魔王様は属性過多。
「さて、班分けも決まった事だしどうする? もうサクっと乗り込んじゃう?」
「まぁそれが良いかもしれないな」
アシュリーが私の膝の上からぴょんと飛び降り、皆の前に出てそれぞれの島の座標を示した。
「一応分かってると思うが、アルプトラウムが無策であんな搭を放置してるとは思えないから、それ相応に強力な魔族が守護していると思っていいだろう」
その言葉にロンザとコーべニアがぶるっと震えるのが見えた。
でもその表情はまったく曇っていなくて、どちらかというと武者震いみたいな物なのだろう。
なかなか肝の据わったいい子達じゃん。
デュクシの奴私達以外にもいい仲間に恵まれたみたいね。
「それにだ、今までの流れからするともしかしたら魔族はアーティファクトを持たされてる可能性だってある」
『待って下さいまし。あれはわたくしが作って持たせていた物ですわよ?』
急にロザリアが話に割って入ってきた。ロンザとコーべニアはどこから声が聞こえたのかとキョロキョロしてる。
「アンタのは疑似アーティファクトだったかもしれんが今度は本物を持ってる可能性もあるって言ってるんだよ」
『あー、理解ですわ。そもそも疑似アーティファクトの作り方ってアルプトラウムに植え付けられてた記憶ですものね。本物を所持しててもおかしくありませんわ』
「そういう事だな。ついでに言えばあいつはなんだかんだ神だから世界に散らばっているアーティファクトを見つける事も容易いのかもしれない」
あっ、今の話聞いてて思い出した。
「そう言えばアシュリーってあの探し物用のアーティファクトで世界中のアーティファクトの位置を見れたって言ってたよね?」
「あー、そうだな。もし時間の猶予があるならそれを回収してからってのも悪くないかもしれないが……」
戦力アップ的にはいいアイディアかもしれない。さすが私!
「じゃあちょっとアーティファクトの場所を調べてみようか。……って、特定の相手じゃなくてそういう漠然としたものを指定する場合どうやって使えばいいの?」
「ああ、そう言えばセスティが持ってたんだったか……貸してみろ」
アシュリーは私からソレをさっと奪い取り、ちょちょいっと何かを操作したかと思うとあっさり表示された。
「……手遅れ、って事?」
アーティファクトの反応は、海の上だった。
おそらく五つの島を示している。
「これは、いよいよ厄介な事になってきたな。敵はアーティファクトを所有している事が確定してしまった。相性次第ではセスティだって危ないぞ」
うぇーめんどくさい。
アーティファクト持ってるってなると、この前王国に攻め込んできたガーゴゴゴなんとかみたいな連中相手にしなきゃいけないって事だよね。
頭使わないと勝てないような連中相手だと私は本領発揮できないんだけどなぁ。
あれ、そう言えば今更気付いたんだけどこの場にチャコいないじゃん。
チャコが居れば空関連は大丈夫だとして、それでも戦闘は私だけでやる事になるからなぁ……。
「ねぇアシュリー、チャコどこに居るか知らない?」
「ああ、あいつならどうせ食堂でヤケ食いしてるよ」
……なんでチャコがヤケ食い?
「アンタがニポポンに行く時も置いていかれて、王都へ行くときも置いていっただろ? だから完全に拗ねてるんだ」
「何それ可愛い」
「っ」
アシュリーが言葉に詰まった感じで固まる。
「アンタさぁ……傷付いた女子が居るってのに第一声が可愛いってどうなってんだよいつからドSになったんだ?」
「いやいや、ドSとかじゃないから。人聞き悪い事言わないでよ。私はただ連れて行ってもらえなくて拗ねてヤケ食いしてるっていうシチュエーションに萌えているだけであって」
「……ドSじゃなくてド変態だった」
「私は前からおにぃちゃんはド変態だって言ってるでしょ」
「ショコラは混ざって来なくていいから!」
まったく、ショコラはすぐ私の事変態扱いするんだから。自分の方がよっぽど変態じゃん! そんな所も可愛いけどねー。
「ひ、ヒールニント……本当に姫達はいつもこんな感じなのか……?」
「考えちゃだめよロンザ。この人達はこういう人達だからそのままを受け入れて。考えたら負け」
「お、おう……でもさっきあの子がおにぃちゃんって……」
「いい? セスティさんはね、英雄で、魔王で、魔王の夫で、元魔王の兄で、ショコラさんのおにぃちゃんで、ローゼリアの姫だけど男の人だから」
「待ってくれ全然意味が分からないんだが」
「だから何回も言わせないで。考えたら負けなの」
「お、おう……そういう物なのか」
「そういう物なの。諦めて」
相変わらずヒールニントが毒舌なんだけど私彼女に何かした? 別に手を出した訳じゃないし……。
やっぱりヒールニントって初めて会った時から凄い勢いで変わって行ってる気がする。
悪い意味じゃ無いんだけど、なんていうのかな……私達に適応しちゃった感じ。
ヒールニントの能力はとても有能だし唯一の物だから本当はどこかの班に同行してもらった方がいいんだけど、戦闘能力が皆無だから逆に彼女の身の安全が保障できない。
今回はメアについていくのも危ないだろうしね。
お留守番しててもらおうって話になったんだけど、きっとそれを根に持ってるんだこの子は。
でも、この時の私は彼女の事をいろいろと誤解していた。
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