そして、急に辺りが暗くなった。意識を失ったのかと思ったけど、キンキンキンキン騒がしくて不快な声が、どこにあるのかよくわからない、鳥の僕に届いてくる。


「やったー、トリつかまーえた」

「それ、つかまえたっていうの? みちばたにねっころがってたし。しんでるんじゃないの」

「だいじょうぶだろ、ほらほら」


 セカイが上下左右斜めに回った。ピーピー情けない声が勝手に出てくる。三半規管だっけ、鳥にもあるのかしらないけど、とにかくゲロするかどうかに関係のある器官がやばい。


 鳥である僕が多分食ってるんであろう虫とか木の実その他いろいろがリバースしそう。多分暗くてくさい袋に詰め込まれてブンブンまわされたらこんな感じ。というか、今がちょうどその状況なんだと思う。


「ほらほら、ないてるないてる」

「ふーん、じゃあつれてかえろうか」


 僕を捕まえた子どもらしい二人組は、家に帰る途中らしい。帰る途中なのはいいけど、袋をつかんでる子どもが歩くたびに、僕の入った袋もグラグラ揺れて、ウゲ、ほんとに戻しそう。


 頼むから、もうちょっと優しく扱って、うおぇ。いっそ気を失えたらいいんだけど、後もう少しって感じなのに気持ち悪すぎてなかなか、オエッ。


「生きのいい鳥だなあ。ピーチクパーチク言ってる」


 今ちょうど死にそうなんだけどね。なーんて言っても、鳥の僕の言葉は、子どもには届きはしない。大体からして、言葉が通じる大人の言葉さえ聞きやしない子どもが、声なき者の言葉を聞く耳を所持しているわけがないんだ。童話も子どもも、なんて残酷で、かなしいんだ。


『おとぎはなしはかなしいです』


 いつかの雪華の言葉が、頭によみがえる。そうだね雪華。今なら君の言葉に頷けるよ。

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