魔王様と興味津々少女。


「そう言えばヒールニント、仲間達とはちゃんと会えたの?」


「えっ?」


 ヒールニントは不思議そうな顔で、裏返った声を出した。


「あっ、あーっ! そうそう。うん、会いに行ったらもう移動しちゃってました。私が何も言わずに出て来ちゃったから、もしかしたら今頃探してるのかもしれないですねー」


 ……?


「それだったら居場所を調べてやろうか?」


「あー、いえいえ。お構いなく。もともと一言謝ろうと思ってただけだったので。それはまた今度にしますよ」


 嘘だな。

 なんとなくだけど俺はそんな予感がしている。


 仲間の所へ行くためにわざわざこんな森に居た事、そして今の返答。

 本当に会いに来たなら一瞬で居場所を見つけられるこの状況で断る筈がない。

 だからこの子は何か他の目的で王国を出た……最初から仲間に会いに行く気なんてなかったんだろう。


 その理由までは分からないし、多分聞いても答えない気がする。


 それなら俺達がしっかり目を光らせていればいい。

 傍に居てもらった方が安心だろう。


「そうか、じゃあニポポンまで行くか」


「それは良いんだけれど、目的地はどこなの?」


 ああ、そうだった。二人は行った事が無い場所だから俺が転移をするしかない……。ちょっと不安だなぁ。


 いや待て、もっといい方法があるな。


 俺はアーティファクトでゲッコウの場所を調べる。具体的な座標が分れば、ここからメアに任せる方が安心だ。


「メア、ここまで頼むよ」


「はいはい。じゃあヒールニント、おにぃちゃん、手に掴まって。行くわよ」


 メアの転移魔法で俺達はまったく誤差無くゲッコウの目の前へ。


「きゃあっ!」

「大丈夫ですかいゲコ美さん!」


 ゲコ美を庇うようにゲッコウが俺達の前に立ちふさがり……。


「あれっ、姫さんがたじゃねぇですかい。……もしかして、アレを見たんで?」


「いや、俺は見てねぇけど見た奴等からの報告が入ってな……一応様子を見に来たんだ」


「ねぇねぇカエルさん!」


 俺とゲッコウが話していたというのに、メアが俺を押しのけて間に割って入る。


「そこのピンクのカエルがカエルさんの言ってたゲコ美さん!? カエルさんの妄想じゃなかったんだね!」


「……あっし、なんだか物凄く酷い扱いを受けている気がしやすが……その通り、彼女があっしの最愛の人ゲコひ……ゲコ美さんですぜ」


「げこひゲコ美? 変わった名前ね?」


「えっと、あぁ……そう、そうなんでさぁ。ゲコヒ・ゲコ美さんと言いますぜ」


「そうなのね! ゲコヒさんこんにちわ! 私メアリー・ルーナって言って、以前カエルさんに結構世話になったのよ。その時ゲコ美さんの話少し聞いた事あるのよね~」


「そ、そうでしたか。私の事はゲコ美、と呼んで下さいね」


 ゲコ美はやんわりと名前の呼び方を指定していた。多分だけどゲコヒって名前じゃないと思う。ゲッコウが何かを言いかけてやめた、もしくは言っちゃいけない事を言いそうになったって所だろどうせ。


 俺にとってはどうでもいい事なので突っ込んで聞くのはやめておこう。


「で、あの映像についてはどうやったんだ? カエルはあんな事できたのか?」


「いえ、アレはあっしの……そう、知り合いの魔術師に協力してもらったんでさぁ」


 魔術師。

 俺は魔術って言葉を聞くだけで軽く拒否反応が出そうになっていた。


「その魔術師って奴はけっこうやるのか?」


「そうですなぁ……それなりの使い手ではあると思いやす」


「そうか。そのうちそいつと話がしてみたいな。魔術についていろいろ聞きたい」


「そ、その機会が作れるようならあっしが都合付けましょうや」


 ……どうにも違和感感じるんだよな。

 何か大ごとが起きたのかと思えばそこまで焦ってるようでもないし……。


「そう言えばお前の言ってたショウグンっていうのは……」


「うっ、やっぱりその件も耳に入ってやしたか……」


「フロザエモン様、ここはもう正直に話して協力を仰いだ方がいいのでは……?」


「しかしあっしらの事情にこの人達を巻き込んでしまうのは……」


 ……うん、これは絶対面倒な奴だ。

 そういう事なら俺はここらで退散しようかな。


 そこまで焦ってないのであれば俺達が出るまでも無いような状況なのかもしれないしきっとそうだ大丈夫。


「そうか、邪魔したな。俺らはこの辺で……」


「なになに? 一緒に旅した仲でしょ? 私に相談してみなさいよ。力になれるかもしれないわよ?」


 おいおい……。

 メアが何故かめっちゃ前のめりにカエルに食いついてる。


 いったい何がお前の興味を引いたんだ? ゲコ美との恋バナとかそういうやつか?

 ほんっと女ってやつは……。

 メアなんて興味ありすぎてキャラ変わってるじゃねぇかよ……。

 きっとプリンとして生きてた時はこんな感じだったんだろう。


「なぁ、邪魔しちゃ悪いし俺達は帰ろうぜ? ほら、ヒールニントもそう思うだろ?」


「えっ? 私ですか? 私はとっても興味ありますけど……?」


 お前もか……お前もメアと同類か? アレだな、類は友を呼ぶとかなんとか。


「何よ。おにぃちゃんは帰るっていうの? 意外と薄情な人なのね?」


 お前に言われたくねぇんですけど!?


「あぁもう分かったよ。おいカエル、とりあえず説明してもらうぞ」

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