ぼっち姫、一筋の希望。
ガキィィィン!!
何やらクナイのような物がどこからか飛んできてサーリンの剣を弾き飛ばす。
「くっ。……ピンキーキャット……本当に裏切ったんですね。貴女もいつか殺してあげますよ?」
そう言ってサーリンの姿が背景と同化していく。
ピンキーキャット!? あいつがテロアを助けたのか?
それはともかく、ピンキーキャットならリュミアの居場所を知っているかもしれない。
確かあいつはリュミアに何かを聞こうとしていた。
リュミアは、それはピンキーキャットが知りたがっている事を俺が知ってると言っていた……。
なら遅かれ早かれ俺に接触してくるはずだ。
その時にリュミアの事を聞き出せばいい。
少しだけ希望が見えてきたぞ……!
「な、何がおきてるんすか!? キャメリーンがあのサーリンって人に化けてたんすか!?」
「デュクシ落ち着け。騒げば騒ぐだけあいつの優位性が高まるだけだ!」
俺の言葉にデュクシも騒ぐのを辞めて回りの警戒を始める。
やればできる癖に頭が悪いからたちが悪い。
「くくくくっ!! さっきも言ったでしょう? 私はなんにでも姿を変えられる訳ではありません。おめでたい貴方がたに教えてあげましょうか? 私はね、食った相手の姿に変わる事ができるんですよ!!」
「なっ、なんだと!? 貴様サーリンを食ったのか!?」
テロアが今度は顔を真っ赤にして叫ぶ。
騎士団員達もざわつき出した。
悲鳴をあげてへたり込む者、テロアのように憤慨して怒りをあらわにする者。そして、足を震わせながらかろうじて立っているような奴等だ。
「私は大食漢でね。人間一人なんて一飲みですよ。ほらよく見てごらんなさい。死体がどんどん消えていきますよ? ははははっ」
確かに、いつの間にかさらに二体の遺体が消えている。
それに気付いた騎士達が混乱し、散り散りに周りの騎士から一定の距離を取った。
固まっているとその中に紛れ込まれたら致命的だし、今のように中途半端に距離を取ると各個撃破されやすく、全方位への注意がしにくい。
このままじゃまだ被害者が出るぞ。
こういう乱戦は苦手だ。
倒すだけなら見える範囲を全部まとめてぶっ潰すような攻撃でもかませばいいんだろうが……。
俺とめりにゃんならそれも出来るがここにいる全員が死ぬ事になるので却下だ。
それ以外に何か方法があれば……。
「めりにゃん、力を開放したらあいつを見つけられるような魔法使えるか?」
めりにゃんは、申し訳なさそうに「そういう魔法は手持ちにないのじゃ……」と肩を落とす。
いや、めりにゃんのせいじゃないから気にするなよ。
そう言ってやりたかったのだがこちらも周りを注意していないとどこからあいつが襲ってくるか分からない。
俺は大丈夫だとしても他の連中はそうはいかない。
最悪俺が盾になってでも守ってやらないと。
そんな事を誓うが、やはり騎士団の方から悲鳴があがる。
いきなり目立つ木を切り倒そうとするより目立たず森の中で木を切る方が余程容易い。
もともと鎧で顔なんてほぼ隠れている上に、名前も知らないからその辺に紛れていたら俺達にはさっぱり区別がつかない。
こうなるともう俺なんかより、ここで役に立つのは……。
「デュクシ! 手伝いなさい!!」
ナーリアが叫ぶ。
「え? え? いったい何をするんすか!?」
「いい加減自分で考えなさい!! いいですか? 」
イライラしながらもデュクシにナーリアが耳打ちをして、「あー! 了解っす!!」と、どうやら話がまとまったらしい。
確かに今この状況ではこの二人に任せるのが一番確実なように思う。
「テロア、これから何が起きてもあの二人を止めようとするなよ。俺を信じろ」
「よ、よくわかりませんが了解です!」
テロアは辺りを確認しながらも俺のいう事はちゃんと把握してくれたらしい。
「姫、やります!」
「万が一の時は俺が責任を取ってやるから思い切ってやれ!」
ナーリアが騎士団員達の方へ弓を向ける。
「セスティ殿! ナーリアさんは一体何を……!?」
「いいから黙って見てろ!」
ナーリアが騎士団員に矢を放った。
……そして。
「し、正気……ですか……?」
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