8
部屋を出た先は螺旋階段になっていた。塔の中を登っているはずなのに、左右には青空が広がり、霧状ではなくわたがしみたいな雲のカケラが、青一色の場所に模様を作っている。
カシャン! 必死で登っていたら、何かを踏みつけて割ってしまった音が聞こえた。チラリと振り返ると、そこにはガラスの靴だったらしいカケラが散らばっている。お姫様の落としものかな、なんて思うと、ますます階段を駆け上がるスピードは上がっていった。
夢の終焉を告げるように、様々なものが階段の上に落ちている。腹を割かれた狼のぬいぐるみ、崩れた藁葺き屋根のおうち、きれいな装飾を無くしたボロボロの幸福の王子。
それらが僕に囁きかけてくる。
物語は終わりだよ、モノガタリハオワリダヨ、オワリダヨ。
人生の退屈を紛らわせ、雪華との接点を作ってくれた物語達に、初めて殺意が沸いた。
終わってたまるか。
絶対に終わってたまるもんか。
そんなふうに思いながら、『彼ら』を踏みつけて走っていたバチが当たったのだろうか。
僕は足を踏み外して、高い高い螺旋階段から落下した。
そういう仕掛けの天井みたいに、青い空と星空がクルリと反転し、僕は星の海の中へと放り出される。一度も実際に聞いたことのないはずの汽車の音が聞こえてきて、力強い蒸気機関車が僕の横を通り抜け、星空の中を進んでいった。
綺麗で悲しい物語の象徴であるそれが、強烈な不快感を僕の胸に落としていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます