第4話

 一年が経つ頃には、カルロッタがロベルタに教えられることはなくなっていた。

 フラメンコでは、身体の動きだけでなく演じている際の表情も重要になってくる。その点において、顔にあたる部分に大きなメインカメラのレンズだけしかないロベルタは表現力が人より劣るはず。当初カルロッタはそう考えていた。

 しかし実際にロベルタの踊る様子を見ていると感じるのだ。ロベルタが表現しようとしているものが。感情が。

 フラメンコにはいろいろな感情や気持ちを表す曲種がある。ロベルタはそのどれも踊りこなすことができたが、ひときわカルロッタの心に響いたのは、『ソレア』であった。

 ソレアは元々「孤独」という意味のスペイン語が語源と言われている、その名の通り孤独による切なく悲しい気持ち、やるせなさを表す曲種だ。

 ロベルタのソレアからはそのような悲しさがひしひしと感じられた。しかしカルロッタは不思議だった。

 何故ロベルタが、アンドロイドには無縁であろう孤独や悲哀をここまで表現できるのか。そこまで考えたところで彼女の中にある仮説が立てられた。

 ロベルタには魂があるのではないか。

 それは、ちょうど数日前にあるニュースを見ていたからこその仮説だった。

 そのニュースはこう伝えていた。『生物の魂というものの存在が科学的に証明された』と。

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【改稿中】情熱の生まれるところ 石野二番 @ishino2nd

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