「それで、ここが一番、面白い場所なの?」

「そうです」


 観覧車に乗ってはしゃぎ回ったり(遠くに見える景色は真っ白で何も見えなかったけど)おかしな人達と一緒に、ジェットコースターに乗って大騒ぎしたりした後やって来たのは、一つの白い扉の前だった。


 扉と言っても、普通の扉とは違って、僕の腰の辺りまでしかないし、扉がついてれば普通はあるはずの壁は無いし、扉の左右には扉と同じ色の白い柵が、どこまでもどこまでも伸びている。


 どうも、ちょっとおしゃれな一軒家の庭の周りにある、裏口のようなものであるらしい。庭なんてどこにもないけど。まあ敢えてツッコミは入れるまい。


「きっと楽しいですよー、わくわくしますよー、テンション上がりまくりですよー」


 うきうきしながら腕をブンブン振る雪華だが、僕には一体何がなんだかさっぱりわからなかった。


 いや、常識的に考えてはいけない。

 ここは『ネバーランドよりも楽しいところ』であって、まともな考えが通用するところじゃないんだ。


「しっかり捕まっててください」


 雪華が僕の手を握る。

 今日で何回目だろう。

 一向に慣れない。

 こんなに細くて形の良い指のどこから人一人をぶっ飛ばすパワーが湧き出してくるのだろう。


「今から、面白いことが起きますから」


 言って、雪華はドアを開け、開いた先に足を踏み入れた。

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