第2話 転生した、白いやつ

 まっ白で、毛ぶかくて、ファンシーな動物が仁王立におうだちしていた。

「デカいっすね。あいつが転生バトルクリーチャーっすか?」

 第一声を上げたのは、マレブランケ切り込み隊長、さわやか系熱血ねつけつ少女チリアだ。

 スポーツりから汗がじわり、まないたボディーの空気抵抗はかぎりなくゼロに近く、その二つ星を黒装束のしわでガードするも、引きいたふうなダメージローブは、カメラ操作に紳士力しんしりよくが求められる。

 対してファンシーなあやつは、二足歩行タイプの巨大着ぐるみラビットおじさんだ。スネ毛や胸毛は白いモコモコであり、ぬいぐるみを洗ったばかりのような、あまい香りがただよっている。

 べつにおやじ臭くはない。

 では、どの辺りがおじさん要素なのかというと、細かいしぐさが中年男性のそれであった。背中をぽりぽりかいたあと、ちょっと指先をにおって、ピンピンっはじいた。

 ルシフェルは、口をぽやーんと開けてぼう立ち。

「あれは、んー……、単なるアニマルなモンスターでは?」

「転生バトルクリーチャーじゃないんっすか。ま、どっちでもいいんっすけどね」

 ここいらでは類を見ない格闘バカを自称するチリアは、フルーツフォークをデカくしたようなアレを背中におさめて、こぶしに力を込めた。だが、チリアの鉄拳がさくれつする前に、地底からこう熱源体ねつげんたいがぶっとんできた。あれは、地獄ナンバーワンの堪忍かんにんぶくろブレイカー、リビッコお姉さんだ。

 ビキキッ。

 おでこに血管が走っていた。

「ふふふ~? お姉さんわぁ、劉備りゆうび孔明こうめいが転生してきたって聞いて超音速ちようおんそくで飛んで来たのよぉ? そしたら何かなぁ? あの皮をぐまえのラパン? それともリエーヴル? お姉さん料理はちょ~っと苦手だけどぉ、皮を剥ぐのだけは自信があるのよぉ~? うふふふふ~♪」

 誰のしわざか、いやはや、ご存じのとおりマレブランケを集めるために、やれ転生バトルクリーチャーが現れただの、やれ刀が美男子に化けただのと「ありえるかもネタ」を吹聴ふいちようしてまわっちまったファルファ被告は、脂汗あぶらあせじんわり。

「ややーあ、あれは劉備と孔明が、ががっ、合体がつたいした姿すがただよっ!」

 むりがあった。

 ポキポキ、ゴキゴキ。

 指や首のほねを鳴らしたリビッコお姉さん。

 笑顔が笑っていないリビッコお姉さん。

「ふふふ~、こっちの世界でも武将転生ラブならありえるかも~? って、お姉さんわぁ本気で期待してたのょぉ、ふふふ~」

 ぶるぶるっ、ぶるぶるぶるぶるっ。

 奇妙きみような音が聞こえた。

 ファルファの身震いではない。あの、アニマルなモンスターが、小刻こきざみに体を揺らしたのだ。

 トコトコシュッシュ、すり足、はずみ足で、リビッコに迫ってきた。人なつっこい愛玩あいがん動物どうぶつであればセーフな動きだが、やつはキモキモ系だ。

「むぎゃぁぁ――?! あのバンザイしそうでしない変な動きぃっ何なのっ!! メルヘンを冒涜ぼうとくしたようなきたないおっさんの動きぃっ何なのっ!! んもうっ、がまんっできないっ!! ブッ刺すしかないわぁっ!! ぎいぃぃえぇぇぇ――――――っ!!」

 お姉さん、ぶち切れモード。

 二叉のトゲを振りかぶる。そのとき。

「やめてぇぇ~~、わたしのフレジェンタちゃんをいじめないでぇぇ~~!」

 うしろ八丁目から飛んできたその美少女は、うろこおおわれた雄々おおしきシッポと、翼竜よくりゆうけいのつばさがイカすドラゴン族の小悪魔だ。ほかのマレブランケとおそろな黒装束を着ているため、その一員であることは見て伝わる。

 ルシフェルが問うた。

「あのアニマル……フレジェンタちゃんは、ドラギにゃんのペットなの?」

「そうそう、そうなの! ナイショで育ててたら大きくなっちゃって! だからいじめないでぇぇ~~!」

 この地獄では、愛玩動物を飼っていいし、野生動物ならってもいいし、飼い主がわからない家畜かちくであれば、食肉処理してもいいおきてがある。

 マレブランケ唯一ゆいいつ黒龍こくりゆう少女ドラギニャーは、最近ひましているルシフェルを驚かせようと、あの白いもふもふを内密に育てていたのだ。しかれども、転生者おにごっこの通り道で偶然にも鉢合わせるとは。不運だった。

 ドラギニャーの懇願こんがんなどこれっぽっちも聞いちゃいない、視界一ミリメートルの暴走モードで狂い咲くリビッコは、背中を大きくのけぞらせたあと、もふもふ毛皮の採掘さいくつ祭りをおっぱじめた。

 全身バネをきかせたメトロノーム式・ひやく連撃れんげきが、残像ざんぞうを生み出すレベルで高速にくり出された。二叉をズブズブズブズブ突き立てる、狂気的な動きだ。

 ドラギニャーはあわてて止めに入った。

「やめ、あいたっ!」

 てのひらを突き刺された。

「ふふふ~? ドラちゃんが飼い主でしたの~? でしたらあれは家畜♪ ジビエでなくて、デミ・ソバージュ♪ 今日のディナーは、ラパンにドラゴン肉も追加みたいねぇ~♪」

 目が笑っていない――本気だ。

 ドラゴン肉はおいしいのだ。

 小悪魔たちは、罪人からしぼりだした念を食べるだけでなく、人間と同じような食事もおこなう。

 誰かが止めなければ。

 せめてもの罪滅ぼしとして、ファルファが仲裁ちゆうさいに入った。

「共食いはだめだよーっ!」

 しかし腰が引けていた。

 ちょっとバック飛行で逃げようとしていた。

 ぐいっ。

「あいたっー!!」

 ルシフェルが、ファルファのポニーテールを引いた。

 どうせ仲裁してもムダだろうと察したルシフェルは、そもそも彼女らを招集するきっかけとなった、緊急きんきゆう事態じたい発言のケルビーニを呼びつけた。

「ケルビっち。なぜこのフレジェンタちゃんが緊急事態なの。チリアちゃんやリビッコと比べて、こっちは人畜じんちく無害むがいな、ただのアニマルでしょ。わかりやすく説明して」

「わたしに聞かれても、フレジェンタちゃんは、と~ってもかわいいアニマルだし、きんきゅうじたいとは違うんだぞっ」

「えっ。じゃあ緊急事態とはなんのこっちゃの」

 余談――。ケルビーニは、あらゆる死者の魂から、生前の罪をみいだして地獄へつれてくる案内人だ。マレブランケたちよりも格上な悪魔であり、もとは天界からルシフェルを追ってきた智天使ちてんしなのだという。顔立ちはやさしく、ちょっとテンパりやさんなケルビーニは、まわりから浮かないように、闇の羽衣はごろもで悪魔っぽさを演出していた。

 しかし心までは悪魔になりきれず、罪人たちからもしたわれてしまい、地獄のいやし系どじっアイドルとして、今日も三丁目で死者たちを案内していたのだ。

 そんなケルビーニは語った。

「わたしは忘れないんだっ。アスファルトでどろどろでも、血のかわへ入ってべたべたでも、名前がなんだったったかしたんじゃっても、あーいたいた! あの罪人ちゃん三丁目にいたよねっ! って、ファンの顔はぜんぶ同じに見えちゃうわたしも、心のよごれだけは絶対に覚えているんだ。ところがさっき三丁目でみかけた一団は、ぴかぴかーッて装備はレジェンダリーだし、女の子いっぱいはべらせてるし、見境みさかいなく小悪魔ちゃんいじめてるし、ありゃ転生者だぁーって、すっ飛んできたんだぞっ」

 うわ、そりゃ完全に転生者ですわぁーと皆が納得した。

 次の瞬間。

 ぶっしゃぁぁぁ――――――っ!!

 フレジェンタが真っ二つに裂けた。あたまから真っ二つに。

 とてもじゃないが挿絵さしえは入れられない。スプラッターな惨状さんじようだった。

「「「「ぎゃわわ――――――っ!!」」」」

 ルシフェルと、ファルファと、ドラギニャー&ケルビーニが叫んだ。

 チリアは熱量が上がった。

「おわっ、やっばいっすね!」

 リビッコは本物の笑顔をみせた。

「血の海よ~♪ お姉さんが手を下さなくても汚物に神罰が下ったのよ~♪」

 本来、彼女らにとっての神罰はルシフェルが下すものだが、今のところルシフェルは動いていない。

 フレジェンタに一撃を加えた犯人グループは、血の河の対岸からフォーメーションを組んで、先手必勝とばかりに強力魔法を放ったのだ。

「悪魔の群れだわっ!」

「あっちにも羽が生えたやつ二匹っ!」

「お兄ちゃん、魔王っぽいのまでいるっ!」

 やはり転生者パーティーだった。

 ルシフェルにとって、やつらが悪魔の群れだと叫びたい。

 だが、転生者たちは、あくまで女神のおねがいを聞き入れたにすぎない。女神ディアナの代行者であって、清らかな心につけ込まれた子羊こひつじたちなのだ。

 いっぽうルシフェルは、かつて「神」だの「地獄にほとけ」だのとたたえられた大天使。たとえ愛玩動物フレジェンタを惨殺されても、ここは慈悲じひぶかきこころでお出迎でむかえを、

「死刑ね」

「ルッチーっ! 栽培はどうするのっ!」

発芽はつがの見込みなしそく死刑。ミノスの審判しんぱんとかいらないから、なるはやで処分して」

 ルシフェルの腹の虫は、殺せ、殺せ、と合唱がつしようしていた。

 ちなみにミノスというのは、アラディアの入口で罪人を各地獄にふりわける裁判官さいばんかんである。

 主催者二名が、おにごっこの方針ほうしんを決めあぐねていたところ、熱血少女チリアは、全身から炎のようなオーラを放ち臨戦りんせん態勢たいせいに入った。

「よっしゃ、転生バトルクリーチャーじゃないのは残念っすけど、ルッチーさんが死刑っていうなら、もう全力でブッつぶしてオッケーっすね!」

 相手パーティが何人いるのか定かではないが、考えるまえにこぶしで語り合えがモットーな熱血思考チリアは猛ダッシュで血の河を渡り、ガチバトルに突入した。

 そのすきにドラギニャーは、お友達(お肉)をかきあつめた。

 智天使ケルビーニは、ひそやかに逃走した。

 ほかのメンバーは、転生者パーティーを分析しはじめた。

「ふふ~ん、あれは単なるハーレム系チート転生者ね~……やたらおせっかいな親友枠もいないし、武将転生ラブは夢のまた夢なのね~、ふふふふふ~……」

 ぼさぼさだった髪をしおれさせて、お姉さんは八丁目に帰ってしまった。

 ルシフェルは数えた。

「ファルファたん、マレブランケって十二匹いたはずだけど、ほかの子らはどうしたの」

 ここにいるのは、ファルファ、チリア、ドラギニャー、そして帰還したリビッコを含めても、残り八匹はその姿を見せていなかった。

「やー、『じぶんらは畑を耕しとくんで』とか言ってたかなー。ほら、後方支援って大切っしょー」

 支援ならば仕方ない。

 ルシフェルはまず、お友達をお肉にされてしまった傷心のドラギニャーを気づかうことにした。

「ドラギにゃん、お肉あつめごくろうさま。お友達のフレジェンタちゃんは蘇生してあげるけど、あれだけ大きいと、たぶんまたお肉にされちゃうし、ちょっと小さめにしとく?」

「うん。手乗りフレジェンタちゃんがいい♪」

「わかった」

 ペカ――――ン!

 ルシフェルに後光が差した。

 巨大着ぐるみラビットおじさんことフレジェンタは、手乗り着ぐるみラビットおじさんとして新たな生を受けた。

「今日はフレジェンタちゃんとゆっくり休んで」

「うん。はちゃんと紹介するから。また一緒にあそんでね」

「うん。あらためて紹介しなくても、フレジェンタちゃんのことは大体わかったよ?」

「……ほんとにありがとぉ~」

 手乗りフレジェンタを肩に乗せたドラギニャーは、どこかしら慌てた様子で、八丁目の闇に消えた。

 ルシフェル陣営は、残すところ三匹。

「ねえファルファたん」

「何かなルッチー」

 ルシフェルは、考えていた。

「今日のイベントは、転生者おにごっこだよね」

「うん、つかまえて土にうめて水をやれば終わりだよー」

「フレジェンタちゃんに水をやれば、終わりだったのでは?」

「え、や、やー……たしかに死ぬまえとあとではサイズがだいぶ違ってたし、ギリギリ転生かもだけど、ほら、月の女神が異世界から転生させた、かわいいかわいい転生者を栽培しないと、ご返却してぎゃわわーってさせられないでしょ?」

「そっか。そうだね。あと、チリアちゃんは、なにゆえガチバトルを?」

 血の河と、たいまつと、がけ狭間はざまで、バトルジャンキー・チリアが転生者パーティーと単身闘っていた。どっかんどっかん何かが爆発している。

 博識はくしきなファルファがこれを解説する。

「え~と、あれは、おにごっこだし、タッチして鬼が交代するでしょ?」

「うん」

「タッチしかえすと、バトルっぽく見えるのよ」

「爆発は?」

視聴者しちようしやサービス。おにごっこ評論家のアタシが言うんだから間違いない」

「早く捕まえようか」

「う……、そもそも鬼ごっこって、相手を捕まえなくない?」

「けいどろに、ルールを換えようか」

「けいどろだと、アタシら子鬼は力になれないよ?」

「うん、力は借りたいけど、私は、ファルファたんが評論家だったことに驚きだよ」

 遠くで、また一つ爆発した。

「アタシあれに参加したら死んじゃうっしょー」

「神は言った。ペンで闘えと」

「それ評論じゃなくて物理でれってことよね」

「そのとおり」

 ガチバトルを分析した結果、敵勢はヒーローが一人、ヒロインが八人であることがわかった。グラップラー・チリアは、九人を相手にちょこまかと動きまくり、ときにはヒロインを盾にとって優位性ゆういせい担保たんぽしていた。がしかし、

「あ、チリアちゃん負けそう」

「えっ」

 ぶっしゃぁぁぁ――――――っ!!

 挿絵どころか、文章ですら表現規制が危ぶまれるため、ナニが飛び散ったのかは詳細を控えたい。やや中性的ちゆうせいてきなちっぱい小悪魔が、頭からぎゃばっと縦割たてわりにけて、墨汁ぼくじゆうらしきものをド派手にぶちまけていた。すべて黒塗りシルエットだ。

「「ぎゃわわ―――――――――っ!!」」

 叫ぶ余裕すらなかった犠牲者チリアの代わりに、ファルファとルシフェルが全身をつかって叫んだ。

「ルッチー、どうしよーっ!」

「神のみぞしる」

「あんたが神でしょっ! ホントどうにかしてよーっ!!」

「うん、しからば神業かみわざなんぞ、使ってみせようか」

「お、おおおー? 神業っ?! ルッチーは生まれつきチート能力も総なめとか投げっぱなしにしたネタを拾ってくれるの?」

「チートではないよ? 神業だよ? 神はたとえ地に落ちても、全知ぜんち全能ぜんのう

「ぎょわっ、ごたくはいいから、ぶぎゃっ、転生者こっちに来たし、わっわぁーっ、ルッチー急いで! その全知全能とやらでちょっぱや追い払ってぇ――――っ!!」

 ややじらしプレイにきようじたルシフェルも、あんまり転生者を近づけ過ぎると、れたれたで、めんどうごとがふえる。

「では、神の奇跡きせきを見せてしんぜよう。てあぁ――――――――――――――――っ!」

 いつもは表情のないルシフェルが、めずらしく両目をくわっと見開いて、両翼りようよくを背中から前方にりまげた。口のまえでその先端をクロスさせ、接触部せつしよくぶからレーザー光線をうち放つ。

 ビギャ――――――――――――――――――――――――ッ!!

「うわっ、かっけぇ――――っ!!」

 ファルファは歓喜かんきした。

 伸びた光線は、血の河をとおり越して、転生者パーティーをのみ込む。

 すべてをのみ込む。

 誰ひとり残さずにだ。

「ねえねえルッチー、転生者はキレイに消えたけどー、チリアのお肉もいっしょに消えちゃったよ?」

「うん、だいじょうぶ。さっきの光で事は済ませておいた」

 熱血少女チリアは、すっぱだかで蘇っていた。

「っひゃー、やられたやられた。やっぱチート能力持ちの転生者は強いっすね。こんどは負けないように筋トレがんばるっす」

 たとえ筋トレしすぎても、筋肉質にはならない華奢きやしやな体つきのチリアは、どこを隠すでもなく両腕をブンブンふりまわして、崖下八丁目に帰っていった。

 ファルファは改めてたずねた。

「で、あの光線技は何だったの?」

「あれね。まずは『転生者が来なかった』パラレル時空から、女の子たちの記憶を引っぱりだした。そして、こっちの記憶に上書きした。あの子たちは元々この世界の住人だから、本来あるべき生活に戻してあげるべき。それが私の使命」

「神じゃん!」

「ふふ。ありがとう」

 ファルファは、指をほおに当てて首をかしげた。

「転生者はどうなったのかなー」

「死んだよ」

「びぇっ! じゃ、じゃあ、あの妹も?」

「妹は現地人だったからセーフ。死んだのは転生者だけ」

「そっかー、じゃあ栽培用の苗はまた別の日にあつめる?」

 ルシフェルは、表情を変えずに。

「死とは、命がなくなること。――命とは、寿命であり、生きる原動力であり、転生者にとって大切なナニかのこと」

「ほ、ほう?」

「さっきのゴッドパラレル浄化ビーム光線は、ハーレムパーティーのゆがみを正して、チート能力を奪い去って、そして転生者から、おちんちんを奪った。もはや、あのボーイは死んだも同然。ポクポクちーん」

「おちんちんっ!! そ、それは、アタシでは想像がおっつかない拷問かもっ! あ~でもでも、男の子っておちんちんがなくなると性欲もなくなるって聞くし? わりかし平気なのかなぁ」

「神は、やってしまってから反省した。じつは性欲だけを残した」

「悪魔だっ!」

「ふふっ、私は悪魔大王。お友達を虐殺ぎやくさつされて真の力に目覚めた。でも、やさしさも忘れなかった。インターなにやらで調べたら、おちんちんずっと棍棒こんぼうでたたかれるよりマシって書いてあった。それに、リビッコお姉さんから聞いた話では、ボーイとボーイがよりそえば、まぼろしの穴が二人を満たしてくれるって」

「へぇ~。ところでインターなにやらって何よ?」

「異世界にある酒場さかばみたいなとこ」

「なるる。情報があつまるところね」

「それそれ」

「しっかし、月の女神もびっくりだろうね~。お気に入りの子がおちんちんナシで帰ってくるなんて」

「いや、うまく栽培できたら、おちんちんは縫合ほうごうして返すつもりよ? 手元においとくのいやだし」

「ぇっ、なまでおいてるの?」

「—―栽培する?」

いやッ! ぜっっッたいにむりッ!」

「まりもだとおもえば、あるいは」

「ぉわーっ聞きたくないっ! っていうか生々しいし、もう転生者に返してあげなよっ!」

 ファルファは渋い顔つきで、鼻のあたりの空気をふり払った。

 そうだ、話題を変えよう。

「ところでルッチー、転生者はどんなふうに栽培するつもり? まさかほんとうに腹芸させる気じゃないよね?」

「えっ……」

 ルシフェルのほほに、ひとすじの汗が流れた。

「すべては、神のおもむくままに」

 栽培がはじまる。

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