ぼっち姫、第一戦目はイカ。
「彼女はプリン! どうしてもお金が必要でこの戦いに挑戦だぁー! 順調に勝ち進めば五連戦!! 本日のメインイベントだけに初戦敗退は勘弁してほしいぜー! さてさて初戦の相手は巨大斧の使い手モンゴリア! ここのお客さんなら知らない人は居ませんね? 対戦相手はことごとく身体を真っ二つにされて再起不能あるいは死亡! この強敵にか弱い少女が勝てるのか!? さぁベットの時間はもう終わりだぜー!?」
何やらテンションが高い男性の実況者が早口であれこれとまくし立ててくる。
全員再起不能か死亡って……無敗って事じゃん。
大丈夫かこれ……。
接近戦とか全然やりかた分かんないんだけど……。
私は巻き付けた布を解いて剣を構える。
しかも私だけ五連戦とか条件悪すぎるんだけど……。
「モンゴリア選手はこの地下闘技場に現れてから五戦全勝! ランキングをメキメキ上げている新人の中でも一際目立つ存在だぁーっ! まだまだランキングは二桁だが実力だけなら一桁内だと噂されているぜ! 正直ただの殺戮ショーにならないか俺は不安だ! しかし無情にも試合開始のゴングがぁ……鳴ったぜ!!」
カーン。
と思ったよりも軽い音が響いて戦いが始まった。
始まってしまった。
どうしようどうしよう。
私ほんとに勝てるのかこれ……。
とにかく死なないように頑張ろう。
「俺の相手がこんな小娘とは笑わせてくれるぜ。メインイベントだかなんだかしらねぇが一瞬で終わらせてやるからな」
「あのー。モンゴイカさん、お手柔らかにね?」
「俺の名前はモンゴリアだ! お前ぶっ殺してやる!!」
うわ、なんか知らないけど怒らせちゃったよ!!
イカの人が雄たけびをあげて私に突っ込んでくる。
おっそ。
ドタドタと地響きを鳴らしながら大男が迫ってくる迫力は大したもんだけど、これは当たる気がしないわ。
勢い任せに振り下ろされた斧をさっとかわして距離を取る。
「すばしっこい奴め! しかし逃げるだけじゃ俺を倒す事なんて出来ないぜ!」
うーん。
攻撃を食らう気はあまりしないから、とにかく攻めてみないと始まんないよね。
でも剣技とか分かんないしなぁ。
考えてる間にも再びイカの人がドタドタと走ってくる。
今度は横なぎに斧が振るわれて、それをちょいっと屈んでかわしてから剣を……。
って、これ切っちゃったら相手大怪我しちゃうじゃん。
足とか切られたら痛いよね? 歩けなくなっちゃうよね?
そんな事考えちゃってまた攻撃できなかった。
うーん。どうしようかなぁ……。
「おいプリンふざけんなよ! 相手は殺す気で来てんだからお前もしっかりぶち殺せ!!」
サクラコさんがめっちゃ怒ってる。
本気の相手には本気で相手しろって事なんだろうけどさぁ……。
「おーっとモンゴリアン選手の攻撃を巧みにかわすプリン選手! 素早さには自信アリかぁ~? しかし攻撃は軽そうだ! 彼にどこまで通じるか楽しみだぞー!?」
うるさいなぁ。
こっちはいろいろ考えてるってのにさ。
あ、そっか。
武器に思い切り攻撃して吹き飛ばしちゃえばいいんんだ!
「オラぁっ! 死にさらせー!!」
再び振り下ろされた斧のその刃を狙って私は自前の細身の剣を振り抜く。
ぱきぃーん。
軽い音が響いたので一瞬剣が折れちゃったかと心配したけど、折れて吹き飛んだのは斧の方だった。
「おー♪ 成功成功っ☆」
「な、お、お前俺様の斧を……!」
再び距離を取るが、怒り狂ったイカの人がこっちにゆっくり近付いてくる。
「ねーイカの人、それ以上近付くと危ないよ?」
「うるせぇ! ただじゃおかねぇぞ!!」
いや、危ないって! これ以上はまずいよ。
「ストップストップ! ほんとそれ以上こないで危ないから!」
「俺をナメるなぁ! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「おおっとー!? 吹き飛ばされていたモンゴリアン選手の斧が、上空からなんと彼自身に襲い掛かったぁーっ!! これはなんという不運! これもビギナーズラックというやつなのかぁ!?」
「あーあ。だからこっち来るなって言ったのに……」
肩口に思い切り斧が刺さって戦闘続行不可能って事で一戦目は無事に私の勝ち!
これを後四回かぁ……。
なんとかなるかな?
みんなこれくらい弱ければいいのに。
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