魔王様と蛙と聖女の行方。


「えっ、今なんて?」


「せやから、カエルだったって……」


「カエルって……ゲッコウの事か? なんであいつが? そんな魔法使えたのか?」


「そんなんうちに言われてもわからんわ。でも確かに空に映し出されていたのはカエルだったらしいで」


 どういう事だ? ゲッコウがあちこちに魔法でメッセージを送る、なんて。


「で、あいつはなんて言ってたんだ?」


「それがなぁ……よく分からんのよ」


「どうやってそんな事をしたのかはともかく、そこまでしてメッセージを飛ばしてくるって事はよっぽどの事だろう? 分からんって事はないだろうぜ」


「んー、それがなぁ?」


 ろぴねぇから聞いた奴からのメッセージっていうのは確かによく分からない物だった。


『ショウグン様! フロザエモンでさぁ! ショウグン様がこれをどこかで見ていたならば今すぐにギズモオオヤシロへ来られたし! 繰り返すしやす! ショウグン様が……』


「ショウグン様だぁ?」


「そう言っとったらしいで?」


 ゲッコウのやついったい何を始めるつもりだ?


 まさかあのゲコゲコランドとかいう訳の分からない国を復活させるつもりなのか?


 いや、いくら何でも……うーん。


「どないするんや? 様子見にいくん?」


「えっと……どうすっかなぁ」


 正直言うとちょっとめんどくさいなぁ。

 カエルの個人的なトラブルに首を突っ込むほど暇じゃない。


 でもわざわざあれだけの規模でアクションを起こしてくるなんて、意外と大きな問題が起きている可能性もある。


「まぁ、少しくらい様子見に行くかなぁ」


 その後、一人で行くのはさすがに抵抗があり過ぎたので道連れを作る事に。


 だが、ニポポンだからという理由で声をかけたサクラコとショコラはカエルの事に関わりたくないし興味がないと行って来てくれなかった。


 他に一緒に来てくれる人は居ないかと、メアにも声をかけたらなんというかもの凄い食いつきだった。


 そもそも、メアはゲコ美の事を話しには聞いていたらしい。


「ゲコ美さんって本当に存在したの……!?」だそうだ。

 意外とこいつ人のコイバナみたいなのに結構敏感で、「私も行くわ!」と食い気味な返事を頂いた。


 これで俺とメアが国を離れてしまう事になるので、ショコラがこっちに残ってくれるのは逆にありがたい。


 戦力的にはアシュリーも残っててもらった方がいいので声をかけるのはやめておこう。


 めりにゃんには念の為国に残って魔王業務を頼んだ方がいいだろうな。


 今この国は主要な街などと交易もしているし、通信、転送業務なども引き受けている上にプルットとの約束もあるから意外と忙しいのだ。


 そこで俺だけまたニポポンに行くというのは少し後ろめたい部分はあるが、どうせゲッコウ絡みの件ならすぐに終わって帰って来る事になるだろう。


 めりにゃんは「儂も行きたかったのう……」なんて言ってくれたが、拝み倒して残ってもらう事にした。


「何か問題があるなら解決してやってくれ。でも早く帰ってくるのじゃぞ?」


 今日もめりにゃんは話の分かる癒しの塊だった。本当にありがとう。


 とりあえずメアと俺の二人で出発しようと思ったのだが……メアには心配事があるらしい。


「そういえば……ヒールニントは大丈夫かしら? 私に何も言わずに行っちゃうなんて……」


 ロザリアの件が片付いた後、ヒールニントの姿が見えない事に気付いたメアが国中を探したところ、ホーシアが彼女の事をみかけたという話が出た。


 メアがホーシアに詰め寄り、詳し話しを聞くと、彼も不審に思ってヒールニントに声をかけたらしい。


「しばらくの間仲間の所に戻ろうと思うんです。もし誰かに聞かれたらそう伝えて下さい。でも聞かれるまで何も言わなくていいです」


 との事。

 聞かれるまで何も言わなくていい、というのがどういう意味なのか分からないが、彼女はそれまで行動を共にしていたロンザとコーべニアという奴等の所へ行ったのだろう。


 メアは納得してない様子で、絶対おかしいと言い張っていた。


 確かに急ではあったけれど、二人の元を離れてから大分経っているし会って話したい事もあったんだろう。


 メアは、「それなら私達に言えば一瞬で送ってあげられるしさ、なんなら紹介してくれたって良かったんじゃないの?」ってしばらくむくれていた。


 確かに転移して行ったんじゃないならヒールニント一人では危険な気もするが、魔物に襲われる事はないだろうし、何より魔族に襲われる可能性も低い人物だからな……。


 でも万が一があるとデュクシに何を言われるか分かったもんじゃない。

 少しそこについては考えておいた方がいいかもしれない。


 それに、ヒールニントに何かあったらまずメアがブチ切れて大変な事になる。


 早めに身の安全は確認しておいた方がいいだろう。


「メア、物は相談なんだが……カエルより先にヒールニントの所にいかないか?」

「賛成」


 俺が言い終わる前に速攻で返事が飛んできた。

 それだけ彼女の中では重要な事なんだろう。


「じゃあヒールニントの居場所を調べてみるよ」


 アーティファクトで彼女の位置を調べると、何やら妙な所に居る。


「……おかしいな。もしかしたらまた誰かにさらわれてるかもしれんぞ」


 彼女の反応は何もない森の中。こんな所に一人で行くはずが無い。


「今すぐそこへ行くわ。場所を教えなさい!!」


 表示された情報を確認するなり俺はメアに腕を引っ張られて、気が付いたら既に森の中だった。

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