14 無人
目を覚ました。いつもはまだ隣で寝ている夫と子供がいなかった。
久しぶりの早起きに感心しながらリビングに降りると、そこにも二人はいなかった。机と三脚の椅子だけが寂しげに存在していた。
私は大声で二人の名前を叫んだ。何もなかった。外にいるのかもしれない。よろけながら玄関に向かうと、彼らの靴は穏やかに転がっていた。
私は怖くなって二人を探し回った。あらゆる扉を開け、あらゆる部屋に入った。
家の中にはいないと、外を探そうと出入口に手を掛けようとしたとき、私は何かに躓き体を床にぶつけた。立ち上がろうとしたが、どこか痛めたのか出来なかった。
誰もいない家を出て、誰もいない道を歩き、誰もいない電車に乗る。その時、私は不思議と落ち着いていた。
ここらで一番大きな病院に着いた。あのとき打った手と足はまだ動かない。
「先生、妻は一体どうなったんですか」
「原因はわかりませんが、彼女は今、周りの人間の存在を認識できていません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます