姫魔王といろいろ見通す男。


 ハーミット、ハーミット……。

 どこかで聞いた名のような気がするが……。


「セスティ殿! こちらへ来るのである!」


 ……気のせいか。

 まぁいい、今はそれどころじゃない。


「姫! この家、地下室があります!」


「ああ、この地下にザラが居るかもしれないな」


「だとしたらどうしてこのリュミナって女の人を放置してったんやろな?」


 ろぴねぇの疑問もごもっともだが、おそらくザラは無人のこの家に入り込み、地下室を見つけた……あるいは、家に入り込んでから地下室を作った。


 普通に考えたら馬鹿げた話だが、俺はクリエイトを使えば地下室くらいすぐに作れる。

 同じような事が出来る奴がいてもおかしくはないだろう。


 あのボロ館にも地下室を作っていたようだし、その可能性はあるだろう。


 で、だ。

 何故このリュミナって人がこんな場所で飲んだくれて寝ているかと言えば、おそらく地下にあんな奴がいるとは知らずに呑気に帰って来て寝ちまったんだろう。


「ステラ……今行きます!」


 ナーリアが地下へ続く階段へと飛び込んでいくので慌てて俺達も追いかけると、やはりこの地下室は元からあったわけではなさそうだった。


 階段は綺麗だし、たどり着いた地下室は異常に広かった。


「まったく君たちは懲りないね」


 地下室はただっぴろい空間に一つ大き目のデスクがあり、その上に妙なグラスや機材が沢山置いてある。

 アシュリーの家に少しだけ雰囲気が似ていた。



「せっかく見つけたばかりだというのにもうおいかけてきたのかい? 念のために別の方法を使っておいて正解だったよ。君らを全員殺してしまえば余計な心配もしなくて済むけれどね」


「戯言をっ!! ステラはどこですか!? 返しなさい!!」


 ナーリアがそう言うが早いか、即座に全力の魔法弓を放った。

 こんな地下室で。


 しかし、ナーリアの弓は明後日の方角へと飛んで行き、壁に突き刺さり爆発。


 さすがのザラもそれには驚いたようだった。


「き、君は一体何をやっているんだ!! なぜその場所に気付いた……?」


 壁が砕け、その奥に透明の大きな筒状の器具が置いてあるのが見えた。

 そして、その中には……。


「ステラ! すぐに助けますからね!」


「なるほど。発信機か何かをつけていたんだね? だからあの場所がすぐに分かったのか?」


 ……あー、多分それ違うわ。

 ナーリアのスキルが外れを引いただけだと思うが、ザラは驚愕しているようなのでそういう事にしておこう。


「なにがしたいのか分からないが、お前の下らない企みもここまでだよ。大人しく俺達にぶっ殺されろ」


「ふふ……面白い冗談をいう人だね。……しかし君は魂の色が不思議だ……」


 魂の色?

 なんの話かさっぱりだが、そんな物が見えるっていうのか?


「まず男性なのか女性なのかもよく分からないが……どちらかと言うと男性かな? そんな外見をしているというのに。興味深いね……そして、魂になにやら混ざりものがある。しかもそれは……待て、なんだそれは?」


「魂に混ざりものだぁ? 生憎と心当たりがねぇな。……いや、アレの事か?」


 確か俺の魂にはアーティファクトが混ざっているんだったか。

 魂に半分、もう半分は肉体に。


 そう考えるとロザリアが使っている俺の身体の方にもう半分のアーティファクトが混ざっている訳で、あの身体に戻っていた時に比べたら力が落ちているのかもしれない。


「アレとは何か。それを聞いているんだよ。とても不可思議で……強力な……しかもその服……君は全てが規格外すぎる」


「なんでそんな事が分かるのかは知らねぇが俺の魂はアーティファクトと融合しているからな。俺はつえーぞ? 殺されたくなきゃステラを返せ」


「アーティファクト? 神の作りし遺物か。これはお笑い草だね……君は自分が何と一つになっているのか理解しているのか? それはアーティファクトなんかじゃない」


「……どういう意味だ?」


「教えてやる義理は無いね。君が僕の実験台になってくれるというのであれば今すぐにでも解放してあげるけれどね」


 そんな勝手な事をほざきながらザラはニヤニヤと笑った。


「しかしこんな広い空間どうやって用意したのじゃ……?」


 確かにめりにゃんの疑問もわかる。

 こんな地下室不自然すぎるからな……。


「お前は……自由に部屋を作れるのか?」


「惜しいが違うよ。僕は部屋を作れるんじゃない。部屋へと繋げているにすぎない」


 ザラはさも愉快そうにこちらのメンバーを一人ずつ眺め、やがて俺に視線が固定される。すかさず睨みをきかせてやったのだが……。


「やはり他の連中も人間ではないみたいだね」


 無視しやがったこの野郎。


「とはいえ珍妙な一団だね。よく分からない人物に魔物が三体……そして人間が二人か」


 ライゴスやろぴねぇの事まで完全に見抜いていやがる……。こいつには何が見えているんだ?


「なぁ一つ聞きたい事があるんやけど」


 ろぴねぇがザラに向かって声をかけつつ、真上に手を上げた。


「ふむ? なんだい。……まるで学び舎の生徒のようじゃないか。懐かしいね」


 懐かしいという以上こいつにも学業に勤しんでいた時期があったのだろうか? 学業どころか今ではろくな事をしてないようだけど。


「あんたさ、まさかとは思うんやけど……服が透けて見えてたりせんよな?」


 なんですって?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る