魔王様の初めての同志。
とにかく私とアシュリーでそれぞれ転移魔法を使い、全員を障壁の内側へ運んだ。
「……という訳でしてー。中に居た人達が魔族倒して転移でどっかいっちゃいましたー」
メリーとシリルの報告を聞きながら私達も奥へ進む。
幼女、じゃなかったヒルダちゃんはお爺さんの姿に変化した聖竜に肩車されてる。
ああしていると本当におじいちゃんと孫って感じに見えて微笑ましい。
「儂自分で歩けるのじゃ降ろすのじゃーっ!」
「だーめっ! ヒルダちゃんはせいちゃんが守ってあげますからねー? それに今は魔法とかも使えないんでしょ? おとなしく守られてなさいって♪」
「だ、だとしても別に肩車じゃなくてもじゃな……」
「ヒルダさん。諦めた方がよろしいかと。聖竜様は貴女を大事に思っているのです。ここは好意に甘えておいた方がいいでしょう」
「おお、人間にしてはいい事を言うではないか。まさにその通り……ねー? だからヒルダちゃんは何も気にしなくていいですからねー♪」
わめく幼女、過保護なおじいちゃん。そして眼鏡。
よく分からない取り合わせだけど、この人達も私の事を恨む理由がきっとあるんだろうなぁ。
当時の事なんて思い出したくはないけれど、自分がやった事だけでも把握してちゃんと謝りたいものだ。
じゃあ魔物も魔族も全滅って事か……とりあえず何グループかに別れてあちこち調査をする事になったのだが、私はそこで初めてこの人達のユルさを実感する事になる。
「どうやって組み分けする? 魔族の生き残りがいるかもだから三組くらいに別れよう」
そう言ったのはアシュリー。
「じゃんけんで出した手で分けたらいいよ。三~四人ずつになるくらいで」
そんな適当な事を言い出したのはショコラ。
そして驚くべきことに誰もそれに異を唱えない。
そんなんでいいの? と思いながらじゃんけんに参加。
結果的に私は聖竜のせいちゃん、そしてヒルダさんと一緒になった。
他の組み合わせはアシュリーとライゴスっていうぬいぐるみ、そしてシリル。
もう一組がショコラ、メリー、ナーリアちゃん。あと眼鏡の人。
私としてはヒルダさんとも話をしておきたかったからそれで構わないのだが、メリーはマスターと一緒が良かったと嘆き、ショコラはナーリアが一緒か……とぼやく。
「つべこべ抜かすな。別にこの組み合わせで問題ないだろ。戦力的にもぼちぼち分散してるしな……じゃあ適当に捜索して、特に何もなければ城のホールに集合って事でいいな?」
アシュリーさんはそう言ってぬいぐるみとシリルを連れて城の方へ向かう。
「じゃあ私も適当にいろいろ見てくる。あんまり興味ないけど……」
「まぁまぁショコラ、そう言わずに見てきましょうよ三人で、仲良く♪」
「私が一緒な事も忘れないで頂きたいですね」
やる気の無いショコラと、仲間が戻ってからやたら上機嫌のナーリアちゃんにメリーもついて城の外周の方へ散策へ行った。
あとついでに眼鏡の人も。
どうにもこうにもナーリアちゃんの様子がおかしい。
私はナーリアちゃんが難しい顔をしてるところばかり見て来たから、あの緩み切った笑顔を見て少し心が痛んだ。
本来はああいう顔をする子なんだ。
私のせいで難しい顔をさせていたんだろう。
「ほれ、わしらもそろそろいくのじゃ」
「ヒルダちゃんと一緒になれて良かったよー♪」
ほんとにこのおじいちゃんと孫は……。
「それで、魔王よ。まずはどこを調べるのだ?」
お爺ちゃん……もとい聖竜がコロっと態度を変えて厳しい口調で私に言った。
「そうだね……城の中と外周はもうみんなが行ってるから私達は城下町をもう少し調べてみよう」
私は賑やかなお爺ちゃんと、肩車されてる幼女魔王一緒に瓦礫の町をぐるりと回る。
「お主の現状は聞いて理解したつもりじゃが……本当に何も覚えておらぬのか? 儂と戦った事も?」
お爺ちゃんの頭の上からヒルダさんが私に問いかける。
それはもっともな疑問だし、彼女も私の被害者なのだから信じられない気持ちもあるだろう。
「以前私が貴女を追い出したって話だよね。……ごめんなさい。何も覚えてない。だけど、ちゃんとヒルダさんに帰ってきてもらえるように魔物達の国を用意してあるからね」
「それで贖罪のつもりか? ただの自己満足じゃろう。罪は消えぬぞ」
おじいちゃん、ヒルダさん以外の人にはほんと口調が厳しい。
「分ってるよ。おじ……じゃなかった。えっと、聖竜さん。だからね、罪滅ぼしってわけじゃないけど頑張ってるんだ。ヒルダさんが帰ってきてくれたらみんな喜ぶよ」
「そこじゃ。儂が驚いておるのは……まさか儂がおらぬ間に魔物達が協力して国を興し、しかも人間と同盟を結ぶ所まで話が進んでおるとは……皆をどうやって説得した? にわかには信じられぬ」
実際魔王としてみんなを纏めていた人にそう言われるのは悪い気しないもんだ。
「みんなすっごくいい人達だよ。早くヒルダさんにも魔物フレンズ王国を見てもらいたいな」
「ふむ……儂も早く見てみたいのじゃ。……それにしても……その国名は……」
なんだかこの流れにもちょっと慣れてきちゃったよ。
「実に良い名じゃのう」
「大好き!」
「な、なんじゃ突然」
もう、もうもう!
私ヒルダさん大好き。
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