ぼっち姫、人生のパートナーを見つける。
「ほんとに馬車ごと全員転移しやがった……。元魔王が勇者の仲間だったプリンと一緒に旅してた意味がわからん……」
「サクラコとやら、それにはいろいろ事情があるんじゃ。力を封じられてただの小娘だった儂をセスティは……♪」
めりにゃんが頬に両手を当ててにっこにこしながら顔を赤らめている。
私ってば結構女たらしだったのかな……。
ちょっと気になってめりにゃんに小声で耳打ちしてみた。
「ねぇねぇ、私とめりにゃんってどういう関係だったの?」
「どっ、どんなって……そりゃもう……そりゃぁ……その、言わせるでない恥ずかしいじゃろう?」
彼女は顔を更に赤くして細かく足をバタバタし始めた。
そのたびに羽根はパタパタ動くし尻尾も上下に揺れてる。
「おいおいめっちゃ可愛いな」
「か、かわっ……お主……記憶なくしてもそういう所は変わらんのう」
えっ? 私って記憶なくす前からこんな事平気で言う人だったの? チャラすぎじゃない?
……いや、きっとこの子にだけ言ってたんだよ。つまり、この子は私にとって……。
「儂らは良きパートナーじゃったよ」
めりにゃんは遠い目をしながらそんな事を言い出した。やっぱり私の想像は合ってるみたい。
「なるほどね。私の人生のパートナーだったんだねぇ。早く思い出してあげないとね♪」
「ばっ、じじじ人生のパートナー?? セスティがそれでいいのであれば勿論儂は大歓迎じゃが……いやしかし、うーん」
めりにゃんは何かブツブツ言いながらしゃがみ込んでしまった。
かわいい。
「そこ。いちゃついてないで早く遺跡に案内して」
ショコラの視線が冷たい。言葉もどことなく尖ってる気がする。
「べっ、別にいちゃついてなどおらんわいっ!」
めりにゃんは顔を真っ赤にしながら「あっちじゃいくぞ!」と私達を先導して歩き出す。
道中で彼女にいろいろな事を聞いた。
私の身体の秘密とか。
神様に喧嘩売って呪われたとは聞いてたけど、やっぱり神様ってあいつらしい。
あれが全部の元凶だって言うならさっさとぶっ殺さないとだよね。
どうやら私の身体はたとえ腕が千切れようが頭に弓矢が刺さろうが少ししたら元にもどっちゃうらしい。なにそれ怖すぎ。
私のこの身体の状態が常に維持されるように出来てるんだってさ。要するに老いる事もなければ死ぬ事も無いって事なんだけど、ショコラ曰く身動き取れなくする事なら彼女の作る特殊な毒でどうにでもなる。だそうで、あまり過信するのはよくないみたい。
そもそも怪我するのとか痛いから嫌だし捨て身な戦い方はしたくないなぁ。
私の今までの仲間についてもいろいろ聞いてみた。
ナーリアって子がやっぱり私の事をすっごく心配してるらしくて、女の子大好きな変態らしい。
そういうのはショコラで足りてるんだけどね。
いろいろ話を聞けば聞くほど私の周りには変なのしか居なかったみたい。
デュクシって人だけは今一緒に居ないらしいけど。
で、私の着てるこの服はエンシェントドラゴンっていう大昔に世界の覇権を神と争ってたくらいヤバい奴らしいけど、今では私と一緒にいて私の魔力を食べて生きてるんだって。
特に害があるわけじゃなさそうだし滅茶苦茶防御力高いから問題なさそう。
それで、そのドラゴンの中にはローゼリアの姫様の意識が閉じ込められてるらしいんだけど私は全然会った事も話した事もないから今どうなってるのかわかんない。
一応最近話題になってる勇者様の事聞いてみたんだけどあまり詳しい情報は分からなかった。
以前の勇者は全く姿を現さなくなっちゃって、どこで何してるかさっぱりらしいんだけど、そもそも前の勇者に固執してたのが元の私だけだったらしいので皆あんまり興味無いみたい。
なんだか元勇者様かわいそう。
そんな話をしているうちにその遺跡の入り口が見えてきた。
遺跡に直接転移すればよかったような気もするけど、めりにゃんが言うにはニーラクの村自体は覚えてるけど遺跡の正確な座標が分からないから村から歩くのが一番間違いがないって事らしい。
「あの遺跡の中にアーティファクトがあったんですな。姐さん、こうやって見るとあそこに似てる気がしますぜ」
「確かにそうかもな。そう考えるとここにアーティファクトが有ったっていうのも分かる気がするぜ」
そんなカエルさんとサクラコさんの会話を聞いてショコラが不思議がってたので、ニポポンンでアーティファクト見つけた話を教えてあげた。
「なんでそれ早く言わない……? そのアーティファクトどうしたの?」
「んー。この服が食べちゃった」
「……そ。で、お姫様は現れたの?」
どうやらこのドラゴン服が大量の魔力を吸収すると、中にいるお姫様が表に出てくるらしいんだけど、その時はそんな事無かった。
「じゃあもしかしたらそのドラゴンの中にはもう居ないのかもね。……なるほど、その可能性は高いかな」
なんだかショコラが一人で勝手に納得してるけど、なんの事なのかは聞いたってどうせ答えてくれない。
めりにゃんも何の事か分かってないみたいだから、ショコラが単体で何か良からぬ事を考えてる確率高し。
ショコラはかなり要注意人物だ。いろんな意味で。
しかし、この遺跡の中に『然るべき場所』ってのがあったら、私の記憶にかなり近付く事が出来る。
私は少しの期待と、大きな不安を胸に遺跡へと一歩踏み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます