姫魔王は諦めてない。
「なんだいもう帰っちまうのかい?」
「あぁ、こんな所にいつまでも居たら心臓に悪いからな」
「どういう意味じゃ?」
一緒に布団に入ったはいいものの、隣であっさりと可愛らしい寝息を立てるめりにゃんを見ていたら結局一睡も出来なかった。
こんな日々が続いたらいろいろ精神的にきつい。
俺もいろいろ慣れて行かないといけないんだろうけどさ……なにせめりにゃんには警戒心って物が無さすぎる。
旦那に対して警戒しろとは言わないけれど、一緒に布団に入るともなればいろいろ考える事あるだろなんで即寝るかな?
いや、寝てもいいんだけどさ、どっちかっていうとなんで即寝れるの?
めりにゃんはまだ上目遣いで俺の顔を覗き込んできては小首をかしげている。
くっそ可愛いな。
「男にはいろいろあるんだよ。めりにゃんはまだ知らなくてもいい事だ」
「そういう物なのかのう?」
「何が男にはいろいろ~だい。そういう時男が考えてる事なんて大抵ろくな事じゃないんだ。メリニャンちゃんも覚えておきな」
「う、うむ?」
「おふくろ、余計な事を吹き込まないでくれよ……じゃあ俺達はそろそろ行くから」
俺達はまだ少し名残惜しそうにしてるおふくろに手を振ってその場を後にした。
そうそう、俺達は別におふくろに会う為にここに来たわけじゃないんだ。それはついで。
本来の目的はここの管理をしているお偉いさんに会う事。
それ自体は昨夜のうちにおふくろに話をして、そちら経由でアポを取ってある。
そして、おふくろの方でかなり時間を取られてしまったのが帳消しになるほどあっさり話がついた。
ライデンには町長のような者は存在せず、ちょうどリャナのプルットのようにここら一体の歓楽街を取りまとめている婆さんがそのかわり、というような状態らしい。
おふくろはその婆さんとかなり仲が良かったらしく、俺がその子供であり、勇者のパーティの一員であり、魔王を退けたプリン・セスティだという理由だけでこちらの要求を全て飲んでくれた。
勿論現在は俺が魔物達をきちんと統率し、人間に危害は加えないと説明した上、ディレクシアと同盟を結んでいるという事実があったからこそであろうが、とても話の分かる婆さんだった。
いろいろと昔話を聞かされたけれど。
若い頃はライデン一の花魁だったとかなんとか……。
あまり興味ないけれど。
とにかく、そうしてライデンでの理解は得られた。あの婆さんが友好都市として皆に周知してくれるという。
やり方は任せたが、おそらく俺が魔物を懲らしめて改心させたとか俺の配下にしたとかそういう言い方をするんだろう。
ちょっと悲しいけれど、今最優先すべきは魔物の国が人間と友好的である、という事実なのだから仕方ない。
とにかくこれでライデンは大丈夫だろう。
王都はディレクシア王が上手くやってくれる事になってるから……。
あと回っておくべきはリャナとナランとエルフの森くらいか?
小さな町などは他にも沢山あるだろうけれどそれらを全部回っていても時間がかかるし、言っちゃ悪いが効果が薄い。
それならある程度規模の大きい場所に絞って回った方が結果が出るだろう。
リャナとエルフ達はおそらく大丈夫だ。
プルットに話をつけるのは簡単だろう。あそこにはゴギスタたちも居るしな。
エルフ達も俺の事を森を守った英雄と言ってたらしいし、最悪ごねるようならアシュリーを連れてくればどうにかするだろう。
出来れば怪我人がでるかもしれないからそんな事になる前に理解を得られるといいのだが。
そして、ナランに関しては一切分からない。
あそこを牛耳っていたのはクレバーの連中だった筈だ。
実質キャメリーンが裏で糸を引いていた張本人であり、あの街の責任者のような物だった筈……。
現在どういう運営方式になっているかわからない。
新しい代表を掲げているのか、或いはその後混沌としてしまっているのか……。
そればっかりは行ってみるしかないな。
でもちょっと心配なので最後にしよう。
まずは一番簡単そうなリャナ、そしてエルフの森、最後にナランへいく流れにしよう。
これが一通り終わったら、やっと俺達の準備が整う。
人間と魔物の連合軍対魔族という公式が完成する。
ディレクシアとロンシャンも同盟を結んだ事だし、本格的に魔族の侵攻に対する対応策を練っていける。
連絡網をしっかり配備し、何かあれば魔物フレンズ王国からすぐにでも戦力を送り込めるようにして各地の防衛にあたり、俺達の信頼をさらに深めていけばさらに良しだ。
早くやるべき事を済ませておかないといつまた魔族王が襲ってくるか分からないからな。
それに、あいつもどうにかして救ってやりたい。マリスの中に居たとはいえしばらく一緒に旅をした仲だからな。
それに、メアを通して俺は彼女の生い立ちも、ローゼリアで何があったかも知ってしまっている。
現状アルプトラウムに洗脳されているような状態だろう。自分の意思でやっているのでないならば、なんとかしてやらないと。
そして可能ならば味方に加えて、アルプトラウムとの決戦に備えたい。
戦力は少しでも多い方がいい。
この時の俺は、アルプトラウムがあんな事になっているなんて想像もしていなかった。
予想の範疇を越えてるだろ?
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