ぼっち姫、新たな遊びを覚える。


「×※×¥〇×●×●※〇¥※!!??」


「ひ、姫ちゃん!!」

「姫!! 大丈夫ですか!?」


「×¥×※〇×〇¥●※×●※!!」


「た、大変だ! 姫ちゃんが……!!」

「姫っ! 姫っ! しっかりして下さい!!」


「な、なんじゃなんじゃ騒々しい……って、うわぁ!! セスティ!!??」

「た、大変なのである!!」





 ……はっ。


 気が付くと私は横に寝かせられていて、私を取り囲むようにみんなが集まっていた。


「な、なによ。いったいどうしたの?」


「姫ちゃん……ほんとにアレでも死なないんすね……マジすげーっす」

「セスティ……儂はお主が大丈夫なのは知っておったが……さすがに驚いたんじゃぞ?」

「まさかセスティ殿に一撃食らわせるとは……驚きである」


 デュクシとめりにゃんとライゴスは私の顔を覗き込んで良かった良かったと騒いでるけど、一人足りないよね?


「……ぐすっ……えぐっ……」


 あれ? なんかちょっと離れた所でナーリアが手で顔を覆ってる。

 めっちゃ泣いてるっぽい。


「ちょっとナーリア? 私無事なんですけどー? 言ったでしょ? あれくらいじゃ死なないんだってばっ♪ ほら。もうこんなにげん…きぃっひゃぁぁぁぁっ!!」


 私が言い終わる前にナーリアが思い切り飛びついてきてそのまま二人で倒れこんだ。


「な、なになに!? どーしたのナーリア?」


「わ、私……ぐすっ。姫に、姫になんて事を……っうぁぁぁぁぁぁっ」


「えっ、ちょっと泣くほどの事じゃないでしょ? 私生きてるんですけどー? 別にもう怪我もしてないんですけどー?」


 私が困惑して周りの人に助けを求めると、


「こいつ姫ちゃんに嘘ついて上空に二本矢を放ってたんすよ。それであんな事になっちゃったからめちゃくちゃ気にしてて」


 あぁ。

 あの時何が起きたのか分からなかったけど、どうやらナーリアは私に向かって合体魔法矢を一発、上空に二発撃ってたみたいだ。


 それで見事に私を行動不能にしたって訳ね。


「いやー。油断してたとは言っても私を行動不能にしたんだから大したもんよ♪ だからナーリアもいつまでも泣いてないで、むしろ誇りなさい」


 未だに私を押し倒した状態でわんわん泣いてるナーリアの頭をそっと撫でてあげると、時間はかかったけどゆっくりナーリアが大人しくなった。


「どう? 少しは落ち着いた?」


「ぐすっ……はい。姫、ごめんなざい」


 謝らないでよー。


「倒した相手に謝るのって失礼なんだよ? 私が読み切れない攻撃してきたって事じゃん。ナーリアすごいよ♪ よしよし」


 追加でさらによしよししてあげる。


「なんかずるいのじゃ」


「はいはい後でめりにゃんも撫でてあげるからね☆」


 あぁほんとめりにゃん可愛い!


「なんかずるいっすね」

「ずるいのである」


「てめーらはダメだぞ?」


「しゅん」

「である」


 デュクシとらいおん丸が妙に息ぴったりで笑っちゃうよね。


「ほら、そろそろ私の上からどいてくれる? それと、その手を放してよ」


 さっき押し倒された拍子でナーリアの右手がずっと私の胸を鷲掴みにしてるんだよね。

 別に女同士だからどうでもいいんだけどさ。


「あっ、す……すいません!! 失礼しましたぁっ!! ……でも、姫の……ぐへっ……」


 あ、これはもう大丈夫そうね。



「なんかずるいっすね」

「である」


「よしお前らそこに並べ。殴っちゃる」


 満面の笑みで馬鹿二人にそう言ったのに、悲鳴を上げて二人とも逃げて行っちゃった。


 正確には一人とぬいぐるみだけど。


「そー言えばさ。メディファスはどうしてすぐ治してくれなかったの?」


『解 我が治さずともすぐに回復するのは分かっていましたので』


「だからって放置ひどくない!?」


『我が主。それよりも一つお耳に入れたいのですが』


「……何よ」


 今はメディファスを責める時間なんですけど?



『矢は、実際主の頭に刺さる前に……本来はマリスに刺さる筈でした』


 えっ?


「マリス? マリスは大丈夫なの??」


 慌てて頭を触ると「きゅい?」というちっちゃな声と共にリボンがピコピコ動いてるからマリスは大丈夫っぽい。


「マリスには刺さらなかったんでしょ? なら全然問題ないよね?」


『疑問。マリスは自分に矢が当たりそうになった時、変化で少しだけ形を変え、かわしたのです』


 ……ん?


『つまり、です。マリスが矢を避けたから主の頭に矢が刺さったのです。私だけが責められるのが納得いきません』


「お前……もしかして怒ってんの?」


『否。不公平を正して頂きたいのです』


 なにそれ。こいつこんな事にこだわる奴だったっけ?


「なんかちょっと人間っぽくなってきたわねあんた」


『……不可解。我としてはそのような自覚はないのですが』


 無理矢理こいつの体を再構築した弊害かもね。


「でもその方が今までより話してて楽しいよ♪」


『……なんでしょう。この気持ちは。……消えてしまいたい』


「照れてんの!? こいつ照れてんの!?」


『……否』


 やだこいつ面白いんですけど!


「そういえばマリスー? 私を守らずに避けたんだって?」


 マリスをちょんとつつく。


「きゅっ……きゅい? きゅきゅ~い♪」


 マリスが……とぼけてる!


「やだめっちゃ可愛い……」


『疑問! 扱いの差がおかしいのです。不公平を正して頂きたいのです!』


「嫉妬しちゃってかーわい~♪」


『……否定』


 面白い遊びを覚えてしまった☆


「ひっ、姫の……ぐへへへっ……」


 まだ言ってたのかよこいつ。


 俺の中で何かがすーっと冷めて、覚めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る