姫魔王、ここに復活す。


「しっかしよぉ、どうにもお前らの姿が慣れないんだよなぁ」


 あれから数日後、なんとかろぴねぇとめりにゃんの誤解は解けたと思うんだが、どうにもアシュリーが俺を避けているように思う。


 何か勘違いをこじらせているのかもしれない。


 いろいろ相談したい事もあったのに……全部メディファスのせいだ。


 ……仕方ないので俺ははロザリアと少し話をしておこうと食堂の隅に呼び出した。


 少しあれこれと話していたらそこに、サクラコさんが乱入してきてそれ以上込み入った話が出来なくなってしまった。


 なんというか空気を読まない人である。

 これがショコラの師匠だって言うんだから、ショコラがおかしな育ち方をしたのも納得出来ると言う物だ。


 で、当のサクラコさんが俺達を見て慣れないって言ってるのは俺とロザリアの外見。



「仕方ないでしょう? 私達からしたら今の方が慣れた姿なのよ」


 ロザリアがそういうのには理由があって、今俺達は元の姿に戻っているのだ。


「だとしてもなぁ……今までセスティだと思ってた奴が実はロザリア? って名前で、だけど今はその身体はちゃんとセスティで……? だめだ頭がこんがらがる」


 ややこしくなって申し訳ないが、俺は姫としての外見に戻っているし、ロザリアはメアの姿になっている。


 事の顛末は今から……えっと、多分十日くらい前に遡る。


『八日です』


 うるさいよ。大して変わんねぇだろうが。


『二日違うならかなり違うと思われますが』


 うっせー! 一年と、一年二日は大してかわんねぇだろうが!


 ごちゃごちゃ言い出したメディファスは無視だ。


 とにかく俺が今の状況になった事の経緯だが……。





「そろそろお互いの身体を元に戻した方が都合がいいんじゃない? 貴女もセスティとしての記憶を取り戻したんだし」


 ロザリアからそう提案され、俺達はいざ決意をして、自分らの身体を弄る事にした。


 それぞれ自分の身体を作り替える事ができるんだからいっそいじっちゃおう。というのが彼女からの提案だった。


 だけど、事はそんなに簡単にはいかない。


 俺はちょっと怖かったのでロザリアから先にやってもらったのだが……そこで気付く。


 神の呪いはまだ有効だという事に。


 ロザリアは自分が使っていた外見、つまり今の俺と同じ姿に身体を作り替えたのだが、数分で変更が無効化された。


 未だにその身体は変化を許さない。


 俺の方の身体は自由に出来る筈だと彼女は言い、上手く造形を整える自信がなかったのでいっそロザリアにやってもらった。


 でも、あろうことか俺の身体まですぐに変更が無効化される。


 これはどういう事かとしばらく二人で試行錯誤するものの、原因が分からない以上どうしようもない。


 そこで、俺はこの状況を説明できそうな人物を頼った。


『なるほど。それで私を呼び出したわけですね? あまり無駄な事に力を使いたくはないのですが……』


 メイディ・ファウスト。アルプトラウムと同じ神ならば、この状況が分かるのではないか?


 俺達の考えは的中していた。


『あぁ、これは中身を入れ替えた時に両方の身体に呪いをかけていますね。どちらも現状を打破する事はできません』


 彼女はあっけらかんとそんな事を言い、俺達はとてもがっかりしたのだが……。


 彼女は俺達に出来ない方法を提案してきた。


『そういう事でしたら今その二つの身体の中身をそっくりそのまま入れ替えてあげましょうか? それでいいのなら可能です。ある程度力を使うので本意ではありませんが』


 ……それが出来るのならぜひお願いしたい。

 なんだかんだ言って俺は姫の身体には愛着があるし、鏡を見るたびに自分の銀髪に違和感を覚えているのだ。


 自由に造形を変えられるのならば男の身体に戻れるのでは、と思ったけれどそれが敵わないのならば今はそれでいい。


 実際問題俺が入っているこのメアの身体は、もともとは俺の肉体な訳で、ついてるものもついてはいる。

 だからある意味では俺は自分の身体を取り戻していると言えるのだが……ぶっちゃけ今アレがついていると良からぬ事が起きてしまいそうで怖いのだ。


 俺だって男だぞ?

 酔った勢いで何をするかわからん。

 この前だってめりにゃんとろぴねぇを部屋に連れ込んでしまったし、万が一にもアレがアレしてああなってしまうといろいろもう責任を取るしかなくなってしまう。


 めりにゃんに関しては既に婚姻関係を結んでしまったので彼女の人生には責任を持ってやらなきゃならないが、だからこそこれ以上火種を増やしたくはないというのが実際の所である。


 まぁそんな事があり、メイディ・ファウストの計らいで俺達は慣れ親しんだ身体に戻る事が出来た、という訳だ。


 一応みんなにも説明したし、俺が姫の身体に戻りたかったから、という事にしておいた。


 だってここにいるロザリアは本当はメアなわけで、メアが自分の身体に戻りたかったなんて説明をするわけにいかなかったのだ。


 だから俺の我がままにロザリアが付き合ってくれた、という事にしておいた。


 ろぴねぇは何故か残念そうにしていたが、その他の人々は特に問題無く受け入れてくれた。


 特にナーリアなんかは「姫が姫に戻ってひめぇぇぇっ!!」と訳の分からない事を叫び飛びついてきて、俺がステラに睨まれる事になってしまうくらいだった。


 ただここでもう一つ問題が勃発。


 完全に忘れていたアレが復活してしまった。


 それは、もう終わった事だと思っていたアレ。


 私ってめっちゃ可愛くない? やっぱりこの身体が一番しっくりくるのよね♪


 ……これだ。

 メイディ・ファウストに聞いても、そこまで面倒見切れませんとか言われて引っ込まれちゃった。


 よく考えたら問題が増えただけなのよね。

 ほんと、これからどうしよう?


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