暑い砂漠で、お腹もすいていないのにパサパサの保存食を食べさせられたような、とにかく一杯の水が強烈に欲しくなる感じ。いや、そんな生半可なもんじゃない。夜中目が冷めて、水が飲みたくてしょうがないくらい口が渇いてるあの感じ。


 口の中がカラカラってよく言うけど、まだ初期段階だからか、口の中自体は普通に湿ってる。でも全体的にその湿り気の中に渇きが混じってて、その矛盾がすごく気持ち悪い。


 ついでにお腹も減ってきた。今の僕の主食はメルヘンチックに解釈しても、木の実とかそういうもんなんだろうけど、カツ丼とか牛丼を猛烈にかっこみたい。空腹はまだガマンできる。腹の中が空っぽになっちゃった感じがそれはそれで気持ち悪いけど、後回しにできる。


 もし今渇きか空腹か、どっちを満たしたいかと尋ねられたら、間違いなく渇きを選ぶ。唇が渇いてきた。ああ、今の僕にはクチバシの方が適切なのかな。そんなことはどうでもいいや、水がほしい。オレンジジュースでも花のミツでも、とにかく水分がほしい。水欲しい水、水水水。


 頭痛が痛い、ちがう、いたいい、あたまが、いたい。人間の体のほとんどは、すいぶんで出来てるんだってね。そりゃ頭も痛くなるよね。よくハンマーで殴られたような、っていうけど、あれは適切じゃないと思う。どっちかっていうと、意地の悪い小人さんが、僕の脳みそと頭ガイコツの間で、


 ゴーン、

 ゴーン、

 ゴーン、


 って、惚れ惚れするようなリズムで、内側から僕の頭を叩いている感じ。どうしてこんなに喉が渇くんだろう……ああ、そうだ。


 ヒナギクの物語だと、ヒバリは捕まえた子どもに水をもらえなくて、喉が乾いて死んじゃうんだっけ。

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