ぼっち姫、第二戦目は女の敵。


「意外と見てるだけってのはヒヤヒヤしやすぜ」


「おいプリンお前本気出してねぇだろ? ふざけんじゃねぇぞ! こっちは金賭けてんだからな!?」


 怒るとこそこかー。

 本気で戦わないのが失礼とかじゃなくて、勝たないと儲からないからかー。


 そうだよね、そういう人だよね。


 その点蛙さんはちゃんと心配してくれてる。

 フードを目深に被ってるからその表情は分からないけど……。

 いや、見えてたとしても蛙の表情なんて見たって分からないけど。


「おい、次はちゃんとやれよ? 本来こういう場所は弱いと思われてた方が倍率上がってリターンが多くなるんだが今回は五回勝てば船って約束を取り付けてあるからな。とにかく勝てばそれでいい! 勿論あたしは全額プリンに賭けてるけどな!」


 なるほど。

 弱そうな方が倍率上がって、そっちに賭けた人が本来儲かるって事ね。

 でも自分が儲けるの最優先で私にわざと負けそうなフリしろとか言わないだけまともだ。


 あくまでも本来の狙いは船で、賭け金はおまけみたいなものなのかな?


 どんどんサクラコさんがまともな人に見えてきた。

 絶対勘違いだけど。


「よし次の戦いだ行ってこい!」


 サクラコさんに背中をどつかれてまた闘技場の中心までとことこ行くと、今度はひょろひょろの人が出て来た。


 今度はすぐにカーンという音が響く。


「あっ、そいつヤバいから気をつけろ! 影に気をつけろよ!」


 サクラコさんが何か言ってるけど周りが騒がしくてあまり聞こえなかった。影がどうとか?



「おーっと、ニンジャマスターカオルコサクラコさん、いくら自分の仲間だからと言って試合開始後のアドバイスはダメだぜー!? 特に相手の特性に関しての話は禁句だぁーっ!」


 そういえば事前の打ち合わせはいいけど試合開始したらそういう話するのはダメって言われた気がする。


 仕方ないのでひょろひょろを自分の力でどうにかするしかない。

 さっきの人よりは楽勝だろ。


「次の相手はあの男、レイファンだぁ!! 相手が女子だぞ!! 皆期待しろ! 今回も非道な〇◎●ショーが見れるかもしれないぜ!?」


「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」


 な、なんだぁ?

 なんとかショーって言ってたけど……観客もめっちゃ盛り上がってるし……。



「さぁ……我の秘儀に恐れ慄き、そして悶絶せよ……」


 レイファンとかいう人が両手を広げ、なんか私に向かって変な事言ってる。

 頭大丈夫かな……?


 瞬きした瞬間、目の前からレイファンが消える。


 あれっ、と思った時にはもう遅くて、そいつは私の後ろに居た。


 ヤバっ!!


 って、あれ?


 私の背後に回り込んだと思ったら、ニヤリと笑ってスタスタと離れていった。


 何がしたいんだろ……?


 とにかく、なんか気持ち悪いしさっさと倒しちゃおう。


「うっ……」


 あれ、ヤバいぞ何だこれ。


「ふふ……今頃気が付いたか。我の影縫いの術の恐ろしさに!」


 動けない……!?


 別に身体が動かないわけじゃないけど、足が地面にくっついてまったく動かない。


「来たぁぁぁぁっ!! ついに可憐なプリン嬢もレイファンの影縫いの術にかかってしまったぁぁぁっ! 彼と戦った女性戦士はすべてこの術の餌食になってしまったのだぁぁぁっ!」


「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」


 なになに!? なんか観客がめちゃくちゃ盛り上がってるんだけど……。


「男性諸君! 君たちへのサービスタイムだ! 本日もレイファンがやってくれるぞー!!」


「「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」」


 げっ、やっと私にもわかったぞ。

 こいつ、このひょろひょろ野郎この術で女性に酷い事してきたんだ。

 それをここの観客に見せつけて……。


 絶対許さない。

 許せない。


「レイファンって言ったよね? あんたそれ以上近付かない方がいいよ」


「ふん。さっきの戦いでもそんな事を言っていたようだが……先ほどとは違って今度は武器が空を舞ってなどいないぞ。これから快楽の世界を味合わせてやるから覚悟しておけ」


 ……お前のような奴が居るから……。



 私は剣を地面に突き立てる。

 不思議なくらいストっと刺さる。

 そのまま自分を中心として円を描くように地面を切り裂いた。


 どうやら私の足は、私の影の始点。

 そこが地面に繋がってしまったらしい。


 ならこれでどうだ?


「そ、そんな馬鹿な……!? 地面ごと歩いた、だと……!?」


 地面から足が離れないなら、その地面ごと歩けば問題ないだろ!


「覚悟すんのは……あんたの方だぁっ!! お前には手加減無しだ! 死んでも恨むなよ!!」


 私は、レイファンの身体に剣を突き立てる。


 出来る限り正確に、その一点のみを貫いた。



「運が良ければ命は助かるでしょ。あんたのそれはもう二度と使い物にならないだろうけどね」

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