魔王様の肉体改造計画。


「ぶわっぷ! な、なんじゃなんじゃっ! 急に抱き着いてきおって!」


「なんと……いつの間に我の肩車からヒルダちゃんを……不覚っ! 守る守ると言いながらこの体たらく……やはり歳には勝てぬのか……」


「ご、ごめんなさい!」


 ヒルダさんが魔物フレンズ王国の事をいい名前だなんていうからついテンションが上がっちゃった。


「嬉しかったからつい……」


「う、うむ……まぁよい。こういうのはナーリアで慣れておるのじゃ」


 ナーリアちゃんいつもこんな事してたの!?


 でも、ちょっと分かる気がする。

 だってヒルダちゃんって、小さいし角とか羽根とか尻尾とかめっちゃラブリー。


 おっと、私は別にそっちの趣味はないんだからね。


「やっぱりジジイは隠居するしか……」


「これせいちゃん。うじうじしとらんで元気出すのじゃ。ちゃんと敵から守ってくれたらそれでいいのじゃ」


「やだヒルダちゃんやさしー♪」


 仲いいなぁ。ちょっとだけろぴねぇに会いたくなってきちゃった。


 私も気軽に軽口を言い合える人が近くに居てほしい。

 むしろみんなともそうなりたい。


 だから早く姫の事解決しないとなぁ。



「それにしても……この国はいったいどうしてしもうたんじゃ? 儂はローゼリアの事は全く情報無かったからいつからこうなっていたのか分からんが……」


 少なくとも私がぺんぺんに話を聞いた時には既にこういう状況だったみたいだ。


「せいちゃんが魔王城に居た頃はまだ普通の王国だったよ?」


 せいちゃん……聖竜だからせいちゃんらしいけど、なんだかお茶目なお爺ちゃんだなぁ。


「ローゼリアがこうなったのって、私が魔王城に乗り込む少し前なんだって。ぺんぺんがそう言ってた。だからもしかしたら私が何かしたのかも」


「ぺんぺんと言うとペリギーの事じゃな? 儂も今度からそう呼ぶ事にするのじゃ。しかしお主がこれを?」


 ヒルダちゃんはペリギーの事を私と同じくぺんぺんと呼んでくれるらしい。

 やっぱりヒルダちゃんとはセンスが合うなぁ♪


「私は記憶ないからわかんないけど、時期的にはその可能性あるよね」


「ふむ……確かにお主とセスティは外見が同じじゃし、セスティの身体はローゼリアの姫さんらしいから何かしらの関係があるのかもしれんのう」


 ちょっと待って。


「私とセスティって人の外見が同じって何? どういう事??」


「ああ、儂はよくその辺の事情は分からんのじゃが、お主とセスティの外見の違いは髪色と発育具合くらいのもんじゃよ。それに、今はお主が改造を加えてその姿になっておるが元はセスティの身体じゃぞ?」


 これが? 今の私がセスティさんの身体を改造した物??


「あまり実感ないんだけど、この身体が元は男の人の身体って事だよね? 男と女の具体的な違いって何? 胸がある事? 外見が綺麗な事?」


「おいおい、決定的な違いがあるじゃろうが」


 ……? ヒルダさんがなんだか言い辛そうにしてて教えてくれない。


「えっと、何がどう違うの? 具体的に」


「いや、じゃからその……せいちゃん、教えてやるのじゃ」


「ふむ……? 魔物の場合はその限りではないが、基本的に生殖器が外部に付いているか内部なのかどうかで雌雄の判断は可能であろう」


 生殖器……? 外部とか内部って何?

 むしろ内部にとか気持ち悪くない?


「生殖器って何? どんな形の物でどこについてるの?」


「なっ、それ本気で言っておるのか!? そんな物儂の口からは説明できんのじゃっ!!」


 怒られちゃった。

 そんなに言いにくいような事なんだろうか。


「仕方あるまい。主に男であれば足の付け根に男性器がついておるし、女性であれば……」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


「な、なんじゃ急に叫びおって……驚かせるでない」


 ヒルダさんが顔を真っ赤にしたまま私に抗議してくるけどそれどころじゃない。

 足の付け根? 太ももの間って事??


「……私、それついてる気がする……」


 お風呂入る時鏡見たけど、当たり前みたいにそれを受け入れてた。

 私の身体はこういう物なんだって、そう思ってた。


 だけど、これ……女の子にはあっちゃいけない物だったの?


「……ねぇヒルダさん」


「な、なんじゃ……?」


「気持ち悪いからとっちゃっていい……?」


「だ、ダメじゃダメじゃっ! それはセスティの身体なんじゃ! セスティのセスティなんじゃぞ!? 万が一それぞれ元の身体に戻れる日が来たとしたら、あまりにセスティがうかばれないのじゃ!」


 ……ダメかぁ……。


 本来ついてちゃいけない物だって認識するとすさまじくおぞましい物に感じてくるから不思議だ。


 ていうか生殖器とか言って結局は排泄器じゃん。これからトイレ行くたびにそれと対面しなきゃいけないの?


 なんか今更だけどこの中途半端な身体が恨めしい……。

 どうして以前の私はちゃんとそんなもの取っておいてくれなかったんだ……。


「嘆いている所悪いが、お客さんだ」


 せいちゃんが敵の襲来を告げる。


 やっぱりまだ魔族が残ってたのかな?


「ぐ……ごがぁっ……ががっ!? ごぐるぉぁぁぁぁぁぁっ!!」


 な、なんだあれ……。


 ぶよぶよした紫色で巨大な肉の塊。

 そして、その頭頂部からとても綺麗なブロンドの髪の毛が生えている。


「あれも……魔族?」

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