魔王様と頼りになる仲間達。


「あ、あぶなかった……死ぬかと思ったよ」


 メアとの通信を終えると、なんだかスッキリした顔のショコラがやってきた。


「あっ、お姉様大丈夫ですの!? 大惨事は避けられたようで安心しましたわ」


 そう言えば俺の所にシリルが報告に来て、ショコラは一目散にどこかへ走って行ったんだった。


「どうかしたのか? 何かトラブルか?」


「おにぃちゃんはそれを聞きたいの?」


「そりゃ妹の事だから気になるさ」


「妹の……やっぱりおにぃちゃんはド変態だね」


 なんでそうなる。


「俺はただ心配だっただけだ」


「それだけ?」


「……純粋に興味本位……ってのもあるかな」


「やっぱり間違いなくド変態。ね、シリル」


「そうですわね。お姉様の排泄事情に興味があるだなんてとんだ変態ですわ」


「待て待て、待ってくれいやマジで待って。そんなつもりじゃないからね!?」


 そうか、ショコラはトイレを我慢していて真っ先に駆けて行ったのか。


 俺はしばらく二人から変態扱いをされ続け、そんな時に限ってめりにゃんとかアシュリーとかがやってきてめんどくさい事になる。


 というかそんな事してる場合じゃねぇんだっての。


「めりにゃん、アシュリー、さっきメアから報告があってこっちに魔族二体と魔物の群れが向かってるらしいから外に居る奴等を避難させてくれ」


 その一言だけで皆すぐに動き出してくれる。


 めりにゃんはすぐに国中に声を届け、警戒態勢を取るよう呼び掛ける。


 アシュリーは主要戦力を集めて国の各方面にバランスよく配置。


 この王国の中でめりにゃんは俺と同じく魔王として、アシュリーは参謀として十分な働きをしてくれている。


 魔物達から俺よりも好かれているので皆に動いてもらう時にはめりにゃんから言ってもらうのが一番早い。


 戦闘関連についてはアシュリーに指示をされて断るような奴はいない。

 抵抗しても無駄だしその後酷い目に合うのが分っているからだ。

 それに、彼女の指示が大きく間違う事など考えにくいと皆分っているんだろう。


 そしてろぴねぇは戦闘員達の盛り上げ役というか特攻隊長的なポジションに落ち着いているようだ。


 彼女がテンション高く仲間を鼓舞するだけで士気の上がり方が全然違う。


「よっしゃいっちょやったるでーっ♪」

「「おおぉぉぉぉっ!!」」


 みたいな感じ。


 確かに一人ああいう明るいのがいると気分が上がりやすいもんだ。


「あーシリルお茶入れてきてー」

「はいですの♪」


 ……ショコラは何か役に立っているんだろうか。

 この国では事実上魔王の妹って事で通ってるが、概ねそれとは違う意味で恐れられている。


「おい、戦いの前にあまり飲み過ぎるとまたトイレに行きたくなるから気をつけろよ」


「おにぃちゃん……やっぱり私の排泄事情が……」


「気にならん気にならん。お前が戦いの前だってのにいつも通り過ぎて俺は心配なんだよ」



 ショコラは不思議そうに首を傾げる。


「お姉様お茶をお持ちしましたの♪」


「ん、えらい」


 そう言ってショコラはお茶をずずっと飲みながら俺の目の前でシリルの胸元を撫でまわした。


「お前はいったい何をやってるんだ」


「ずずっ……これ? ご褒美」


「……やっぱりお兄ちゃんはお前の事がとても心配だよ」


 喜んでるシリルもシリルだが。


「おぬしら随分楽しそうじゃのう?」


 準備を整えためりにゃんが俺を呼びに来たようだ。


「めりにゃん、外の様子はどうだ?」


「うむ、非戦闘要員は皆避難しておるし、戦闘要員は幹部達が率いてそれぞれ持ち場についておるよ。勿論他の皆も協力してくれておる。ナーリアやアシュリー、ライオン丸、サクラコ、アレク、それにジービルじゃな。聖ちゃんは最近腰が痛いからと言って今回は休んでもらっておる」


「ありがとう。じゃあ俺達もそろそろ準備しようか」


「魔王は魔王らしく王座でふんぞり返っててもいいんじゃぞ?」


 いやいや。俺がそんなガラじゃないのはわかってるだろ。


 勿論めりにゃんも分っていてからかって来ただけだ。


「俺が大人しくしてるタイプに見えるか?」


「見えんのう? じゃあ儂も一緒に行くとするか」


「じゃあ私も行くね。シリルはどっかに避難しておいて」


「わかりましたわ♪ 気を付けて行ってらっしゃいまし」


 にこやかなシリルの笑顔に見守られながら俺達は城の外へ出た。


「チャコ! 居るか!?」


「はいなーお呼びだべか?」


 いったいどこに居たのか、呼んだらすぐに俺の傍らに現れる。

 もしかしたらずっとどこかで俺の事を監視しているんだろうか……。


 怖いから考えるのはやめよう。


「またアレやるぞ。よろしく頼むわ」

「うれしいべ♪ まただーりんと一つになれるべさ☆」


「……のう、その言い方なんとかならんか? その、一つになるとか、いろいろ語弊がじゃな……」


 おや、奥さんが焼きもちを焼いていらっしゃる。とても可愛い。


「正妻だからってあだすが遠慮すると思ったら大間違いだべよ? 誰よりも早く誰よりも沢山、誰よりも深くだーりんと一つになるのはあだすだべ♪」


「ぐっ、ぐぬぬぬっ!! セスティ、こやつになんとか言うてやれ!」


 めりにゃんが八重歯を光らせて憤慨してる。

 俺はそんな彼女の頭を「よしよし」と優しく撫でた。


「むっ……お主、儂の事子供扱いしとるじゃろ……?」


「ん? やめた方がよかったか? すまん」


「……やめんでよいわ」


 女心は難しい。





―――――――――――――――――



この作品、我ながらシリアスパートとそれ以外の落差が凄いので読んで下さるかたが切り替えられてるのか不安になります(笑)


でもこの人達はやっぱりこうでないといけないと思うので生ぬるい目で見てやって下さいませ。


是非是非今後とも応援よろしくお願いします♪

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