第四章:戦火の海へ。
魔王様ご一行は王様へダメージを与えた。
「あんの馬鹿野郎……!」
久しぶりに顔出したと思えばアルプトラウムになってるとか意味が分からん!
一緒に戦えたのはかなり楽しかったが、それもいつの間にか居なくなってるし最後はもう少し遅れたら大変な事になってたぞ。
「……私は怒っていいわよね?」
メアが俺を睨んでる。めっちゃ睨んでる。
身体が半分近くグズグズになった真っ黒なメアが俺を睨んでいる。
「……なんていうか、すまん」
「まぁ……いいけど。あのタイミングじゃヒールニント助けるのが精一杯だったんでしょうしね」
いつの間にかデュクシと獣女が消えていて、地鳴りが酷くなり、街の中央にぼっかりと穴が開いた。
穴からせりあがるように地中から妙なバカでかい楕円形のレンズのような物が現れ、なんだこれ? と見ているうちにみるみる赤く発光し始め、これはやばいとヒールニントを連れて脱出した。
その場にいたメアは逃げ遅れて大爆発に巻き込まれてしまったため、今絶賛再生中という訳だ。
「しかし山が吹き飛んじまったな……あんなものが街の中にあるとは思わなかったぜ」
「まったく……何のためにあんなものが? 万が一の時に街の痕跡を消す為かしら?」
それは俺も考えたが、どうにもしっくりこない。
「どちらかというと、アレは暴発しただけで、本来は外へ向けてぶっ放す類の物なんじゃないか?」
「……あれが兵器だって言うの?」
「その方がしっくりくるってだけさ。あんな所に閉じこもって何をしてたか知らんが、街の痕跡を消すって事は自分らが消える時だろう? 外の世界を支配しているならわざわざ痕跡を消す必要なんかないし、だとしたら兵器の方がしっくりこないか?」
「確かにレンズみたいになってたものね。アレで力を一点に集めて放射する……っていう類の物だったのかしら? ……ふぅ、やっと治ったわ」
ほとんど原型をとどめて無かったのにちゃんと回復出来るあたりたいしたもんだ。
ぐずぐずのメアを見てヒールニントが泣きじゃくったのは困ったが、だんだん再生していくのを見てドン引きしていたのをメアには言わないでおいてやろう。
さて……。
「レオナ、本当にあいつらにさらわれた事に身に覚えはないのか?」
俺達が山中から脱出すると、レオナはまだ身動き取れずに転がっていたので回収し、メアが出てくるのを待って四人合流している。
「は、はい……あの者達が何者なのかさえ分かりません。ただ、私を狙う人は多いようなので……あ、それはいろいろと事情があるのですが……」
「分ってる。俺はディレクシア王からあんたの保護を頼まれたんだ。事情は知ってるから安心しろ」
「そ、そうだったのですか!? それは失礼しました。……これからどうしたらいいんでしょうか……?」
それははっきりしている。さらわれた理由は分からないが、保護は完了したのだからディレクシアへ戻ろう。
「ひとまずディレクシア王の所へ行こう。話はそれからだな」
「わ、私が王に会いにいくのですか!?」
彼女は、恐れ多い……と言って俯いてしまう。
「おいおい。時期王女様だろうが。そんな調子でどうするよ」
「そ、そんな……私が次期王女なんてとんでもありません……私はただの街娘ですよ……?」
「その街娘相手にこれだけ大掛かりな問題が起きてるんじゃねぇか。とりあえずディレクシア王の所まで行こう。メア、頼めるか?」
「はいはい。ほんと貴女は早く転移の精度をあげてくれないかしら……」
ぶつぶつ言いながらもメアは、「ほら、掴まりなさい」と言って手を差し出してくる。
こいつなら簡単に何人も移動できるゲートを開ける筈だが、こうやって自然に人と距離を詰められるようになったのは喜ばしい変化だろう。
「何よ。じろじろ見ないでくれる?」
「すまんすまん。じゃあ頼むぜ」
「ほら、ヒールニントも」
「は、はい!」
そして、一瞬目の前が真っ白になり、すぐに俺達は王城の謁見の間へと移動した。
「げふぅっ!! げほっ! げほっ!」
どうやら食事中だったらしく、王様が俺達に驚いて盛大にむせ返った。
それにしても王様ってここで飯食うのか?
王座に座ったまま目の前に小さなテーブルを用意して食事をとっている。
もっとこう、食事専用の広い部屋の広いテーブルに食事が沢山並んでて……みたいなのを想像していたんだが。
「お、お前たち……また凄い組み合わせできおったな……しかし来るなら来ると連絡の一つくらい入れてくれ。一応私は王なんだぞ?」
「うるさいわねぇ……別に食事しながらでも話くらい出来るでしょ。こっちがわざわざ気を遣わなきゃいけないなんて面倒だわ」
「おいメア、王様なんだから一応もう少し言葉を選べよ。お前に言っても無駄かもしれんが……」
「あぁそうでしたね一応貴女も一国の主でしたね魔王様」
「うぇ……俺には辞めてくれ気持ち悪いな……」
「ふん」
メアは拗ねたように腕組みしてそっぽを向いてしまった。
「まぁいい。急にここへ来たという事は何かしらの報告があるのであろう? もしやその後ろに居るのが……?」
王は俺の後ろに隠れているレオナ、メアの後ろに隠れているヒールニントを見ながらどちらだろうと考えているようだ。
「あんたが探していたのはこっちだ。レオナ、ちゃんと挨拶しろ」
「は、はい! 私の名前はレオリアーナ。……レオリアーナ・ロキシムです」
「ロキシム……やはりそうか。君は私の兄の孫なのだな」
レオリアーナが目を丸くして驚いている。それも仕方ないだろう。本人はそこまでの情報を聞かされていなかったのだろうし。
「私のおじいさまが……王様のお兄さん……という事は、えっと……大叔父様?」
「げふぅっ!!」
何故かディレクシア王が大ダメージを受けた。
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