第六章:ぼっちな姫とピンキーキャット。
ぼっち姫、高貴っぽい何か降臨す。
ナーリアが落ち着くのを待って、俺達はデュクシ、めりにゃん、ライゴスと合流しようとしたのだが……。
「きゅーっ! きゅっ! きゅっ!!」
「うおっ、なんだどうした??」
ここの所ずっと寝てばっかりだったマリスがいきなり騒ぎ始めたのでかなり驚いた。
「きゅーっ! きゅーっ!」
マリスが俺の頭の上で、必死に何かを訴えかけている。
心なしかどこかへ引っ張って行こうとしているようだった。
「お前……もしかして……」
「きゅっ! ぷきゅきゅいっ♪」
マリスがどうしたいのかなんとなくわかったので俺がキャメリーンの死骸の方へ近寄ると、マリスがうねうね動いて全身で喜びを表現している。
……こいつ本当になんなんだろうな。
可愛いから別にいいけど。
ばくっ!!
「セスティ殿!! いったいそれは、それは何ですか!? 何をしているんですか!?」
ばりぼりばりぼりばりぼりばりぼり。
「ん? いや、うちの子がお腹すいたってさ」
「おなか、ですか……?」
急に大きく広がって、床に転がるキャメリーンを包み込んだかと思うとばりぼりと食べ始めたマリス。
その様子を見てテロアが分かりやすくドン引きしていた。
……まぁ、初めてみたら結構衝撃的かもしれない。
しかし、俺は忘れていた。
これを見るのが初めてなのはテロアだけじゃなかったという事を。
「ひっ……姫……? あの、マリスって……もしかして主食は魔物なんですか……?」
ここにもドン引いてる奴がいた。
でも、俺の考えが正しければマリスはキャメリーンを食いたかった訳じゃないんだと思うが。
ぺっ。
マリスがキャメリーンを吐き出す。
「あっ、あれ? 食べたんじゃなかったんですね」
マリスが食べてるのは魔物じゃなくて……。
吐き出されたキャメリーンをよく見ると、やっぱり首の所に変な跡だけが残っている。
こいつの姿をちゃんと視認した時間が少なかったから気付かなかったが、おそらくこいつも首輪をされていたんだろう。
今までの事を考えるとマリスはその首輪、つまりアーティファクトに関わる何かを食べていたんだろう。
メディファスを丸かじりした時もそうだ。
あいつなんてモロにアーティファクトだったからなぁ。
よくそのまま食われちまわなかったな。
『嫌な事を思い出させないで下さい』
……こいつまた勝手に心読んでやがったな?
さてはお前暇なんだろ?
『否定』
どうでもいいけどお前はマリスの事どう思う?
『不明。得体のしれない物としか……』
相変わらず役に立たねぇ奴。
『訂正を求めます。我が役立てない程の特殊な環境にいる主が悪い』
こいつ開き直りやがった!
『冗談はともかく、マリスはアーティファクトに引き付けられているというのは間違いないかと』
……こいつとうとう冗談を言う程にまでなってしまったか。
俺達の会話聞いて学習してるんだろうな。
余程暇だったらしい。
『否定。暇だった、ではなく向上心があると……』
わかったわかった。とにかく、どうやらマリスにとってアーティファクトが何か重要な物。それは間違いない。
「げっぷぅ~♪ きゅっきゅっ☆」
「食事にありついてご機嫌ね♪ よしよし☆」
無邪気な様子がとっても可愛くって、リボンに戻ったマリスをうりうり撫でてあげると、くすぐったそうに揺れながら「きゅっきゅっ♪」なんて言うもんだから私はもうメロメロ。
だったのに。
『ちょっとペース遅いんじゃないの!? 愚民風情がこのわたくしをいつまで待たせんのよ!!』
何か変な物がご降臨。
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