメージ。
実弾じゃなくてエネルギーを圧縮して打ち出す魔道具が銃という扱いらしい。
なので見た目は完全にハリボテ装飾。
まぁ、おかげで弾切れとかリロードとかいらなくてありがたいけど。
「あ、そうだ。ヘイト集中もいるな」
「兄さん、兄さん、安易に横文字使われると一瞬理解できないので全部母語でお願いします」
「・・・・・・? 慣れよ?」
「うぅわかりましたよぅ」
「じゃ、買い物して熟練度稼ぎますか」
「作業みたいに動物乱獲するのはヤですよ。故郷に居た時、後始末大変だったの思い出して下さい」
「お、おぅ」
ゲーム開始前の暮らしとか知らんがなぁぁぁ!
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