14 無人

目を覚ました。いつもはまだ隣で寝ている夫と子供がいなかった。

久しぶりの早起きに感心しながらリビングに降りると、そこにも二人はいなかった。机と三脚の椅子だけが寂しげに存在していた。

私は大声で二人の名前を叫んだ。何もなかった。外にいるのかもしれない。よろけながら玄関に向かうと、彼らの靴は穏やかに転がっていた。


私は怖くなって二人を探し回った。あらゆる扉を開け、あらゆる部屋に入った。

家の中にはいないと、外を探そうと出入口に手を掛けようとしたとき、私は何かに躓き体を床にぶつけた。立ち上がろうとしたが、どこか痛めたのか出来なかった。


誰もいない家を出て、誰もいない道を歩き、誰もいない電車に乗る。その時、私は不思議と落ち着いていた。

ここらで一番大きな病院に着いた。あのとき打った手と足はまだ動かない。



「先生、妻は一体どうなったんですか」


「原因はわかりませんが、彼女は今、周りの人間の存在を認識できていません」

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