魔王様と今後の予定などなど。


「今アルプトラウムが連れている女が金毛九尾の可能性がある。何か心当たりはないか?」



「……確かにロンシャンは以前私の姉がプロジェクトを仕切って荒神の研究をしていた。そのプロジェクト自体国が滅びて自然解体された筈だけど……万が一、研究が完成していた、或いは神がその研究成果を奪ったと考えるのなら金毛九尾が居てもおかしくはない」



 おお……俺は考えが正しかった事よりも滅茶苦茶流暢に喋るこのロンシャンの皇女が怖くて仕方なかった。


 今まで何のためにあんなカタコトの喋りをしていたんだ?


「おいリンシャオお前……そんな普通に喋れたのか?」


「むっ……サクラコがそこに居るのカ? 別にワタシは普通に喋れるネ。この喋りは癖みたいな物ヨ。忘れるがイイネ」


「それはいい。それより、ロンシャンが荒神の研究してたってのはマジなのか? 魔王が見た金毛九尾は人型だったらしいぞ!?」


「あァ……そう言う事ネ。姉の研究ハ荒神の細胞からその力ノ遺伝子を抽出して人体が自在に操レルようにする物ネ」


「じゃあ魔王が見た女ってのは……」


「その実験の非検体ネ。ほぼ間違いナイヨ」



「マジか……だったらニポポンに荒神探しに行くのはある意味可能性が出て来たかもしれねぇぞ」


 サクラコがパァっと明るい顔になったと同時に、通信機の向こうから釘を刺す声が聞こえる。


「ソレはドウだか。ロンシャンは金毛九尾の件の際、荒神が大量に居ると言わレテいるニポポンにはとっくに目ヲつけてイタネ」


「……その時にニポポンは調べ尽くしてるって言いたいのか?」


「ソノ通りネ。いくら探してモ既にもぬけノからヨ」


 俺達はその後リンシャオに詳しく聞いたが、プロジェクトは姉の物だったからそれ以上の事は分からないと言われてしまった。


「ほら、もういいかしら? こっちは観光を楽しんでる所なの! あ、もし貴女達ニポポンに行くならサクラコさんも万事屋に顔出してあげたら?」


「お、おう……考えとくわ」


「んじゃまたねー♪ あ、リンシャオさんちょっと待ってー!」


 ブツっと通信が途切れる。


「なんか、あいつ性格変わってなかったか?」


「アタシたちと一緒に居た時のプリンはあんなもんだったよ」


 俺の疑問にサクラコが答えてくれたがいまいちピンとこない。


 半年くらい過ごした場所らしいから懐かしさに引っ張られてるのかもしれないな。


 まぁあいつが楽しく過ごしてるならそれでいいけどよ。


 こっちもいろいろ忙しくなってきそうだぜ。あてもなくニポポンに行ってもその社の場所が分からねぇし、もし行くならサクラコとショコラには付いて来てもらう事になるだろう。



「魔王さんよ、もしニポポン行くならあたしを連れて行ってくれ。しばらく帰ってないしたまには顔出さないとな」


「勿論そのつもりだ。あとショコラも来い」


「おにぃちゃんが来いって言うならイク。師匠と一緒なのは嫌だけど」


 これで現地の案内はゲットできたとして……。


「どうする? 他に一緒にくる奴はいるか?」


 その場に居る面子に一通り確認を取ると、めりにゃんも含めて他にやる事があると言う。


「めりにゃんは何する予定なんだ?」


「うむ……実はこの国の南東にある山の麓に妙な感じがしてな、近日中にそこへ調べに行こうという話をしておったのじゃ」


「緊急性がありそうなのか? なんなら俺も一緒にいこうか?」


「いや、セスティは大丈夫じゃ。儂らだけで調査くらいできるのじゃよ。ライオン丸とナーリアが手伝ってくれる事になっておるからのう」


「メリニャン……誰か忘れてへんか?」


「そうじゃった、ロピアもじゃったな」


 確かにそれだけ居れば余程の事が無い限り大丈夫だと思うが……。


「山の麓に何かあったっけ?」


「それが最近儂も知ったんじゃが父上の代に何かしてた場所らしいんんじゃよ。聖ちゃんに聞いても何をしてたかまでは知らんと言うのでな」


「そうか。じゃあ今回は別行動だな……でも何かあったらちゃんと連絡入れるんだぞ?」


「勿論じゃよ♪ 何も無くとも妻が亭主に連絡いれるのは当然じゃしな♪」


 可愛いやつめ。


「ニポポンンに行くんだったらアイツにも声かけておくか」


 サクラコがそんな事を言い出したので誰の事かとちょっと考えたけど、すぐに分かった。


 多分蛙の人だな。


 俺アイツとはメアと戦った時に軽く戦って逃げられた時以来あまり話して無いんだよな。


「おにぃちゃん、いつ頃出発するの?」


「そうだな……今日は休もう。明日の昼頃でいいんじゃないか?」


 とりあえず今日は温泉入ってゆっくり休みたいんだ俺は。


 明日からまた忙しくなりそうだし今日一日くらいはゆっくりしたっていいだろう?


「あぁ、それとな、アシュリーの所に今レオナって女の子がいるから皆よろしく頼むよ。一応ディレクシアの要人だからしっかり守ってやってくれ」


 レオナには申し訳ないけれど、今の今まですっかり忘れていた。


 研究所を出てくる時から忘れてた。

 多分アシュリーの所に置いて来たんだろうな。


 ……目が覚めたら研究モードのアシュリーとあのヤバい二人が居る空間な訳か……。


 大丈夫かな。

 大丈夫だよねきっと。

 知らん。

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