魔王様の相棒はライバル意識が高い。
「おう、すまなかったな。で、個人的にはそのままのサイズで外に出られるといろいろ問題があると思うんだよな」
『我にここで待てと?』
「そうは言ってねぇよ。お前も荒神ならどうにかならないのか? 小さくなったり人型になったりとかさ」
『ならん。タマヌキではあるまいし』
俺の背後でチャコが「タマヌキじゃねーべさ!!」とか憤慨してる。
よく考えたらこいつも向こう側で人間に作り出された生命体なんだよな。
「じゃあやっぱりここに居てもらうしか……」
『待て待て。そもそもだ、我は貴様の腕を食って魔力を補充したから活動できているのであってだな、こんな所でじっとしていたらすぐに魔力が枯渇して死んでしまうぞ』
「いやいや、剣の封印が解けて力が戻ったんじゃなかったのか?」
それとも実際はさほど力が戻っていないのか?
『愚か者め。封印が解けたからこそ燃費が悪いのだ。先ほど剣から解放され我本来の力をある程度解放可能になったが、その分魔力が大量に必要なのだ』
「……という事は、もう一度封印してその時を待ってもらうしか……」
『冗談はやめろ。何か他の案を捻り出せ!』
オロチはかなり焦っているようで、なんとかしてくれと言わんばかりに『何か無いのか!?』と急かしてくる。
急かされてもこちらに打つ手がない以上やはりもう一度封印するしか……。
しかしその場合魔剣クサナギの力を吸収したメディファスで刺す事になるから、こいつをここに置いて行く事になってしまうな。
『主……? どうか賢明なご判断を……!』
メディファスもオロチと二人でこんな所にお留守番じゃさすがに可哀想だな。
俺も戦力がかなり落ちるし。
『本音がどちらだとしても今は何も言いません。置いて行かないで』
随分可愛い事言う様になったもんだ。
とにかくメディファスを置いて行くって選択肢は無いな。
何かあった時に俺の剣がないんじゃ戦いにくい。
オロチに関してはどうしたものか……アシュリーにでも相談してみるか?
俺は通信機を取り出しアシュリーに通信を飛ばしたのだが……。
「あれ、繋がらねぇな」
ここ自体がオロチを隠しておくために魔力を外に出さないような作りになっているのかもしれない。
アシュリーに相談するのも無理か……そうなるとどうしたものか。
「チャコは何かいい方法知らないか?」
「あだすだべか!? んーっ、何か、何かいい案が……一時的な同化なら出来るだろうけんども……」
『同化だと? 我がこいつとか? ははっ、タマヌキがふざけた事を言いよる』
「タマヌキじゃねーべさ!」
こいつら意外と仲いいんじゃないのか?
……それはともかく、同化?
「オロチ、その同化ってのはなんだ? どういう物なのかと、出来ればメリットデメリットを教えてくれ」
『我がお前と同化するような事はまずないが……いいだろう。呼び名の通り我等が他の生き物に乗り移る行為を指す。これを神憑りと言い、同化した生物は我等の力を行使できるようになる』
そりゃすげぇな。でも神様がわざわざ他の物に乗り移らなきゃいけない状況ってのがよくわからん。
『神憑りを行なえば一時的に奇跡のような力を手に入れる事が出来るであろうが、人間の身体など五分と持たずに朽ち果てるだろう』
「反動ってやつか?」
『魔力を根こそぎ吸い取られ、生気を吸われ、あっという間に干からびるだろうな』
「なるほど。確かにそれならおあつらえ向きじゃねぇか。俺は死なないぞ?」
『死なぬ身体……か。仮にそれが本当だとして、それでも無制限という訳にはいかぬであろう。我が常にお前に同化して生活するなどという方法は考えぬ事だ。それに我もそんなの嫌だし』
こいつ……俺と一緒がそんなに嫌か? 俺も嫌だけどな!!
『主と一緒は我だけで十分です』
「ちょっと黙ってろ」
『……』
他に何か方法はないか?
「それなら封印具の類しかねぇんではないべか?」
封印具?
「チャコ、その封印具ってのはなんだ? どこにある?」
「封印具っていうのは持ち運べるサイズの封印道具だべな」
いや、それがまずよく分からないんだが……。
ん? 持ち運べるサイズ?
「もしかして、それが有ればオロチをその中に入れて持ち運べるって事か?」
「かもしれんんべ。でもヤマタノオロチなんて規格外の奴を入れられる封印具なんてあるんだべか……」
チャコは首を傾げ、悩みながら説明してくれた。
「とりあえず今はなんでもいいさ。とりあえず試してみよう。封印具の場所は分かるのか?」
「結局それも星降りの民が作った道具であまりいい思い出もないべさ。元々はあだす達をそこに閉じ込めて無理やり力を引き出すような物だったべ」
『おい、黙って聞いていれば……封印具などがあった所で我はそんな物に入る気は無いぞ。我はあくまでも協力してやると言っているのだ。使役される気などまったく……』
「でもとりあえず現状の問題をどうにかしないとお前干からびて死ぬぞ?」
『ぐっ……百歩譲って、百歩譲ってだ、封印具があった所で我を納められるような物があるとはとても思えぬ』
ぺっ。
突然、なんの前触れもなくマリスが光る球体を吐き出した。
「きゅっきゅっきゅーい♪ ぷっきゅきゅ♪」
なんだかマリスがご機嫌だ。
……いや、むしろドヤってる感じがする。
褒めろと催促しているような……。
「マリス、もしかしてこれ……」
「それあれじゃねぇか? いつぞやそいつが食ったアーティファクトってやつ」
今まで地面に胡坐をかいて肘をつき、成り行きをぼけーっと眺めていたサクラコがそう教えてくれた。
確かニポポンンの遺跡でマリスがアーティファクトを食ったって言ってたな。
これがその時の……?
「きゅっきゅ? きゅーっきゅーっ!!」
「おおよしよし、今まで持っててくれたんだな。助かるよありがとう」
マリスを労いながら服の表面を撫でると、気持ちよさそうにゴロゴロ音がして、やがておとなしくなった。
「……という訳らしい。こいつに入ってくれ」
『ぐっ……その玉っころの匂いはどうにかならんか? 星振りの民の匂いがプンプンするぞ……』
アレは嫌だこれは嫌だとわがままな神様だなぁこいつ。
『やはり我の方が優秀でしょう』
「……メディファス、なんか言ったか?」
『……いえ、何も』
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