魔王様とカッコいい嫁。
『ふん……たわいもない。こんな奴等に手こずりおって……こんな調子で星降りの民を倒せるのか? 最初から奴はアーティファクトとやらを三つ持っていると言っていたであろう? 星降りの民が作りし物……アレはどういう物なのかを見極める事が一番大事なのだ』
……確かに言ってたな。
この場合……認識した武器や魔法からの攻撃を受けなくなる物、それと同化に使った物……もう一つがあの妙な空間に潜む力、か。
『貴様にもやっと分かったようだな。どれが正規の物でどれが疑似かは分からんが、数を馬鹿正直に教えてくれていたのに能力を考えず闇雲に戦うからああなる』
くっそ、正論ばかり言いやがって……!
『我も以前あの妙な道具には煮え湯を飲まされた事があるからな……今後もこういう機会はあるだろう。心せよ』
「ちょっと倒し方教えてくれるだけで俺達だけでもなんとかなったっつの!」
我ながら苦しいいい訳である。それと、どうでもいい事だが一つの身体で二人が喋ってるのは割と気持ち悪い感じがする。
体の主導権が俺に戻りつつあるのだろうか?
「ムキーッ!!」
ショコラは相変わらず空気に八つ当たりをしてる。器用な奴だ。
『その倒し方、を見極められなかった時点で貴様らの実力が……む、時間切れのようだ。今回はこのくらいにしておいてやろう。次はあ奴を我の眼前へ連れてこい』
そう言って、スッと身体が軽くなる。
オロチが例の玉に帰ったのだろう。
「ってうぉぉぉぉい!! せめて地上に降ろしてから帰れ馬鹿野郎!!」
俺の身体からオロチが抜けた事で、再び俺の身体は地上へ向けて落下していく。
『落ちたくらいでは死なんだろう』
そういう問題じゃねぇぇっ!!
「よっと」
ふいに空中で誰かが俺をキャッチしてくれた。急にビタッと止まるもんだから視界がブレて気持ち悪い。
「お主は何をやっておるんじゃ……まったく……儂がついてないとダメダメじゃのう?」
「めりにゃん!」
俺を空中で抱きかかえてくれたのは可愛い俺の奥さんである。
「でもお姫様だっこはちょっと恥ずかしいからやめてくれ」
「おや? 確かお姫様だった気がするがのう?」
そう言ってめりにゃんが俺に笑いかける。相変わらずお茶目で頼りになる相棒だぜ。
「儂としては……セスティが儂だけの姫になると言うのであればいつまでもそのままで構わんのじゃが」
やだカッコいい。
って正気に戻れ。めりにゃんに男味を感じるのは上級者向け過ぎる。
「何言ってんのよ私……ぐぅ……っ! 俺は、必ず元の身体に戻ってみせるからな!」
「ふふふっ、そうかそうか、じゃあ楽しみに待つとしようかのう♪」
意地悪な奥さんである。可愛いから許すけど。
「とりあえず他所も大体片が付いておるよ。皆のおかげで今回もこの国は守られたのじゃ」
そう言いながらめりにゃんは地上へ向かい、俺を地面に降ろす。
ぐしゃっ。
「……あれっ?」
「おい、セスティ……? 何をしとるんじゃお主は……」
「い、いや……ちょっと待ってくれ、えっと、あれーっ!?」
めりにゃんが俺を地面に降ろした瞬間から、俺はぐにゃりと地面に崩れ落ちて全く身体が動かない。
「おか、しいな……身体が動か……あっ」
地面に転がってしまい。めりにゃんを見上げる形になる。
「なんだ、その……ご、ごめん。それと、か、可愛いね」
「セスティ……?」
めりにゃんの俺を見る目に光が無くなっていく。
そして彼女はそっと二~三歩後ろに下がった。
「覗いた訳では……!」
「分っておるよ。儂が言いたいのはじゃな……この状況で不可抗力により視界に入ってしまうのは仕方ないとしよう。しかし謝罪と同時に下着の感想を述べるとはどうかしておる……」
「ご、ごめんて」
「まったく……そんなに見たければいつだって見せてやるのじゃ」
「いや、そういう訳では……っ!」
「……」
あれ、さっきよりも目から光が消えてる!?
俺何か間違えた?
「はぁ……まったく、セスティらしいというかなんというか……まぁいいわい。さ、手を貸してやるから立つのじゃ」
「ありがとう」
うおぉぉ……マジで力が入らん。
こんなんじゃメアの所すぐには行けないぞ……。
でも放っておくわけには……。
「めりにゃん、頼みがあるんだが……」
「なんじゃなんじゃまた面倒事か? ……どうやら、真剣な話のようじゃな」
めりにゃんは俺の顔を見てそう判断してくれたらしい。こういう察しの良さが今はありがたい。
「俺をアシュリーの所に連れて行ってくれ」
「お主……念のために聞いておくがそれはいかがわしい目的では無いんじゃな?」
なんだよいかがわしい目的って……。
「やれやれ……分かった分かった。すぐに連れて行ってやるわい」
彼女は再び俺をお姫様抱っこして宙へ浮かぶ。
「お、おいめりにゃん、この抱き方は……」
「これはセスティに対する罰じゃよ。もう少し儂の腕の中でお姫様しておれ」
やだ……カッコいい!
「うん……分かった」
「な、なんじゃ急にしおらしくなりおって……」
「私にとってやっぱりめりにゃんは最高のパートナーなんだなって事が分かったわ」
「う、セスティがそっちの状態じゃとわしも変な気分になってくるのう」
「えっち」
「ばっ、馬鹿ものめっ!!」
めりにゃんが顔を真っ赤にして怒ってるのがあまりに可愛かったので目的の場所へ着くまでの間しばらくからかう事にした。
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