部屋を出た先は螺旋階段になっていた。塔の中を登っているはずなのに、左右には青空が広がり、霧状ではなくわたがしみたいな雲のカケラが、青一色の場所に模様を作っている。

 カシャン! 必死で登っていたら、何かを踏みつけて割ってしまった音が聞こえた。チラリと振り返ると、そこにはガラスの靴だったらしいカケラが散らばっている。お姫様の落としものかな、なんて思うと、ますます階段を駆け上がるスピードは上がっていった。

 夢の終焉を告げるように、様々なものが階段の上に落ちている。腹を割かれた狼のぬいぐるみ、崩れた藁葺き屋根のおうち、きれいな装飾を無くしたボロボロの幸福の王子。

 それらが僕に囁きかけてくる。

 物語は終わりだよ、モノガタリハオワリダヨ、オワリダヨ。

 人生の退屈を紛らわせ、雪華との接点を作ってくれた物語達に、初めて殺意が沸いた。

 終わってたまるか。

 絶対に終わってたまるもんか。

 そんなふうに思いながら、『彼ら』を踏みつけて走っていたバチが当たったのだろうか。

 僕は足を踏み外して、高い高い螺旋階段から落下した。

 そういう仕掛けの天井みたいに、青い空と星空がクルリと反転し、僕は星の海の中へと放り出される。一度も実際に聞いたことのないはずの汽車の音が聞こえてきて、力強い蒸気機関車が僕の横を通り抜け、星空の中を進んでいった。

 綺麗で悲しい物語の象徴であるそれが、強烈な不快感を僕の胸に落としていく。

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