ぼっち姫、母性本能に目覚める。
「せ、セスティ……お主はいったい、何者なんじゃ? ガシャドは魔王軍の中では幹部達に次ぐ実力者じゃぞ? それをこうも簡単に……」
ちょっとやりすぎちゃったかな?
めりにゃんがこちらをじっと見つめながら、プルプルと小刻みに揺れている。
「かわいい」
「へっ?」
おっと、そんな場合じゃないのについ思った事を口に出しちゃった。
ちょっとここに来てから情緒不安定すぎる気がする。
気を付けないととは思うんだけどこんな子を目の前にして冷静じゃいられないよね。
「ふふふっ、お主はつくづく妙な奴じゃのう。さっきまで軽く恐れすら感じたのに今ではもうなんとも思わんのじゃ」
めりにゃんはそう言うと、にぱーっと神々しい笑顔をこちらに向ける。
その尻尾も左右にぴこぴこ動いていて、本当に機嫌を損ねているわけではないのだと分かった。
「ごめんねめりにゃん。怖かったかな? でもどうしてもこいつの事は許せなくて」
私は未だに気分がすっきりしなくて、真っ二つになったガシャドの残骸をげしげしと蹴った。
「……ちょっと、驚いただけじゃ。確かにここまでやらなくてもって思ったけど、結局ガシャドは……。儂が甘かったのじゃ。助けてもらったんじゃから感謝しかないのじゃ」
めりにゃんはそう言いながらもちょっとだけ複雑そうに、真っ二つになって私にげしげしされているガシャドだった物を見つめる。
「こいつも、昔はいい奴だったんじゃ。……でも、きっとそれも見せかけのものだったんじゃろうな」
そう言うと、少しだけ目を潤ませてめりにゃんがその場にしゃがみ込んでしまった。
きっと以前の仲間に裏切られて、殺されそうになって、それでも信じたかったんだろう。それなのに結果的に悲しい結末になってしまった。
全部この糞ガイコツ野郎が悪い。
「めりにゃん。私は、絶対に裏切らない……なんて言わないよ? だけどね、めりにゃんが私の事を信じられなくなったら私を好きにしていいよ」
「ぷっ、あっはははっ。なんじゃ好きにしていいってどういう意味じゃ? もし儂がお主を殺すって言ったらどうするつもりなんじゃ」
ゲラゲラ笑うこの少女がなんだかとても愛おしくなってしまった。
勿論ロリコンじゃないよ。
そういうんじゃなくて、どっちかというと保護欲をかきたてられるというか、守ってあげたいと思わされる。
「私はめりにゃんがどうしても殺したいって言うなら何も言わずに刃を受けるよ」
受けたとしても死にはしないだろうし。
「儂の力でお主を殺せるわけなかろう。寝てる時に刃物で刺しても殺せる気がしないわい」
そう言うとめりにゃんは泣きながら笑う。
その涙が、笑いすぎからくるものなのか、別の物なのかは私にはわからないけど、この笑顔を消しちゃいけない。
人間だとか魔物だとか関係ないんだなって改めて実感した。
「別に信じなくていいけど、私はめりにゃんの事傷つけたりしないから。約束するよ」
「信じるのは怖い。だけど、なんでじゃろな。セスティの事は信じたくなってしまうのじゃ。もし裏切ったら……」
「裏切ったら?」
「お主の事を嫌いになるのじゃっ!」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
小さい子供を持つ親っていうのはいつもこんな気分なのかな?
可愛すぎて辛い。
「そういえばめりにゃんはどうしてここに居たの?それと魔物と敵対してるみたいだったけど……言いたくなかったら言わなくてもいいけど」
「いや、大丈夫なのじゃ。セスティには話すのじゃ。儂はいろいろあって追い出されてしまったのじゃ……まさか追手までくるとは思わなかったけどのう」
「魔王軍から追い出されちゃったの?」
確かに魔王軍に居るにはこの子は純粋すぎるのかもしれない。
「儂は呪いで力を奪われてしもうて……今の儂はただの子供みたいなもんじゃ。本当はもっと大きいのじゃ」
誰かに力を封印されてしまったという事らしい。
呪いによる封印と言う事は最も可能性が高いのは魔王だろう。
別に私的には小さいままで構わないんだけれど、本来はもっと大きいそうだ。その本来の姿を想像してみるが、あまりに目の前の天使、じゃなかった。小悪魔が可愛らしいので大きい姿をイメージできない。
「じゃあ今めりにゃんは行く場所が無いって事だよね?」
「うむぅ……そうなるのじゃ」
「だったら尚更問題ないよね。私達と一緒に行こう♪絶対守ってみせるから! ね?」
こんなに熱心に誰かをスカウトするなんて久しぶりの感覚だなぁ。
「本当に、いいんじゃろうか……勿論儂は嬉しいんじゃが」
「なら大丈夫だよ。文句言う奴がいたらぶっ殺すから安心してね☆」
「うぅん……安心、していいのかのう……?」
めりにゃんが、嬉しいような困ったような複雑な表情で首をかしげた。そして、突然何かを思い出したように大声をあげる。
「あっ、そうじゃ! 儂はここの魔力の源を探しに来たのじゃ。それが何かわからんがもしかしたら儂の封印も解けるかもしれんのじゃ!」
つまり、この遺跡から溢れ出ている魔力に、封印解除の望みをかけてきたって事ね。
「よーっし!そういう事なら二人でもっと奥に行ってみようよ♪」
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